トップが語る、「いま、伝えたいこと」
金融相場は相変わらずトランプ大統領に振り回されています。日本は相互関税交渉の先頭ランナーだとおだてられて、のこのこと石破総理の懐刀とも言われている赤沢経済再生担当大臣がホワイトハウスに乗り込みました。厳しく言うと専門家の見方は中国側につくことはまかりならないという踏み絵を踏まされただけの交渉に終わってしまったということの様です。親日派のベンセント財務長官は暗にトランプ大統領自身が交渉に参加することを示唆していて、石破総理はそれなら自らが交渉に行ったと悔しがったそうですが、そのサインを見落としたのは日本側の痛い落ち度だったようです。それによって、米側の交渉の当事者が強硬派のナバロ通商担当大統領上級顧問に代わることが最悪のシナリオだということです。
相互関税の実施を90日間猶予するといういい意味でのサプライズの原因だったアメリカ国債の急落の犯人探しが行われているようです。市場が緊張したのは、中国が大きな損失を出すのを覚悟で叩き売ったのではないかという最悪の事態ですが、どうも犯人はヘッジファンドが損失を出す過程で逆回転の売りを出したことだったのではないかというのがマーケットの見方です。金融マーケットの状況に柔軟に対応しながらも、トランプ大統領の本気で革命を進める気持ちは変わっていません。アメリカにとって一番嫌なのは、日本やEUなどの基本的には親米国が中露などの敵対勢力に寝返ることで、日本には飴とムチを使い分けながら属国であることを思い知らせながら各国に対して有利な交渉を進めるためのたたき台にするという方針で交渉に臨んでくることになると思います。
トランプ大統領のようなハードなディールをするのならば、あまりにも酷いことをするようなら、日本は中国と一緒になって米国債の売却を進めざるを得なくなる可能性があるというようなアメリカが最も嫌がることを匂わせるようなことも必要なのかもしれません。かって橋本龍太郎総理がそれをやったら実質的にディープステート(DS)勢力に暗殺されたのではないかというのが陰謀論的な典型的な見方なので、日本の政治家や官僚に命をかけるぐらいの気概が求められるのかもしれないとも感じます。
トランプ大統領はついにFRBのパウエル議長の解任にまで言及するようになりました。中央銀行の独立性を否定するということは私有財産制を認めて自由な金融取引を何よりも優先するという資本主義体制そのものを否定することに繋がっていきます。200万人いる連邦職員をすべて入れ替えてもDS勢力の陰謀に打ち勝って「再びアメリカを偉大な国にする(MAGA)」を実行するのがトランプ大統領の絶対方針なので、本当に世界は何でもありで動いていくという前提をきちんと持ちながら対処方法を考えることが求められると思います。
油断はしない方がいいですが、基本的には中国叩きを本格化させることは、他人の不幸を喜ぶようで心苦しくはありますが、日本経済にとってはプラスに働きます。株式相場を見ていても、どうも日本マーケットは他国に比べても比較的良好に推移していく予兆を何となく感じるような気がします。投資の初心者はあまり気にせずに全世界株式投信(オールカントリー投信)を買い続けるのがいいとは思いますが、どうしても中心はアメリカ株になるので、思い切って日本株を中心に投資する投信に乗りかえてみることを検討するのもありなのかもしれないと感じたりしています。
今週紹介させていただくのは、高杉 康成著『キーエンス流 性弱説経営』(日経BP)です。下品は言い方をすれば、日本で1番儲けるのが上手い企業と言っても過言ではないキーエンス。最小の資本で最大の利益をもたらすその方法について、興味のない方はおそらく少数でしょう。本書はキーエンス出身の著者が、キーエンスがどのようにして成り立っているのか、内部の仕組みについて赤裸々に語っている内容となっています。結論は、性善説に基づいた考え方をしないという事ですが、キーエンスにおいては対義語である性悪説でもなく、タイトルにも出てくる性弱説という人間は非常に弱く脆い生き物である、という前提で進められます。
人間は一定数が嘘をつき、正しい行動をせず、決して性善説的な信用を前提として動いてはならない。寂しい考え方の気もしますが、これで結果を出しているのが事実であり、合理的な考え方であることは否定できません。その思想は外部の顧客に対してのみならず、内部の人間に対しても向けられ、全てに対して性弱説が適用されます。これによって社員も合理的に管理する事が可能になり、人員が流動的であっても対処が可能となる、個人に依存しない組織づくりが可能になるそうです。
特に面白いと感じたのは、社員それぞれの価値も数値化し、それ以上の仕事のみをするように心がけるという部分。コストに見合っていない無駄な行動はせず、外部に委託するなど合理化を実現する。これは人員を効率よく利用することが可能となる仕組みであり、効率化と共に、個々人の意識やモチベーションの向上にも繋がりそうです。経営術というタイトルになっていますが、実際には個人の行動の指針としても役立つものでもあり、性善説が通用しなくなってきた現代社会でも必要な思想とスキルを学ぶ事ができる一冊でもあります。
特に合理性を求める方は、本書を読む事で得られるものは大きいように感じたので、非常におすすめできる内容ではないでしょうか。キーエンスのことを調べていくうちに、船井総研ととても似ている経営をしていると感じていました。ただ、舩井幸雄は性善説を前提に経営を組み立てていたことに本書を読んで気がつきました。昨年の暮れに、船井総研ホールディングスの経営陣と話したときの話を思い出しました。彼らは、性弱説に基づく考え方に少しずつ変わってきているようにも感じます。どんな会社にとってもとても参考になると思いますので、ぜひご一読いただければと思います。
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舩井 勝仁 (ふない かつひと)
![]() 1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。 2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了) 著書に『生き方の原理を変えよう』 |
佐野 浩一(さの こういち)![]() 株式会社51コラボレーションズ 代表取締役会長 公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事 ライフカラーカウンセラー認定協会 代表 1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。 著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』 |
