ヤスのちょっとスピリチュアルな世界情勢予測
このページは、社会分析アナリストで著述家のヤス先生こと高島康司さんによるコラムページです。
アメリカ在住経験もあることから、アメリカ文化を知り、英語を自由に使いこなせるのが強みでもあるヤス先生は、世界中の情報を積極的に収集し、バランスのとれた分析、予測をされています。
スピリチュアルなことも上手く取り入れる柔軟な感性で、ヤス先生が混迷する今後の日本、そして世界の情勢を予測していきます。
日本の主要メディアでは、トランプ政権による自動車と自動車部品への一律25%の高関税を適用するニュースが注目されている。日本もその対象国だ。今後どのようにトランプ政権に対応していけばよいのか議論が絶えない。今回の処置はまさにトランプのアメリカの一国主義と、同盟関係よりも自国の利益を最優先する方針の現れだとして警戒されている。
しかし、日本の主要メディアではまったく報道されていないトランプ政権の動きがある。
それは、アメリカをキリスト教の倫理を土台にした神権国家に転換するためのプロセスの開始である。これは、トランプの一国主義的な動きの背後で確実に進んでいる動きだ。最近の動きを見ると、その方向性がはっきりする。この動きを少し深堀すると、トランプが目標としている神権国家のイメージと、それを支える福音派のメンタリティーを内的に理解することができる。まずはその動きから追って見よう。
まずトランプ大統領は、2月6日に恒例の「全米祈祷朝食会」でスピーチし、「宗教を復活させなければならない」と発言した。短いスピーチなので全文を掲載する。
「わが国の建国当初から、神への信仰は常にわが国の国民の心に宿る強さの究極の源であった。私たちは宗教を復活させなければならない。もっと強く復活させなければならない。
それはここしばらくの間、私たちが抱えてきた最大の問題のひとつだ。もし私が90度の角度より少し多かったら、それはダメだっただろう。完璧でなければならなかった。それは…ギリギリのところだった。私の髪には影響がなかった。信じられるかい? 触れたかもしれないが、重要な部分には触れていない。皮膚の部分ではない。(※昨年の暗殺未遂事件で銃弾がきわどいところでトランプをかすめ、助かったことを指している)
しかし、正直に言うと、私の中で何かが変わった。私はさらに強くなったと感じている。私は神を信じていたが、もっと強く感じるようになった。何かが起こったんだ。だからありがとう。ありがとう。
そして、宗教、その信念なしには幸せになれないと本当に思う。本当にそう思う。どうすればいいのかわからない。だから宗教を復活させよう。神を私たちの生活に取り戻そう。皆さん、本当にありがとう。本当にありがとう。とても光栄だ。ありがとう」
このように述べ、宗教の復活の重要性を力説した。
●ホワイトハウス「信仰局」の設置
この宣言に伴うかのように、2月10日、トランプ大統領はホワイトハウスに「信仰局」の設置を命令する大統領令に署名した。その演説も短いので全文を掲載する。以下である。
「宗教的迫害に直面しているため、私は今日、偉大な人物である司法長官、パム・ボンディを、反キリスト教的な偏見を根絶するための新たな対策本部のトップに任命する大統領令に署名する。今こそ、そうすべき時ではないだろうか? 反キリスト教的な偏見。そんな言葉を聞いたことがないだろう? でも、今こそ、そうすべき時ではないだろうか?
何度も何度も耳にするが、反キリスト教的な偏見をなくすことはできない。このタスクフォースの使命は、連邦政府内における反キリスト教的な標的化や差別を即座にすべて停止させることである。司法省、国税庁、FBI、その他の機関を含め、これらはまったくひどい状況であった。
さらに、タスクフォースは、私たちの社会における反キリスト教的な暴力や破壊行為を徹底的に起訴し、キリスト教徒や宗教的信者の権利を全国的に守るために、あらゆる手段を講じる。君は今までそんな経験をしたことがないだろうが、これは私が署名する非常に強力な文書だ。君はそれを手に入れた。君は今、それを手に入れた。君が初めて手に入れたのだ。
もし宗教的自由を認めなければ、自由な国は存在しない。おそらく国さえ存在しないだろう。私は常に宗教的自由を守る。そして、それが今日私がここに来た理由であり、多くの人々を本当に尊敬している理由だ。
私は宗教的自由に関するまったく新しい大統領委員会を設置することを発表する。これは非常に重要な案件であり、この最も基本的な権利を擁護するために休みなく活動する。今週、私はまた、素晴らしいパウラ・ホワイト伝道師が率いるホワイトハウス信仰局を設立する」
このように宣言し、福音派の強力な一派である「ペンテコステ派」の伝道師、ポーラ・ホワイトを上級顧問に任命して「信仰局」の設置を命じた。これは、リベラルを中心とする反キリスト教的な動きに対する宣戦布告のようなものである。
●ポーラ・ホワイト伝道師
しかし、トランプは設置を命じた「信仰局」とはなにを行う機関なのだろうか? それは、キリスト教の倫理の復活を支援し、公教育のガイドラインにこれを導入するというものなのだろうか? それとも、キリスト教の倫理に基づく国家の統治原理のようなものだろうか? それを見るためには、上級顧問に任命されたポーラ・ホワイト伝道師がどのような人物であるのか見ると分かりやすい。
ポーラ・ホワイトは、過去40年間、宣教活動、宗教の自由と人道的権利のための戦い、世界的に約200か国で影響力を拡大してきた人物だ。彼女は、「全米信仰諮問委員会」の創設者兼会長である。また、「シティ・デスティニー」の会長であり、フロリダの「ストーリーライフ教会」の監督兼伝道師だ。ホワイトは以前、「ホワイトハウス信仰と機会イニシアチブ」でトランプ大統領の顧問を務めていた。彼女はまた、「福音派諮問委員会」の議長(2016年)も務めた。
このようにポーラ・ホワイトは、第一期のトランプ政権から深くホワイトハウスにかかわり、福音派の教義をトランプ政権の政策に反映させようとしてた伝道師である。
●「異言」
ちなみにポーラ・ホワイトは、神のお告げを語る「ペンテコステ派」の伝道師だ。「ペンテコステ派」は、古代の原始キリスト教の教えに戻ることを主張し、「異言」を通して聖霊との個人的な交わりを重要視する福音派の一派である。
「異言(Speak in Tongues)」とは、トランス状態で理解不能な言語を話しながら、聖霊のメッセージを告げる行いである。このとき「異言」を行う人々には聖霊が宿っていると解釈されている。「異言」の記述はすでに「マルコ福音書16章15から20節」、「使徒行伝2章1節から21節」、「ヨエル書2章28から32章」、「マタイ3章11節」などにあり、古代から聖霊との交信の方法として知られている。以下はポーラ・ホワイトなど「ペンテコステ派」の牧師や伝道師が行っている実際の「異言」である。ぜひ見てほしい。説教を繰り返すうちにトランス状態になり、理解不能な「異言」で話すのを見ることができる。
Trump's spiritual adviser Paula White calling on Angels from Africa & South America to bring victory
https://www.youtube.com/watch?v=7DlRueGU1AU
Paula White
https://www.youtube.com/shorts/fgZvzc4Pgmo
speaking in tongues
https://www.youtube.com/watch?v=phvpFNUx5Hg&t=61s
In 2025, Speak in Tongues more than ever before! - Pastor Chris
https://www.youtube.com/watch?v=Zi3dMjYtSt4&t=100s
これを見るとお分かりと思うが、「異言」が媒介する神や聖霊の存在とは、プロテスタントやカトリックの他の宗派のように、聖書の解読を通して理性的に理解されるべき存在ではない。祈りや「異言」などを介して個人が直接的に体験できる存在であるようだ。
●「改心」の熱情、反知性主義
ところでアメリカの歴史を見ると、「改心」によるキリスト教の「リバイバル運動」の発生がときおり見られる。まだアメリカが小規模の農業共同体を主体にしていた18世紀には、これはときおり起こる地域的な現象だったが、工業化が進み農村共同体が解体され、格差が拡大する19世紀後半から20世紀初頭になると、「リバイバル運動」は全国的な盛り上がりを見せた。そして、大恐慌が襲い米経済が長期間低迷した1930年代には、「リバイバル運動」は現在の福音派の形態になった。
社会矛盾が激化し、人々の苦しみが増大すると、「改心」への熱情は高まった。それというのも、苦しみの原因が格差などの社会的矛盾にあったとしても、福音派の見方では、すべての苦しみは個人の原罪に原因があると解釈されるからだ。
原罪のために悪魔に取り憑かれ、神の契約から外れた生活を送っていることがすべての問題の基本的な原因だ。したがって、もし人間が「改心」をしてこれまでの生活を悔い改め、聖書に合致した正しい生活をするなら、神も契約を履行し、その人間を幸福にしてくれる。
現代でもこれは変わっていない。グローバリゼーションの社会矛盾の拡大とともに、「改心」の熱情に駆られた信者が各地の「ペンテコステ派」のような福音派教会に殺到した。「改心」をして聖書に基づく正しい生活を取り戻すことで、いまの苦しみはすべて乗り越えられるというものだ。
「ペンテコステ派」の特徴とする「異言」は、聖霊との直接的な関係を回復して、「改心」を促す重要な宗教的行為である。
●堕落したアメリカを神権国家にする王様
さて、このように見ると、トランプが目指す「宗教を取り戻す」ことの意味は鮮明になってくる。それは単にLGBTQ+や人種と宗教の多様性を否定し、キリスト教の倫理を政治の基盤にするということだけではない。トランプの「宗教を取り戻す」改革の意味はもっと深く、米国民の宗教的なメンタリティーに根差しているようだ。それは、堕落したアメリカを「改心」させて立て直し、聖書を基礎にした神権国家にすることだろう。それを実現するトランプは、選挙で選ばれた大統領という国民国家の代表者としてのアイデンティティーを越えている。トランプは、神権国家をもたらす使命のためにこの世に降り立った存在、つまり神に選ばれた王のような存在なのだ。
トランプも福音派も、アメリカは神との契約で建国された国ではあるものの、神への信仰を忘れ、欲望と罪にまみれた状況にあると見ている。権力欲にまみれたワシントン政界、ウォールストリートの金融資本、同性愛や堕胎の容認、コントロールの効かない物質主義などが、神との契約を逸脱したアメリカの象徴である。そして、なによりもグローバリゼーションこそそうした諸悪の根源なのだ。
アメリカを神から与えられた本来に軌道に戻すためには、アメリカ国民の罪を悔い改めさせ、「改心」させなければならない。それは、福音派の原理を基本として、アメリカ社会を再構成することにほかならない。それは、建国当時の地域共同体をベースにした地方分権国家へアメリカを回帰させることを意味する。
「改心」したアメリカでは、すべての法や規範の基礎には聖書がなければならない。聖書こそ、すべての規範の前提である。そして、このような神の法に基づくアメリカを「改心」させる大統領こそ、自他共に神に選ばれた存在としてのトランプなのだ。昨年の暗殺未遂事件は、トランプこそがまさに神に選ばれた存在であることを、あますことなく証明した。トランプは、アメリカを統治するために生まれてきた王なのである。少なくともこのように、トランプの熱烈な支持層である福音派は感じているようだ。
このように見ると、トランプの「宗教を回復する」ということの意味が、内的に理解できるように思う。しかし、当然だが、このあたかも神から選ばれた王のような存在が統治をする神権国家への転換には、凄まじい反対と抵抗があるに違いない。近い将来、我々はその激しさを見ることになるだろう。その抵抗は暴力的な形で現れる可能性が高い。
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●「ヤスの勉強会」第133回のご案内●
「ヤスの勉強会」の第133回を開催します。トランプの革命政権による驚異的な変革が、ものすごいスピードで続いています。アメリカのみならず、世界に激震が走っています。そうした状況で、4月が大きな転換点になるかもしれません。いつものように、あらゆる情報を集めどうなるのか、徹底的に分析します。
※録画ビデオの配信
コロナのパンデミックは収まっているが、やはり大人数での勉強会の開催には用心が必要だ。今月の勉強会も、ダウンロードして見ることのできる録画ビデオでの配信となる。ご了承いただきたい。
【主な内容】
・世界を揺るがすトランプ革命
・危機が思わぬ方向に拡大
・やはり金融危機は近い
・アメリカはもしかしたらBRICSに参加か?
・ウクライナ戦争終結を利用して台頭するロシア
・不況が決まった日本、今後どうなるのか?
・本当に我々の意識は進化しているのか?
など。
よろしかったらぜひご参加ください。
日時:4月26日、土曜日の夜までにビデオを配信
料金:4000円
懇親会:リアル飲み会とZOOMで開催
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社会分析アナリスト、著述家、コンサルタント。
異言語コミュニケーションのセミナーを主宰。ビジネス書、ならびに語学書を多数発表。実践的英語力が身につく書籍として好評を得ている。現在ブログ「ヤスの備忘録 歴史と予知、哲学のあいだ」を運営。さまざまなシンクタンクの予測情報のみならず、予言などのイレギュラーな方法などにも注目し、社会変動のタイムスケジュールを解析。その分析力は他に類を見ない。
著書は、『「支配−被支配の従来型経済システム」の完全放棄で 日本はこう変わる』(2011年1月 ヒカルランド刊)、『コルマンインデックス後 私たちの運命を決める 近未来サイクル』
(2012年2月 徳間書店刊)、『日本、残された方向と選択』
(2013年3月 ヴォイス刊)他多数。
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