トップが語る、「いま、伝えたいこと」
イスラエルにいて大丈夫ですか? そんな声をたくさんいただきますが、現地は至って平穏です。デモの最盛期が5月15日の「ナクバ(大参事)の日」でした。イスラエルの建国に伴って70万人以上のアラブ人難民が発生したことを忘れないための記念日です。
アメリカがイスラエルが独立を宣言した1948年5月14日から建国70周年を機に大使館をテルアビブからエルサレムに移転したことによって、パレスチナのガザ地区で大規模なデモが起き、それに対してイスラエル軍が発砲をしたことで多数の死者も出ています。
いまはそのエルサレムにいます。街ではトランプ大統領を称賛するポスターがいたるところに掲げられ、現地の人と話をするとトランプ大統領に感謝するという声を多く聞くことができます。街はいたって平穏でナクバの日の翌日にパレスチナにあるベツレヘムに行って、イエス・キリストが生まれた生誕教会の見学にも行ったのですが、いつもよりも観光客が少ないせいもあるのかもしれませんが、前に来たときよりも落ち着いた雰囲気でした。
さすがにナクバの日の当日はパレスチナにあるエリコという町に行くのはやめた方がいいということで中止しましたが、どうもナクバの日が過ぎたら返って平穏な日常生活が続いています。パレスチナの中でもハマスという過激派が実効支配しているガザ地区は危険なようですが、イスラエルが統治しているところはもちろん、イスラエル企業や観光に依存しているヨルダン川西岸地区はまったく問題ありません。
トランプ大統領はイランとの核合意を破棄し、大使館をエルサレムに移転したりして中東で物議を醸しています。どうも、大きな意図は原油価格を上げるというところにあるのではないでしょうか。アメリカの長期金利が3%を超える水準で安定し、日米の金利差が意識されることで円安になっていて、それが日本の株高につながっています。また、原油価格も70ドルを超える水準が定着してきて、目先は株式市場にとってプラスになっています。しかし、長い目で見ると原油高は日本経済にとってマイナスですし、金利高もインフレが意識され出すと逆に円高に繋がる可能性もあるので注意する必要はあると思います。
私たちのツアーでは、イスラエル観光省の高官やイスラエル日本友好協会の会長をお招きして、建国70周年セレモニーを開催させていただきました。メインゲストは赤塚高仁さんと監修・解説させていただいた『SCORCHED 焦がされた世代 ホロコースト生存者短編集』(きれい・ねっと)の著者であるイリット・アミエルさんでした。イリットさんはホロコーストの生存者の一人であり、その惨劇を伝えることが自分の使命だということで多くのエッセイを出版されています。
『SCORCHED』は彼女の初めての本であり、6か国語に翻訳されていて、今回の日本語版が7か国語目の出版になります。ホロコーストの悲劇で家族を失ったイリットさんは一人で様々な苦難を乗り越えてイスラエルにやってきて、キブツでイスラエルを代表する旅行会社アミエル社を1976年に創業した夫と出会い、2人の子ども、6人の孫、そして6人のひ孫さんがいるそうです。80歳を超えたいまでもお元気に新しい本を書いていらっしゃるそうですが、長生きはしたくないという話もしてくれました。本を読んでいただけば感じていただけますが、今でも忘れられない惨劇による心の傷が癒えていないのです。
でも、セレモニーでお元気にショートスピーチをしていただき、日本の皆さまにこの本を読んでいただけることに感激されていて、「今日は本当に楽しい日です」と何度も繰り返しておられました。ご高齢のイリットさんは、楽しいディナーの時間をご一緒した後、セレモニーの最後のプログラムであるイスラエルの国民的歌手のシュリー・ナタンさんのミニ・コンサートの前に帰られて行きました。あれだけイリットさんに喜んでいただけただけでも、このセレモニーを開催して良かったと思っています。
シュリー・ナタンさんの代表曲は「黄金のエルサレム」。47年前にイスラエルにひとりで移住してきた我らがガイド榊原茂さん(通称バラさん)が一番大好きな歌で、私の横に座っていたバラさんはシュリ―さんの声に合わせて少し涙ぐみながらずっと歌を口ずさんでいらっしゃいました。
この歌ができたのは、にんげんクラブのウィークリーレポートに少し書きましたが、イスラエルがエルサレムの全域を実効支配していまの領土をほぼ確定させることができた1967年の第三次中東戦争(6日間戦争)の年なので、51年前のことです。エジプトがイスラエルに侵攻する動きを見せる中で、ユダヤ人にとって大事な聖地である西の壁(嘆きの壁)に行けない悲しさを歌い上げたものだということですが、その2週間半後に6日間戦争の大勝利でエルサレムの東側も手に入れることができ、自由に聖地にいつでも行ける喜びを分かち合う歌になりました。
いまは70歳を超えるシュリーさんの歌声は、まったく歌を知らない私たちの心にも響き渡り、コンサートの後、長い時間、シュリーさんと語り合う参加者の人々の長い列が途切れることはありませんでした。一緒に旅に参加されている久米小百合さん(久保田早紀さんという名前で「異邦人」を大ヒットさせた、日本の国民的歌手ですね)が、「パレスチナの人の思いと、(ユダヤ人を迫害した)キリスト教徒がすべて悪いわけでもないということも忘れてはいけませんね」と私に語りかけてくれたことが印象的ですが、理屈で考えるのではなく、世界の紛争の最前線にあるイスラエルに来たからこそ感じられる何かを旅の仲間には持って帰っていただきたいと思っています。
=以上=
2018.05.21:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】黄金のエルサレム (※舩井勝仁執筆)
2018.05.14:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】矢山利彦先生 (※舩井勝仁執筆)
2018.05.07:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】副島先生の中国本 (※舩井勝仁執筆)