トップが語る、「いま、伝えたいこと」
衆議院選挙が終わりました。その結果については皆さんご存知の通りですが、投票率の低さには少し驚きました。選挙で自公の与党が大勝したのに、その後の株式市場はいったん大きく下がりましたが、今度はFRB(米連邦準備制度理事会)がFOMC(連邦公開市場委員会)のコメントで利上げに慎重な姿勢を示したことによって、株価は大きく上がり始めました。本当に予測が難しくなってきました。
それはともかく、投票締め切りの直後から、『出口調査』の結果によって、候補者の当確をいつものように発表することを不思議に思いませんか。
一般的には、この出口調査は、投票所の入り口で調査員が投票者に尋ねて、その結果を集約しているように思われがちですが、それはほんの一部の手法であって、事前の選挙区内での各候補の活動状況や、選挙区の特性と諸情勢を徹底的に調査をしているそうです。
そうです、予想ではなく、予測をするのです。だから、当たるのです。
さらに開票が始まると、その候補者(政党)の過去のデータ(指数化)などあらゆる調査結果と、主要な投票所の過去のデータに合わせて出口調査の結果が加えられます。そのデータも加味して“伸び率”がコンピュータによって計算され、当確の判定をするわけです。
何事も、事前の準備と指数化によるコンピュータ処理能力は、選挙だけではありませんが、現代はあらゆる分野において、目を見張るものがあります。近いうちに、コンピュータの能力が人間の能力を超える時代になることについても書いてみたいと思っていますが、テクノロジーの進歩は社会のあり方そのものを根本的に変えるインパクトをもたらすまでに進化しています。
ところで、何時も私たちが使っている『予想と予測』について今日は少し考えて見ます。この二つの言葉は、ほぼ同意語に取られますが、若干の違いがあると思います。私はもちろん専門家ではりませんが、広辞苑によりますと、
『予想』(想)〜あらかじめ想像すること、思うこと、考えること
『予測』(測)〜あらかじめ推測すること、おしはかること
水の深さをはかること、物の広さ、長さ、量をはかること。
『予』(豫)〜あらかじめ、かねて、前もって、ぐずぐずすること
ためらうこと、あたえること、おのれ、われ
というような意味になっています。
予想と予測の違いは、字の意味のように、具体的な事実に基づき推測することが予測なのでしょう。それに比べ観念的な思考も入れて考えるのが予想なのかも知れません。ちなみに、この、物事を予想・予測するという行為は、決して人間だけの特権とは思いませんが、この能力は人類が今日まで発展してきた思考力の根幹に関わるすぐれた力といえるでしょう。人間は未来に対して予測し、その準備をすることを常なる習性とし、そして応戦するのです。応戦のための“分度器”が予測する力なのでしょうか。
神のお告げを予測の源とした時代から、自ら予測する“分度器”を持つようになったのです。この“分度器”は人類の歴史的発展と共に世界的に鍛え上げられてきました。そこに宗教が生まれ、哲学が生まれ、芸術、科学が発展してきたのです。そしてこれらの“リベラルアーツ”は、技術・学問・芸術に要約されますが、時代の流れに順応しながら息づいているのです。
私は図らずも予測することをなりわいとして仕事をするようになりましたが、時として自分自身の予測に裏切られることがあります。今回も、舩井メディアのJUSTというCDマガジンで「年度末の解散はない」と予想し、見事に外しました。
笑ってしまうのは、投票をしたその足で熱海での講演に向かう車の中でその外れた自分の予想を聞きながら行くことになってしまったことです。
そこには、やはり自らの勉強不足と、予想外の事実との遭遇がありますが、父に言わせるなら「予想はしない方がいい」ということになるようです。
また、予測の延長線上には『仮説を立てる』という前段の構えがあると思います。仮説の構築能力はコンサルタントにとってとても大事な能力です。私が最もこの能力が優れていると感じているのは日本を代表するトップコンサルタントであり前船井総研会長の小山政彦先生の仮設構築能力です。もうすぐ発売の『ザ・フナイ』の新年号に来年の予想を小山会長一流の仮説に基づいてたっぷり書いていただいていますので、ぜひお読みいただければと存じます。
この仮説を立てる場合に大事な要素があります。家を建てるならば、その家を支える柱(仮説)の土台石です。土台石がなければ家(柱)は建ちません。
その土台石は何でしょうか、そうです。その者の考え(思想)のよって立つ軸でしょう。イデオロギーという表現も出来るでしょう。とても大事な基準です。
例えば、経済を論じ、予測する場合でも、古典派経済学のアダム・スミスか、マルクス経済学か、新古典派経済学のアルフレッド・マーシャルか、ケインズ経済学か、新古典派から出たオーストリア学派か、シカゴ学派、多様な土台石があります。
経済学と言えば日本でもついにトマ・ピケティの『21世紀の資本』(みすず書房)の邦訳が刊行され発売になりました。消費税まで入れると6,000円近い値段の本ですがベストセラーにランクインしているようです。私も早速購入しましたが、年末年始のお休みにじっくりと挑戦したいと思っています。
話を戻すと、個々人の軸となる考え方は、その者の人生観や世界観にまで結びついていると言っても過言ではないのです。今日、あらゆる『予測』が飛び交う時代、しっかりとその論者の本髄を見抜きたいものです。父・舩井幸雄は、あらゆる予測は、事柄の『ルール化』によって、的を射ることができると言っていました。学者ではなくコンサルタントとして分かりやすく伝えることを大事にした父らしい言葉だと改めて感じています。
=以上=
2014.12.22:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】予想と予測 (※舩井勝仁執筆)
2014.12.15:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】最近読んで参考になった本 (※舩井勝仁執筆)
2014.12.08:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】リーマン・ショックの再来 (※舩井勝仁執筆)
2014.12.01:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】沈殿の美学 (※舩井勝仁執筆)