トップが語る、「いま、伝えたいこと」
まず、アメリカがよくて、日本がダメ……なんていう考えは、私にはまったくありません。このことをはじめに明確にお伝えしておきますね。ただ、カウンセラーとして接するクライアントさんたち、保育園でお預かりする園児さんたち、そして、経営者として関わる社員たちを見ていて、いろいろ考えることがあったのです。
そんなとき、ふと、アメリカでの体験を思い出したというわけです。
25歳のとき、はじめてアメリカに行きました。
シカゴ郊外に数か月滞在し、5つのホストファミリーにお世話になりました。
はじめての海外体験でしたし、英語も未熟……。ある程度は知っていたつもりでも、実際に飛び込んでみると、まったく違っていることや違和感を感じることもたくさんありました。
なかでも、自己主張については、決定的なものを感じていました。
「浩一はどうしたい?」
「浩一は、週末どこに行きたい?」
「ぼくは、朝ジョギングをするけど、浩一はどうする?」
「私はこう考えるが、浩一はどう考える?」
「朝ごはんは外で食べようと思うけど、浩一はどこに行きたい?」
ホストファミリーのパパやママももちろん主張しますが、それはまだいいとしましょう。何かの際には、私自身にとにかく決めさせようとすることには、かなり閉口してしまいました。
わからないこと、知らないことであっても、自分で決めることを要求されます。日本人だったら、「ここはお付き合いで、『はい』と返事したほうがいいかな……」などと考えてしまうところも、「YesかNo、どっち? 浩一が自分で決めなさい」と言われてしまいます。
とくに尋ねてもいないのに、「ぼくは、〜に関してこんな風に考えているんだ。浩一はどう考える?」と、パーティなどで、ほぼ初対面の人からもこんな問いかけをされてしまうんです。
「自己主張、つよ!」
そのときは、ただそんな風に感じていたのですが、実際に自己主張を大切にする「文化」が完全に備わっているんだと確信しました。「自分がどんな人間か、どんな考えを持っているのか、これらをお互いに相手に開示して、お互いのことを理解していく」というのが、どうやらアメリカのコミュニケーションの形式だと理解できたということです。
一方、日本では、協調性や穏便さ、伝統やルールを守る姿勢などが大切にされています。ですから、「一般的な常識を守ること」や「周りに迷惑をかけないこと」、「周りの空気を察知し、自分の意見を周りに寄せること」が比較的得意です……。
でも、そういったことばかりをしているうちに自己がなくなり、他者との境がわからなくなってしまうようなメンタルを生んでいることも事実。自己主張することも、結局苦手になってしまいます。
私が接したアメリカの人たちは、すべてに対して確固たる持論を持っていて、なにごとを決めるにも自分の意思が存在していました。これはなかなか強烈でした。日本人からすれば、「そんなことまで自分で決めるの?」ということも、アメリカ人からすれば「自分のことなのに、自分で決めないの? それっておかしくない?」ということのようです。
当時は教師でしたので、幼稚園から大学まで、各種学校の視察に行かせてもらいました。小さなお子さんを持つホストファミリーにも恵まれました。これは素晴らしい経験となりました。
そもそも、日本でも、生まれてから幼稚園に行くまでの間、つまり社会に属す前は、周囲が抑えつけない限り子どもはみんな自尊心が高いのです。初めてのことにも果敢に挑戦し、自信に満ち溢れています。3歳くらいまでは、親も祖父母も子どもをほめて伸ばすように見受けられます。
ところが、幼稚園や学校に入学したり、勉強を始めたりした途端に、自尊感情がどんどん低くなっていくのが、この日本。親が子どもに周囲と同じようにできることを求めてしまったり、自分たち自身についてもほかの母親や父親と比較してしまったりしているからです。
自尊感情を高めるためにまず有効なのは、自尊感情の高い人の側に身を置き、行動をともにすることだと、これはアメリカで学びました。子どもを取り巻く大人たちや周囲の人の自尊感情が高いと、相乗効果によって子どもの自尊感情は高まっていくものです。
自尊感情は、アメリカでは高い人がとっても多いように思います。環境的にもそのスパイラルに入っているので自然と高まりますが、日本では低い人が多いため学校や社会、家庭環境で自然に高まっていくことは困難に思えてしまいます。
ここがある意味、めちゃくちゃ大きな問題なんです。
それで、そうしたらいいのか?
まずは、「自分から変わること」だと言われています。とくに、親自身の自尊感情が上がっていくと、子どもの自尊感情も上がりやすくなるからです。
そこで、舩井流「長所伸展」と「包み込み」、そして「過去オール善、現状オール肯定」の考え方がとても役に立ちます。さらに、「あるがまま、なるがまま」の生き方でしょうか……。
弱い自分もダメな自分も自分自身である、あるがままでいいと、受け入れることがポイントになります。外見、性格、特技、長所・短所、病気、ハンディキャップなどをすべてひっくるめて自分であると受け止めることです。苦手な部分やうまくいかないことがあっても、自分には逆に優れているところや得意とするところもあるので、そういったよい部分を生かしていこうと考えてみます。人がなんと言おうと、「自分が好きで自分の人生を好きなように生きる」ことを目指すということですね。
こう考えると、やっぱり舩井幸雄は、人財育成の「天才」だなって、あらためて尊敬の念がこみ上げてきます。
ちなみに、アメリカでは、自尊感情を高めるために、つぎのようなシンプルな10項目を心がけることが推奨されています。ずいぶん前、ネットを見ていたときに、メモをしたのを引っ張り出してきました。ただ、自尊感情が低くなってしまっている人が一人で続けるには難しいことも含まれているな……って思いつつ、できそうな項目だけでも選んで、実行できたらと思うのです。そして、できれば、子どもたちといっしょに取り組んでみられたらと考えています。
1. Stop comparing yourself to others(人と比べるのをやめる)
SNSもマイナスの材料になっている気がします。人と比べるという点で。思い切ってSNSを絶つのも手で、自分と他人を比較することをやめたいですね。
2. Compliment yourself regularly(日常的に自分をほめる)
自分をほめること、自分を認めること、とっても大切です。一日の終わりに、振り返ってみて、よかったことを見つけて承認してあげたいですね。
3. Exercise consistently (継続的な運動をする)
カラダを動かすことならなんでもいいと思います。歩く、走るなどの有酸素運動がよいと言われますよね。継続は、自分自身へ自信をプレゼントできます。
4. Get the support you need to succeed(成功するために必要なサポートを得る)
良好な交友関係を築くこと。家族、友人、同じ楽しさを分かち合える仲間との適度な距離感が大事です。本当に困ったとき、助けてくれる友人、助けたいと思える友だちがいることが大切です。
5. Focus on your accomplishments(何事も成し遂げ完成させる)
何かを始めたら、最後まで続けること。「できた!」という気持ちは自尊心につながります。
6. Simply smile (笑顔で)
ともかく笑顔が大事です。意識して自分から笑顔を作って人と接することが大切です。
7. Make a list of all your qualities(自分の特性や特徴をリストアップする)
自分が得意なことや苦手なことは何か、どのようなタイプの人間かなど、自分のことをよく知るためにまずは自己分析をしてみましょう。短所を思いついたら、今までとは別の視点で見直してみて、よい方へ別解釈をすることです。これはカウンセリングでもよく使う手法です。reframing(リフレーミング)といいます。たとえば「注意散漫」だとしても、「それだけアンテナを張っている」と受け取れば、長所的解釈になります。とくに、子どもの短所に関しても、ネガティブな言葉からポジティブな言葉へと置き換えたいですね。
8. Eat better, Sleep well(よく食べ、よく眠る)
よく食べ、よく眠ることはとても大切。食事・睡眠は人間の生活の基本です。
9. Explore a passion(情熱を探求する)
自分の好きなこと、得意なこと、長所は何かということを追求します。今やりたいことなど、自分の情熱についても探求できるといいですね。
10. Treat yourself something nice(自分を大切に扱う)
自分の心に素直に生きることが大切ですね。相手優先ではなく、自分の時間を大事にすることです。
こうした10項目を実行していくと、自分自身の自尊感情を高めていくことができるようです。そうすると、人との接し方も変わってくるので、大事なことです。褒められること。称賛されること。あるいは、褒められる環境、称賛される場などをつくることも大事ですね。
未来の子どもたちに、いまの大人がもっともしてあげないといけないことは何か?
そんなことを考えていたら、こういう展開になりました。
私自身、別にアメリカかぶれしているつもりはありませんが、「学べるところは学ぶ」という感覚で理解していただけたらと思います。
感謝
2024.02.19:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】「なぜ、アメリカ人は自尊感情が高いのか?」 (※佐野浩一執筆)
2024.02.12:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】天人に還る (※舩井勝仁執筆)
2024.02.05:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】予防医学からみた人とのつながり (※佐野浩一執筆)
舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長 1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。 2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了) 著書に『生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『未来から考える新しい生き方』(2011年 海竜社)、『舩井幸雄が一番伝えたかった事』(2013年きれい・ねっと)、『チェンジ・マネー』(はせくらみゆき共著 2014年 きれい・ねっと)、『いのちの革命』(柴田久美子共著 2014年 きれい・ねっと)、『SAKIGAKE 新時代の扉を開く』(佐野浩一共著 2014年 きれい・ねっと)、『聖なる約束』(赤塚高仁共著 2014年 きれい・ねっと)、『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(朝倉慶共著 2014年11月 ビジネス社)、『智徳主義【まろUP!】で《日本経済の底上げ》は可能』(竹田和平、小川雅弘共著 2015年 ヒカルランド)、『日月神示的な生き方 大調和の「ミロクの世」を創る』(中矢伸一共著 2016年 きれい・ねっと)、『聖なる約束3 黙示を観る旅』(赤塚高仁共著 2016年 きれい・ねっと)、『お金は5次元の生き物です!』(はせくらみゆき共著 2016年 ヒカルランド)がある。 |
佐野 浩一(さの こういち) 株式会社本物研究所 代表取締役社長 株式会社51コラボレーションズ 代表取締役会長 公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事 ライフカラーカウンセラー認定協会 代表 1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。 著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる 自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた船井幸雄のすべて』(成甲書房)、船井幸雄との共著『本物の法則』(ビジネス社)、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)がある。 |