トップが語る、「いま、伝えたいこと」
本年も大変お世話になり、ありがとうございました。今年最後の「トップが語る、「いま、伝えたいこと」」をお送りさせていただきます。
FRBが利下げを決め日銀が利上げを決めたので、本来なら為替は円高ドル安に向かうはずですが、材料出尽くしでその後どちらかというと円安傾向で相場は進んでいます。片山財務相が為替介入を匂わせるかなり強い発言をして少しは反応しましたが、トレンドはやっぱり円安基調です。悲観的に見ると日本の国力が落ちていることを疑われていて日本が買えないということだということになりますし、楽観的に見ると日本の個人金融資産が預貯金からようやく投資信託や株式に向い始め、それが海外の投資先に向かっているのだと考えることもできると思います。
もう少し、根本的な要因で行くとインフレ率が3%台なのに対して、政策金利がようやく0.75%なので、これではインフレは止まらない。だから、インフレを考えればもっと円安でいいのではないかというのが納得しやすい解釈だと思います。マクロに見れば、30年間のデフレで日本の物価はものすごく安くなりました。それが世界標準に近づいていく過程を踏んでいるのだと考えればいいのだと思います。当事者である私たちにとっては、他が30年間かけて上げていった物価を4、5年で調整することになるのかもしれないので、とても大変なことになりますが、それが過ぎた後は同じスタートラインに立てることになるのだと思っています。
対処するには、まずストック(預貯金、年金、保険等)に頼って生きていくのはドンドン辛くなるので、フロー(稼ぐ)の力を付けることが大事です。時代に対処して、クレバーに儲ける方法を身につけていくことが一番大切です。エコノミストの朝倉慶先生の見方ですが、意外に若い人はインフレ耐性があるのではと言っていました。(※朝倉先生との対談は舩井メールクラブでご視聴いただけます)具体的には、郊外でもラーメン代が1,300円ぐらいになっているのに若い家族連れは平気で注文している。彼らは給料も上がっているので物価高に対応できるのではないかという仮説を教えてくれました。問題は給料が上がらなくなっている中高年や年金生活者ということになるのかもしれません。
次に大切なのは、ストックで生きている人はリスクを取って貯蓄から投資への転換を図ることです。資本主義の大きな問題ですが、汗水流して働いている人よりも投資で暮らしていく人の方が豊かになります。株式や不動産は通常はインフレ傾向にあるときは、物価よりも早く高く上がっていく傾向があります。その行き過ぎがバブルなのでリスクは常に付きまとうのですが、そのような投資ができる人とできない人の格差がドンドン大きくなってしまうことが容易に想像できます。父は、不労所得は得るべきではないという意見でしたが、ここまで成熟した社会になると対策は必要になってきたと考えざるを得ないと思います。
投資は自己責任ですので、私や専門家の意見を頭から信じることはやめていただきたいのですが、そんな背景を考えると来年の株価は一時的に日経平均で6万円、もしかしたら6万5千円ぐらいを付けてもおかしくないのではないかと感じています。
今回は枝廣淳子著『答えを急がない勇気 ネガティブ・ケイパビリティのススメ』(イースト・プレス)をご紹介させていただきたいと思います。本書は出版されたのが2023年で本来なら新しく出版されたものを紹介するのが当欄の役割だと思いますが、私が今年読んだ中で最高に面白くて参考になった本なので、あえて年末年始の読書をする方にぜひ読んでいただきたいと思っています。
タイトルにある「ネガティブ・ケイパビリティ」とは、未知に遭遇した際にすぐに答えを出さずに立ち止まる、簡単に言えば「しないでおく」能力です。あらゆるモノがスピード化した時代だからこそ、あえて急がずに立ち止まる必要性を説いたものと言えるのかもしれません。急いでいる時、焦っている時、人間の判断力は大きく低下するのは、恐らくどのような方でも今までの人生を振り返れば経験があると思います。それを狙った商法も世の中に溢れかえっていますし、もっと言ってしまえば振込め詐欺などの犯罪の手法にも多く用いられています。そう考えるだけでも、立ち止まる勇気が持っている大きく重要なパワーを理解することができます。
今は政治から経済まで、先行きを見通すのが難しい時代です。私も予測などを尋ねられる機会が多く、その度に何かしらの回答をしなければならないと自らも正直曖昧で明確な認識を持っていない状態で問いを返してしまうことがあります。しかしそれは不健全な状態であり、正解であったとしても偶然であり、外れた場合は相手に迷惑をかけてしまうことになりかねません。自慢になってしまいますが、私は今年の日経平均は5万円になると年明けに予想しました。この場合は、ある程度の確信がありました。また、外れる可能性はありますが上記の来年の株価の予想も根拠があることを付け加えておきます。
分からなければ一度立ち止まって考えてみる。分からないという事実と向き合い、冷静になれば新しい答えは見えるかもしれませんし、例に出したように問われた場合ならばフラットな状態でその相手と議論をしてみるなど、急がなければもう少し良い状況を作り出すことも可能であるはずです。
しかしネガティブ・ケイパビリティのキモは、そもそも答えを出さないという選択肢があるという事です。分からない事態を許容して保持する。投げ出すわけではなく、必要があればその選択肢も持ち合わせるべきなのです。とにかくあらゆる事象への理解を追求するタイプの現代人からすれば、目から鱗の選択肢だと感じました。その待ちという行為が、安易に理解しない、表面だけをみて理解した気持ちにならない、結果的に深い部分へ追求する力になります。高く飛ぶためには深くかがまなければならないと表現されていますが、かがむ行為がまさにこれに当たり、同時に問題解決能力とされる現代社会において重視される「ポジティブ・ケイパビリティ」を持つ事で、大きく飛ぶ事ができるようになります。
表のポジティブが重視されているからこそ、裏のネガティブも持ち合わせることで人生に深みを持たせる事が可能になる、それを教えてくれる一冊です。
=以上=
2025.12.22:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】いまの時代に通じる千利休の残した言葉 (※佐野浩一執筆)
2025.12.15:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】ビジネスのための動画配信 (※舩井勝仁執筆)
2025.12.08:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】未来への一歩。こうしてぼくたちは出会った……。 (※佐野浩一執筆)
2025.12.01:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】副島先生の中国本 (※舩井勝仁執筆)
舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。 2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了) 著書に『生き方の原理を変えよう』 |
佐野 浩一(さの こういち) 株式会社本物研究所 代表取締役会長公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事 ライフカラーカウンセラー認定協会 代表 1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。 著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』 |










株式会社船井本社 代表取締役社長



















