トップが語る、「いま、伝えたいこと」

このページでは、舩井幸雄の遺志を引き継ぐ舩井勝仁と佐野浩一が、“新舩井流”をめざし、皆様に「いま、伝えたいこと」を毎週交互に語っていきます。
毎週月曜日定期更新
2025年9月15日
変化は市民の小さな行動から (※佐野浩一執筆)

 気候変動、海洋プラスチック汚染、資源の枯渇、地方経済の疲弊、人口減少など、いま私たちは様々な地球レベルの問題に直面しています。
 そのような課題に対して、何かを変えていったり、新しい何かを作り出す必要があります。これだけは、どうやら間違いないと思うのです。
 枝廣淳子さんをご存じでしょうか? あのゴア副大統領が出版された「不都合な真実」(2007年、ランダムハウス講談社刊)を翻訳された環境ジャーナリストであり、長年政府のさまざまな委員会や企業へのコンサルティング、地方創生のお手伝いをしてこられた方です。
 枝廣さんは、「政策はこうあるべき」と理論で戦う空中戦だけではなく、「自分もリアルの場でのプレイヤーのひとりとして、実際の変化を創り出していきたい」とお考えになられたそうです。執筆・翻訳用の仕事部屋を熱海に設けた枝廣さんは、新型コロナウイルスによる外出自粛に伴い、熱海に移住することになります。そして、地元で長年活動してきた熱海マリンサービス・光村智弘さんと出会い、意気投合し、熱海で株式会社未来創造部を共同で設立。地元食材の販売支援やキャンドルナイトの企画・運営、環境、エネルギー、SDGs等にかかわるプロジェクトを実施してこられました。
 グローバルや政府、様々な産業界や地域の最新の情報や取り組みを熱海につなげる……。まさに、「グローバル」と「ローカル」との出会いです。いま、熱海から、「ブルーカーボンプロジェクト」や「炭化プロジェクト」が始まり、明るい未来への一歩が始まっているのです。そして、熱海というリアルの場で取り組むからこそ得られる様々な学びや知恵、洞察を、他の地域や政府、産業界、そして他国やグローバルレベルで活動している人々にも伝えていく……。これが、いまの熱海で実践されている「事実」なのです。
 静岡県熱海市は、言わずとも知れた観光地ですが、少子高齢化や地域経済の停滞といった課題にも直面しています。昨年生まれた赤ちゃんの数、72人。高齢化率(2024年3月時点)48.6%。これだけでも、どれだけ熱海の抱える問題の根っこが深いか、ご想像いただけると思います。
 株式会社未来創造部は、そうした現状に対して「地域の未来を市民と共に創る」ことを掲げ、多様な活動を展開してこられました。観光だけに依存するのではなく、地域資源を再発見し、持続可能なまちづくりを目指す取り組みは、熱海が抱える課題を「みんなで解決するプロジェクト」へと転換させようとしています。地域住民・行政・企業・NPOなどが垣根を越えて集い、未来の熱海を議論し、小さな実験を重ねるというプロセスを大事にしてこられました。つい、先日も、さらに新しく立ち上げられた「ATAMIミライ共創機構」の設立記念会に参加してきましたが、そこでは「聴く」だけでなく「考える」「意見を交わす」「創造する」という視点に溢れていました。まさに、その姿勢は、地域再生における「共創型モデル」の先駆的事例といっても過言ではないと思います。
 サステナビリティとは「持続可能性」と訳されますが、単なる環境保護や資源管理にとどまりません。地域社会が健全に循環し、人々が生きがいを持って暮らせる状態を保つこと全体を指します。熱海においても、観光収益だけに頼るのではなく、地域の一次産業や文化資産、コミュニティのつながりをどう維持・再生するかが問われています。
 枝廣さんの視点は、「短期的な利益ではなく、長期的な地域の幸福」を優先する点に特徴があります。例えば、観光客誘致だけではなく、市民が主体的に関われる教育プログラムや地域イベントを通じて「地域を支える人の循環」を生み出していることは、サステナビリティの本質を体現していると言えます。
 「私たちは、微力だけど、無力じゃない」と伝え続けるのは、あのテラ・ルネッサンスの創業者・鬼丸昌也さんですが、本当にそのとおりです。社会課題の解決は、一部の専門家や行政だけの役割ではありません。そういう点で、枝廣さんが運営される株式会社未来創造部の活動は「誰もが小さな改革の担い手になれる」ことを実感させてくれます。
 たとえば、街の清掃活動や空き家活用のワークショップなど、一見すると小さな取り組みでも、参加した人にとっては「地域に関わっている」という実感を得るきっかけになります。そこからさらに、新しい事業や協働プロジェクトが生まれることも珍しくありません。つまり、「変化は身近な行動から始まる」という意識を広げていくことが、社会改革の基盤になります。熱海での実践は、そのモデルケースと言えると思います。
 枝廣さんは、社会課題解決のアプローチとして「システム思考」を重視しています。複雑に絡み合う課題を単純に切り分けて対処するのではなく、「全体のつながりの中で原因と結果を捉える」ことが重要だと説いています。まさにそのとおりだなって思います。
 ご自身が、「問題は問題の中には解決策がない」と繰り返し述べていらっしゃいます。つまり、目の前の症状に対症療法的に取り組むだけではなく、その背後にある構造や因果関係を探り、仕組みそのものを変えていく必要があるのです。
 「システム思考」では、課題を「氷山モデル」で捉えることがよくあります。表面的に見える出来事(イベント)は氷山の一角にすぎず、その下には「行動パターン」「構造」「メンタルモデル」が存在すると考えます。

 熱海の地域課題を例にすれば、
○イベント:観光客数の増減
○パターン:特定の季節や年齢層に依存
○構造:観光に偏った産業構造、雇用機会の不足
○メンタルモデル:「観光以外に産業は育たない」という固定観念

 このように深い層まで掘り下げることで、初めて本質的な解決策が見えてきます。枝廣さんが、子どもたちを対象にワークショップを開かれているのも、根本から「次の担い手」を育てていこうとする取り組みなんだなと思うのです。
 さらに、枝廣さんは「変化を作り出す5つの力」として、つぎの要素を挙げていらっしゃいます。これが実は肝なんですね。
@問題を見抜く力 ― 目に見える現象の奥に潜む構造を理解する。
Aつなぐ力 ― 異なる立場の人々を結びつけ、協力関係を築く。
B広げる力 ― 成果や学びを共有し、社会全体に広げる。
C続ける力 ― 一度きりではなく、持続的に取り組む粘り強さ。
D自分を変える力 ― 他人や社会を変える前に、自らの価値観や行動を見直す。
この「5つの力」を地域レベルで具現化し、市民一人ひとりが「小さくてもできること」を実践し、それをつなぎ、広げ、続ける……。その連鎖が、地域全体の変化へとつながっていくと考えられます。
 持続可能な未来へ向けて、こうした実践から学べることが3つあります。

@サステナビリティは特別なものではなく、日常の延長にある
→ゴミ拾いや食の選択、地域活動への参加も立派な持続可能性の実践。
A社会課題の解決には市民の参画が不可欠
→行政や企業に任せきりにせず、一人ひとりが担い手となる。
Bシステム思考と5つの力が変革の道筋を示す
→表面的な対処ではなく、構造を変える視点が必要。

 熱海での取り組みは、規模の大小にかかわらず、他地域や私たちの日常生活にも応用できます。どうしても、ジャンルで分けてしまいがちですが、環境・経済・社会の課題を切り分けるのではなく、相互につながりを持つ「一つのシステム」として捉えること。これは、経営においても同じ思考は可能です。そして、そこに暮らす人々が主体的に関わること。それこそが、持続可能な未来を創るための鍵となります。
 私たちが学ぶべきは「変化は小さな行動から始まり、つながり、広がっていく」という事実です。熱海の事例は、日本各地、そして世界の地域社会にとっても、未来を創造する勇気とヒントを与えてくれると信じます。
                        感謝

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2025.09.15:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】変化は市民の小さな行動から (※佐野浩一執筆)
2025.09.08:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】楽しむ (※舩井勝仁執筆)
2025.09.01:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】『ありのまま』をありのままに考える (※佐野浩一執筆)
舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長
1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。
2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了)
著書に『生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『未来から考える新しい生き方』(2011年 海竜社)、『舩井幸雄が一番伝えたかった事』(2013年きれい・ねっと)、『チェンジ・マネー』(はせくらみゆき共著 2014年 きれい・ねっと)、『いのちの革命』(柴田久美子共著 2014年 きれい・ねっと)、『SAKIGAKE 新時代の扉を開く』(佐野浩一共著 2014年 きれい・ねっと)、『聖なる約束』(赤塚高仁共著 2014年 きれい・ねっと)、『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(朝倉慶共著 2014年11月 ビジネス社)、『智徳主義【まろUP!】で《日本経済の底上げ》は可能』(竹田和平、小川雅弘共著 2015年 ヒカルランド)、『日月神示的な生き方 大調和の「ミロクの世」を創る』(中矢伸一共著 2016年 きれい・ねっと)、『聖なる約束3 黙示を観る旅』(赤塚高仁共著 2016年 きれい・ねっと)、『お金は5次元の生き物です!』(はせくらみゆき共著 2016年 ヒカルランド)がある。
佐野 浩一(さの こういち)
株式会社本物研究所 代表取締役会長
公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事
ライフカラーカウンセラー認定協会 代表
1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。
著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる 自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた船井幸雄のすべて』(成甲書房)、船井幸雄との共著『本物の法則』(ビジネス社)、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)がある。
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