トップが語る、「いま、伝えたいこと」
本欄ではトランプ大統領の悪口ばかり書いている気もしますが、ロシアとウクライナとの停戦に向けた直接対話が3年ぶりに行われる方向になっているのは、トランプ大統領の大きな成果だと感じます。ごちゃごちゃ言わずに停戦に前向きになることを強く迫るやり方は戦争を終わらせる上では有効です。政治の世界は面子やこだわりが前面に出てきてしまうことが多いのですが、日々殺し合いが行われているわけで、一刻も早い停戦に向けて話し合いをすることが急がれるというとてもシンプルな圧力のかけ方はさすがだと思います。
足下の経済を見ていると、やっぱり大きな懸念はインフレに対する対処ということになります。賃上げが大企業を中心に広がっていて、充分ではないかもしれませんが中小企業にも広がってきました。ただ、コロナ禍後に欧米で最初にインフレが始まった原因が人手不足による大幅な時給の高騰だったことを考えると日本のインフレはまだしばらく続くと覚悟する必要はあると思います。賃上げ⇒インフレ⇒賃上げ・・・、のスパイラルが起こるからです。長期間続いたデフレの影響で日本の物価は世界的に見るととんでもなく安い状態になってしまっています。生活実感としては大変ですが、日本の出遅れの調整をするためにインフレはまだまだ続くと覚悟した方がいいと思います。
冷静になってみると金融市場では為替という大きなポイントがあると思います。中期的に見ればアメリカは利下げをする方向ですし、日銀は利上げを志向しています。これによって円高傾向になることが見込まれるのですが、世界的な資金の流れを考えるとこの円安傾向はしばらく続くのかなとも感じます。NISA等のおかげで、日本の個人金融資産が貯蓄から投資に移動し始めました。そうすると基本的なリスク分散をするためには全世界にもれなく分散投資をしている投資信託が好まれることになります。これは、まったく正しい傾向だと思いますが、それによって円安が進むことも事実です。
投資を続けていて、ちょっと株式相場のことがわかってくると、日本株がかなり出遅れていることに気がついてくると思います。そして、日本の企業統治の在り方もかなり透明性が上がっていて、発表される企業決算に関する信頼性も高まっています。そうすると、日本株が上がっていく可能性に気がつき株式投資の王道である個別株をしっかり選んで長期投資するというステージにまで個人投資家の行動が変化してくることが期待できると思いますので、そうなったら円高傾向に変化するかもしれないなと思います。
ある意味では、インフレの時代には大きく逆らうのですが、今週は究極のデフレに対応するためのひとつの手法として、たきさわたいへい著『八ヶ岳【縄文特区】 エンディング・ヴィレッジ構想のすべて』(ヒカルランド)を紹介したいと思います。私のナラティブですが、コロナ禍への対応のために無理をしたことが原因でインフレが復活しましたが、やっぱりまだまだデフォルト(標準的な状態)はデフレだと思うからです。基本的にモノ余りです。だから、供給過多の状態になりやすいし、またAI化やロボット化が進んで行くこと等、本質的にはデフレ要因が圧倒的に大きいのだと感じているからです。だから、いまのインフレは5〜10年で終わっていくと思うので、その後のデフレ経済への対処方法をいまから考えておいた方がいいと思っています。
八ヶ岳に現代と縄文の良い部分を融合した理想郷を作り出すという構想を滝沢泰平さんが進めています。著者の泰平さんとは先日ザ・フナイの対談をさせていただいたのですが、本書で紹介されているエコ(エンディング)・ヴィレッジ構想はイスラエルに数多く存在するキブツをモデルのひとつとして考えられています。実は、泰平さんの最初のイスラエル旅行になった赤塚高仁先生のツアーには私も参加していたのですが、見ているところが本当に素晴らしいのはさすがだなと思いました。
主題のエンディング・ヴィレッジ構想に入る前に、前提知識として持っておくべきものがあり、SDGsにおけるサスティナブルの考え方がそのひとつです。人類が生まれる前から自然の相互作用によって成り立ってきた地球。しかし近年は文明の発展の代償として環境が破壊されその機能が失われつつあり、このままでは地球が滅亡してしまう可能性も否定できません。それを避ける為に何をするべきかと考えた時に生まれたのが、縄文時代のより自然と協調していた時代の生き方であり、それを実践できるコミュニティを作り出すというのが本書の根幹の部分ヴィレッジ構想の前提としてあります。ただ、いまの便利さは残したままで縄文の精神を引き継ごうというものですので「ネオ縄文」と泰平さんは表現していました。
エンディング・ヴィレッジとは、簡単に言えば「みんなが最後まで安心して生きられる場所」です。高齢化と共に終活の重要性が増す昨今。様々な方策が採られていますが、これもそのうちのひとつで、原始の要素を活かしながらもより新しいやり方であるように感じます。同じ価値観、死生観を持った人が集まって相互で助け合いながら理想的な最期を迎える。しかしエンディング・ヴィレッジは看取りだけのための施設ではないという点が独特な部分であるように感じます。元気な人も混ざりながら、死に向かって行く過程をより良いものにしていく、人間らしく幸せに生きる方法を模索するという意味では、他と一線を画しています。
八ヶ岳の自然の中での暮らしとなる分、専門家を必要とする西洋医療だけではない様々な医療、特にアーユルヴェーダの思想を用いながら、より自然に近い形での生き方を模索する構想は着々と進められているようです。イスラエルのキブツは絶えず臨戦状態にあるイスラエルだからこそ成功している側面もあると思うのですが、泰平さんの構想が上手くいったら新しい農を主体とするコミュニティの在り方の素晴らしい提案になっていくのだと思います。共鳴できる方は何らかの形で参加することを検討されるのもいいのかなという読後感になりました。
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2025.05.12:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】神道のルーツ (※舩井勝仁執筆)
2025.05.05:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】あらためて、考えさせられました…… (※佐野浩一執筆)


舩井 勝仁 (ふない かつひと)
![]() 1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。 2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了) 著書に『生き方の原理を変えよう』 |
佐野 浩一(さの こういち)![]() 株式会社51コラボレーションズ 代表取締役会長 公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事 ライフカラーカウンセラー認定協会 代表 1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。 著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』 |
