トップが語る、「いま、伝えたいこと」
新年、おめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
思えば、去年の暮れに脳梗塞を発症し、約2週間の入院。そこから、数か月の自宅療養期間を経て、少しずつ少しずつ日常を取り戻してきました。ですから、去年のこの時期は、新年に対する思い、目標などをしたためたものが一つも残っていません。空白の期間なんですね……。
おかげさまで、今年は元気に新年を迎えられました。すでに、これだけで感謝の思いがいっぱいです。では、「今年は新年に何を思う?」と心に尋ねてみると、突然「くまのプーさん」がイメージされたので、今回はプーさんの名言と照らし合わせながら、思いのままに書いてみたいと思いました。しばし、お付き合いくださいね。
新年を迎えると、多くの人の心に、静かな期待と同時に、言葉にしづらい緊張が芽生えるものです。昨日と今日の違いは、実際にはほとんど変わらないはずなのに、「一年の始まり」という区切りが、人の心に特別な意味を与えます。心理学では、人は時間を連続ではなく「区切り」で認識することで、自分の人生を理解しやすくすると考えられています。新年はその最たるものであり、「ここからなら変われる」「やり直せるかもしれない」と、心の中で静かなリセットが起こる瞬間だとも言えます。
しかし、この区切りは、ときに人を追い詰めることも事実です。「今年こそは変わらなければならない」「何か結果を出さなければならない」という思いが、まだ始まってもいない一年を重く感じさせることがあります。これは心理学でいう未来志向が過剰になった状態で、現在の自分が否定されやすくなっているサインでもあります。
そんな新年の心に、やさしく別の視点を差し出してくれるのが、くまのプーさんの言葉なんです。プーさんは、未来を計画することよりも、「今日」をどう感じるかを大切にします。作中で語られる有名な言葉に、
“Today is my favorite day.”という一節があります。
「今日は、ぼくのいちばん好きな日なんだ」というこの言葉は、新年だけが特別なのではなく、今日という一日そのものがすでに価値を持っていることを静かに伝えています。
心理学では、幸福感は未来の達成よりも、「今ここ」に注意を向けることで高まりやすいとされています。プーさんのこの言葉は、現代で言うマインドフルネスの感覚そのものです。新年に一年後の自分を思い描くことは悪いことではありませんが、それによって今の自分を置き去りにしてしまうと、心は満たされにくくなります。
また、新年は「努力」や「成長」が強調される時期でもあります。しかしプーさんは、努力を急がせることはありません。
“Doing nothing often leads to the very best of something.”
「何もしないことが、いちばん大切な何かにつながることもあるんだよ」
という言葉があります。この一節は、休むことや立ち止まることが、決して怠けではないことを教えてくれます。
心理学的にも、脳や心は常に前進している状態では回復できません。休息や余白があるからこそ、創造性や意欲は戻ってきます。新年早々に全力で走り出そうとするよりも、まずは心の呼吸を整えることが、一年を長く安定して生きるための土台になります。
一方で、「変わらなければならない自分」という理想像が強く浮かび上がってきたとき、その理想と現実の差に苦しくなる人も少なくありません。そんなとき、思い出したいのが、
“You can’t be brave if you’ve only had wonderful things happen to you.”
「つらいことがなければ、勇気は生まれないんだ」
という言葉です。これは、困難や弱さを経験している自分を否定しなくていい、というメッセージでもあります。
「自己受容」とは、理想の自分になることではなく、今の自分の状態を正しく認めることと考えたほうがよさそうです。プーさんは完璧なキャラクターでも賢者でもありません。それでも愛され、仲間に必要とされている存在です。その姿は、「今のままでも価値がある」という感覚を、読む人の心に自然と芽生えさせてくれます。
プーさんの親友は、小さなブタのぬいぐるみピグレットと、人間の少年クリストファー・ロビンです。ピグレットはプーさんの一番の理解者で心優しい存在、クリストファー・ロビンは「100エーカーの森」の仲間たちのリーダー的存在。プーさんの物語の軸となる人物であり、特に深い絆で結ばれています。
そんなプーさんが、人間関係についてもおもしろい表現をしています。
“A day without a friend is like a pot without a single drop of honey left inside.”
「友だちのいない一日は、はちみつの入っていない壺みたいなものだよ」
という表現は、成果や目標よりも、人とのつながりが心の栄養であることを教えてくれます。心理学では、安心できる人間関係は「安全基地」と呼ばれ、人が挑戦したり変化したりするための出発点になるとされています。新年に何か新しいことを始めたいなら、まずは自分が安心できる場所や人を大切にすることが、実は一番の近道だということになるでしょうか。
さらに印象的なメッセージがあります。
“Rivers know this: there is no hurry. We shall get there some day.”
「川は知っているんだ。急ぐ必要はないって。いつかちゃんと、たどり着くんだよ」
という言葉です。この一節は、「早く結果を出さなければ」という焦りを、そっとほどいてくれるように思いますが、いかがですか?
変化にはその人なりのペースがあるとされています。無理に急いだ変化は反動を生みやすく、長続きしません。川の流れのように、止まらず、しかし急がずに進むこと。それが一年を生きる上での、最も自然なリズムなのかもしれません。
そう考えると、新年とは、人生を一気に変えるためのスタートではなく、人生とやさしく再会するための合図だと言えるかもしれません。
“If you live to be a hundred, I want to live to be a hundred minus one day, so I never have to live without you.”
「もしきみが100歳まで生きるなら、ぼくは99歳と364日まで生きたいな。きみのいない日を過ごさなくてすむように」
という言葉に象徴されるように、プーさんの世界では、成果よりも存在そのものが大切にされています。
新しい年の始まりに、何者かになろうと急がなくてもいいのかもしれませんね。今日という一日を感じ、今の自分を否定せずに生きること。その積み重ねが、いつのまにか一年を形づくっていきます。そうだとすれば、新年は人生を一気に変えようとする“瞬間”ではなく、人生とやさしく向き合い直す機会だと言えます。今日という一日を丁寧に感じ、「今日はいい日になるかもしれない」と思えること。プーさんの言葉が長く愛され続けているのは、人生におけるいろんな不安や期待に揺れる私たちに、「急がなくていい」「今ここでいい」と静かに伝えてくれるからなのだと思います。
では、皆さん、よき一年を!
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舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。 2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了) 著書に『生き方の原理を変えよう』 |
佐野 浩一(さの こういち) 株式会社本物研究所 代表取締役会長ライフカラーカウンセラー認定協会 代表 公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事 あたみ・パンダの森ほいくえん 学園長 株式会社ヴォイス 代表取締役会長 他 1964年8月5日、大阪生まれ。大阪府立北野高等学校、関西学院大学法学部政治学科卒業。 大学卒業後13年間、私立中高一貫教育校の英語科教員として従事。2001年4月、株式会社船井総合研究所に入社。舩井幸雄より「人づくり法」の直伝を受け、企業幹部向け研修「人財塾」として体系化、その主幹を務め、経営者向け、社内研修向けに150回以上の講演、研修を実施した。2003年4月、株式会社本物研究所を創設し、代表取締役社長(現在会長)に就任。商品の「本物」、技術の「本物」、生き方、人づくりの「本物」を研究、開発し、広く啓もう、普及活動を行う。また、2008年にライフカラーカウンセラー認定協会を、2012 年5月には株式会社51 Dreams’Companyを、2015年9月に株式会社51コラボレーションズを設立。(2023年本物研究所と合併)さらに、2015年1月、舩井幸雄の思想、哲学を世に広めるために、公益財団法人舩井幸雄記念館を設立し、代表理事となる。2021年2月には、株式会社51メディカルを創業。そして、2022年11月、小規模保育事業B型として、「あたみ・パンダの森ほいくえん」を設立。学園長に就任。 2026年6月にヴォイスグループ5社を経営統合し、代表取締役会長に就任。現在に至る。 著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく 幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた 船井幸雄のすべて』(成甲書房)、『本物の法則』(ビジネス社)※船井幸雄との共著、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)、『SAKIGAKE 新時代の扉を開く』(きれい・ねっと)※舩井勝仁との共著、『幸せになる働き方の法則』(創藝社)、『舩井幸雄の魂が今語りかけてきたこと』(ヒカルランド)※矢山利彦氏、舩井勝仁氏との共著がある。 講演は、年間講演、研修多数。会社経営、学校経営、幹部育成、健康、食育、カウンセリング、話し方など、幅広いテーマで多数の講演を行っている。 |











株式会社船井本社 代表取締役社長



















