トップが語る、「いま、伝えたいこと」
トランプ大統領の勢いが止まりません。FRBのパウエル議長はトランプ大統領の方針に逆らって利下げを見送りました。トランプ氏は得意のSNSでパウエル氏に対して罵詈雑言を浴びせていますが、解任に言及すると株価が下がることを学ばれたので、そこには今回は触れていないようです。来年の5月までの議長任期が続く間は、いまのところ金融マーケットは安心しているというのが現状なのかもしれませんが、後任に果たして誰を選ぶのかが懸念されるというところです。
元々2018年にパウエル議長を指名したのはトランプ大統領でした。この時は、パウエル議長も指名してくれた大統領に対して誠意を見せて、コロナ禍もありましたが利下げに応じたのですが、その後のインフレへの対応という本来の中央銀行にとっての一番大事な機能を果たすために、今回は簡単には妥協しない姿勢を示しているというところだと思います。
5月9日付の日経新聞の朝刊にイスラエルの歴史学者で『サピエンス全史』、『ホモ・デウス』(邦訳はいずれも河出文庫)等の著書が全世界で累計4500万部以上のベストセラーになっているユヴァル・ノア・ハラリ博士が寄稿されています。いままで読んだ中でトランプ政権の本質を最もわかりやすく解説してくれているように感じました。
トランプ大統領の世界観はゼロサムゲームで動くというもので、だから必然的に勝者と敗者ができる。既存の国際協定や国際機関、国家を弱体化させて特定の邪悪な国際的エリートだけが恩恵を受ける陰謀となる。アメリカは世界で一番強い国家なのだから最強の勝者になるべきで、それが実現してこなかったのは邪悪なエリートたちの策略で、トランプ氏はアメリカの強さを活かして再び偉大な国になるためにそれに対抗していく、というものだと教えてくれました。
その世界観で言うと、弱者は強者に従うべきで、ロシアとウクライナを比べるとウクライナは弱いのだから現状を認めて降伏すべきである。戦争は常に弱者が背伸びをして弱いことを認めないから起こるもので、だからすべて弱者の責任である。アメリカの安全保障にとって不可欠なグリーンランドの帰属もデンマークよりもアメリカが強いのだから、デンマークはアメリカの大統領である自分の要求に応える責任がある。もし、アメリカとデンマークの間に戦争が起こった場合は、弱者のくせにアメリカに逆らったデンマークが責任を負わなければいけないというものです。
足下のマーケットは、イギリスとの間で貿易協定が締結されたことで円安(ドル高)株高になっていますが、イギリスからの車の輸入はそれほどアメリカに大きな赤字をもたらしていないし、何よりも金融力や歴史を考えたときのイギリスの力はトランプ大統領の世界観によると侮れないものがあるので、落としどころを見つけて妥協したというのが本質なのかもしれません。だから、日本も同じように車の関税を安くしてもらえるという期待はしない方がいいのかなと思ったりもします。
ハラリ博士の寄稿に戻ると、トランプ以前の世界観では、世界はウィンウィンでできていて協力すると全体で発展できるというものでした。確かに、舩井幸雄ワードで言うところのディープステート(DS)の陰謀がまったくないとは言えないとも思いますが、それにしてもいまのアメリカの政権のやり方を受け入れていくのは、なかなか簡単ではなく、年内いっぱいぐらいはトランプ大統領に金融勢力であるDS勢や既存の国家は振り回されるのかなと感じています。
日本がトランプ大統領に対抗するためには日本独自の世界観のルーツに還ることは有効かなと思います。今週は伊勢神宮参事の吉川竜実著『大和心で「生きる」 神道のルーツ』(きずな出版)を紹介したいと思います。本当の幸せについて、人は常に考え続けています。世代によってその価値観は大きく異なるのも、様々な思想的な変化を繰り返しているのも一因でしょう。しかし幸せの根本的な部分を理解する為には、理屈だけでは難しく、理屈ではなく感性と呼ばれる根本の部分を理解する必要があるようにも思えます。本書は日本人の感性の本質に立ち返る、誰もが持っているアイデンティティー=大和心についてそれが最も顕在化していた縄文時代や神道を通じて学び、その精神を認識する重要性について説かれたものです。
まず必要な知識として、神道についての解説があるのですが、例えば我々が当たり前に使用している言葉の意味から学び直します。『楽しい』や『面白い』の意味など、このような機会がなければ知る事もない部分についても知る事が可能で、興味深い部分の一つとなっています。続いて縄文時代について。自然と共生し、より本質的な部分に近い生き方をしていた時代について詳しい解説があります。前述したようにこの時代への理解を深めることは大和心について知る為の重要なピースの一つです。例えば当時作られていた縄文土器、土偶、勾玉などは非常に優れたメッセージ性を秘めており、それらの意味について知るだけでも理解を深めることができますし、現在でも残る風習、伝統の源流となる文化的な部分について書かれている部分も同様です。
これらを踏まえた上で、伝承や神話も要素として取り入れることで、大和心を理解する事ができ、日本人としてのアイデンティティーをしっかりと認識できる、というものです。本書の最後にもあるように、自然の摂理に従う事の大切さを、舩井幸雄も度々説いていました。合理性が重視され、生活様式そのものに大きな変化が訪れている時代だからこそ、本当の生き方や幸せについて問い正す。強く誇り高く、自然体に生きる事が求められているのかもしれません。
吉川先生とは父の時代から大変親しくしていただいて、当欄の佐野社長のコメントも本書の中で引用していただいています。火焔土器が深海の様を表しているという吉川先生の世界観の講演を北海道ツアーに参加した時にお聞きしたことがあり、一般的に言われているのとは違う神道のルーツを神宮の幹部でいらっしゃる吉川先生の世界観から学ぶのは、トランプ大統領が世界の仕組みを変えようとしているいまだからこそ意義があるのだと思います。本書はとても読みやすい内容になっているので、ぜひお読みいただければと思います。
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2025.05.05:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】あらためて、考えさせられました…… (※佐野浩一執筆)


舩井 勝仁 (ふない かつひと)
![]() 1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。 2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了) 著書に『生き方の原理を変えよう』 |
佐野 浩一(さの こういち)![]() 株式会社51コラボレーションズ 代表取締役会長 公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事 ライフカラーカウンセラー認定協会 代表 1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。 著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』 |
