トップが語る、「いま、伝えたいこと」
日経平均はなかなか4万円の壁を越えられないでいます。原因は与党が参議院選挙で苦戦していて非改選議席と合わせても過半数を維持できない見込みであること。配信時には結果が出ているのですが、この原稿は選挙前に書いていますので見込みと書かせていただきました。日本の選挙の事前調査が外れたのをほとんど見たことがないので、衆参両院で少数与党状態になるのだと思います。さすがに政治の常識として政権交代が起こる可能性が高くなったと考えられます。日本株を買っている主要プレーヤーは残念ながら海外勢なので、政治の不安定は嫌われているというのが真相だと感じます。
アメリカの株価は絶好調です。市場がトランプ大統領の過激発言をTACO(Trump Always Chickens Out.:トランプはいつもびびってやめる)だと見切ってというか、そういうことにすることにして気にしない方針を取ることが定着し、またトランプ大統領も高株価を喜んでいるので最高値水準で推移しています。特に、世界初で時価総額が4兆ドル(600兆円)を超えた半導体のNVIDIAに象徴されるように時価総額の大きい大型株中心に上がっている状態です。トヨタ自動車の時価総額は40兆円弱、日本を代表する半導体銘柄である東京エレクトロンが13兆円強なので国力の違いを実感させられる数字だと感じます。
それにしても、1社の時価総額が日本のGDPに匹敵する状態は何か変だと感じる感性も必要だと思います。それだけ金融社会が浸透していることになりますし、トランプ大統領が最終的に対抗しようとしているのはこの状態なのだと思います。日本も既得損益を代表するようにとらえられている自民党やそれを背後から操っているとみなされている財務省に対する怒りが沸騰していて、自民党に投票する人は守旧勢力だというレッテルが貼られるようなちょっと危ない雰囲気すら感じられる気もします。必然的に代替的な政党が選択されることになるのですが、政党再編も含めて政治の状態がどうなるか、それが安定してくれば、経済的にはインフレ状態が定着してきましたので株価が上がっていく条件が揃うことになると思います。
私も年齢的には守旧派に属するので、正直に言うといまの急激な変化に戸惑いを感じています。大事なのは、GAFAM(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン、マイクロソフト)にNVIDIAを含めたような株高でアメリカ経済を世界最強のものに牽引しているような会社が日本に出現することではないでしょうか。常識を超えた発想を、自信を持って進めていける若者の出現を待ちたいと思いますし、それを既存勢力が潰してしまわないような社会を創っていかなければならないと感じます。そのような社会が実現するための政治の混乱なら喜んで受け入れていけばいいのだとも思います。どちらにしても、新しい政治を作っていこうという若者たちは、とりあえず出現しました。今度はそれを経済の分野でも実現していければと感じます。
今週は和田一廣著『伝説のコンサルタントが教える成功する人の基本』(致知出版Iをご紹介したいと思います。和田先生は創業期の船井総合研究所で舩井幸雄の右腕として活躍された方で、現在でもコンサルタントとして第一線で活躍されています。本書の中にも登場しますが、世界のホームラン王である王貞治先生とも親しくされています。10年近く前のことですが、私がゴルフをやることを知られて誘っていただいてご一緒にプレーをさせていただいたことがあります。プレー中に王先生から電話がかかってきたことがあり、相変わらず第一線で活躍されていることを感じました。
私が親しくしている若手IT会社の経営者の中にも和田先生のコンサルを受けている人が複数いて、いつまでも日本経済をコンサルタントとして裏からしっかり支えておられることを実感しています。本書を出版されることを企画の段階から教えていただき、熱海の舩井幸雄記念館にわざわざお越しいただいて母にご献本いただいたのですが、人との縁を大事にされることを舩井幸雄から学ばれて、それを実践している姿にはいつも教えられる気がしています。個人的には、船井総研に入社した時の上司であり苦手意識が少しあるのですが、間違いなく父の右腕であった大先輩です。
そんな和田先生から見た舩井幸雄の経営哲学について知る事のできる本書ですが、それは同時に舩井幸雄のコンサルタントとして記録的な要素も持ち合わせています。スピリチュアルな面ばかりがピックアップされてしまいがちな昨今ですが、本書では優秀な経営者でありコンサルタントであった側面も持っていた舩井幸雄について知る事のできる貴重な一冊です。経済面だけではなく、心理学などに精通し、顧客の利益の最大化を目的とし、互いにしっかりと利を得られる関係を築く。舩井幸雄の経営哲学の本質を理解できます。
その中でも特に重要視されているように感じたのが本質的な部分を見抜く能力で、あらゆる要素にそれを取り入れています。長所を伸ばしていくという有名な部分もそうですが、仕事の効率化や学ぶ事の意味など、それが必要だと当たり前に言われている事についての中身を解体し、その中から本質の部分を取り出し解説している、だからあらゆる事象に対応できるように感じました。また、中小企業を対象とする意味や姿勢、企業カルチャーについては、現在の船井総研にも社内風土として強く残っている部分も感じます。
本書を読んでいく事で、時代の流れによって通用しなくなってしまった部分があるようにも見える舩井幸雄の様々な経営理論が普遍的で本質的な部分を突いた内容で構成されており、現代でも通用する理論である事を再認識できます。いまの船井総研は和田先生や私がいた時代とはまったく違う分野のコンサルタント会社になりましたが、基礎的な部分はしっかりと受け継がれていることが確認できました。父の築いたものを語り継いでいく為にもこのような近しい方々の記録は非常に重要であり、我々からしても非常に価値を持っていると同時に、舩井幸雄を再評価するという意味を持つ一冊ではないでしょうか。
=以上=

2025.07.14:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】科学的思考 (※舩井勝仁執筆)
2025.07.07:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】株主総会を終えて (※佐野浩一執筆)


舩井 勝仁 (ふない かつひと)
![]() 1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。 2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了) 著書に『生き方の原理を変えよう』 |
佐野 浩一(さの こういち)![]() 公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事 ライフカラーカウンセラー認定協会 代表 1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。 著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』 |
