トップが語る、「いま、伝えたいこと」
長期金利の水準が上がってきて一時的には3%台になりました。日銀の植田総裁が2024年にYCC(イールドカーブ・コントロール:長期金利を0%程度に維持する)政策を中止するまでは、実態はともかく建前では0%が目標であったことを考えると、たった2年数カ月の期間で3%になりました。金融政策という観点で考えると天地がひっくり返るぐらいの政策転換を実施したことになります。ちょっと皮肉も込められてはいますが、アベノミクスで目標にしていた2%程度のインフレ目標は達成したわけですから、ベッセント財務長官が求められるようにリフレ政策(金融緩和や積極財政)を止めるべき時が来ていて、植田総裁は就任時からいまの状態を見通していて、それに導くべく政策を決定してこられたのだと感じます。
日本に限らず主要国の長期金利が顕著に上昇しており、その背景としてどこの国も大きな財政赤字を抱えるようになったことがあげられます。日本の報道だけを読んでいては実感できませんが、ウォールストリートジャーナル(WSJ)の日本版を読んでいると、IMF(国際通貨基金)の予想では今年の日本の財政赤字はGDP比で約2%にとどまる見込みで、G7の中で3年連続最小になりそうだということが紹介されています。高市総理は積極財政を声高に叫んでいますが、実は財務省主導で財政の引き締めに転換を始めているのかもしれません。
いまの長期金利が上がるトレンドを作ったのは、日本政府が6月末に発表した「骨太の方針」を巡る財政規律への不安から始まっています。それに対して債券市場がいわゆる債券自警団を発出して政権に揺さぶりをかけて、実質的に高市政権の骨太の方針を骨抜きにしてしまったのです。ベッセント長官のメッセージはわかりやすく、2年間限定の食料品の消費税減税までは認めるが、それ以上の財政拡張や金融緩和は認めない。だから、日銀は速やかに金利を引き上げるべきだということをおっしゃっていて、市場が予想する9月の0.25%利上げ確率は100%を超えて、もしかしたら0.5%の引き上げもあるかもしれないとみられるようになりました。
債券自警団というのは、面白い表現ですが、最初に使ったのは1980年代に著名な投資ストラテジストであるエドワード・ヤルデニ氏が使ったもので、政治家にとって野党の存在よりも市場で金利が急騰するのが一番怖い。実際に、トランプ関税が典型的なTACO(トランプはすぐに方針を変える)になってしまって腰砕けになった原因はこの自警団が発動されて金利が急騰したことが原因だと言われていますし、イギリスのトラス元首相がわずか50日弱で退陣に追い込まれたのも自警団が発動されたからです。今回の骨太ショックで高市総理が退陣を迫られることはないという見方が大勢ですが、ある意味、財務省の思惑通りに財政再建路線がとられることになってきました。
ベッセント長官の優先度で言うと、円安の是正が一番の目的だったと感じていますが、9月3日の海外マーケットでは5円程度も円が急騰したので、まさに思惑通りに推移したのだと思います。やっぱり、日本に対するアメリカの圧力は強烈であることを思い知らされる出来事です。
今週のテーマは、「経済成長」です。経済よりもサステナビリティを大事にしている人たちには何を時代錯誤のテーマのブログを書くのか、と怒られそうですが、今週紹介する本の著者である増田悦佐先生はちょっと皮肉を込めて書名を決められたのではないでしょうか。この本で書いてあることは、債券自警団の警告を受けてしまうほど追い込まれている日本社会の現状を考えれば実現不可能だと思われますが、増田先生の提言が実現すればあり得ないと思われている経済成長さえ実現できるという構成になっているように感じられます。その本は、『やっぱり高度経済成長は復活できる』(ビジネス社)です。
もちろん、一流アナリストとしての見方はまったく変わらずに一貫しているので、本書でも書かれているように、自警団の発動まで至った惨事はアベノミクス以来の間違ったリフレ政策が原因であり、ベッセント長官が言うようにリフレ政策を止めればいいということになります。もちろん、財政再建を目指す財務省とはまったく違う文脈でおっしゃっていることは説明するまでもないと思いますが、以前、直接お会いしてお話をうかがった内容から憶測すると、早晩、米中経済は両国とも崩壊するので何もせず黙って漁夫の利を得られるのを待っていればいいという基本的なお考えに基づくものだと思います。
副題に『女性の所得倍増こそ最強の政策』とあるように、女性の現状の改善が大きなテーマの一つになっています。この本の面白いところは、人権などによる格差是正ではなく、この問題になると感情的になりがちな男性でも納得できるようロジカルに、理論立ててその重要性を説いていることです。他国と比べた際の日本人女性のデータに基づいての分析です。収入については、男性と比べてまだまだ格差は大きく、それは年齢を重ねるにつれて顕著になっていきます。共働きや一人で生きていく女性が増える方向に変化したものの、日本社会の仕組みはまだまだ昭和の仕組みであった専業主婦が当たり前で女性は一定の年齢を境にイエに入る頃のものから根本的な部分で転換できていません。
紹介されたデータによれば、日本人女性は平等を意識した教育の成果もあり、他国に比べて学力などで示される能力面においては男性よりも平均的に優れています。所得倍増もただやみくもに給与水準を上げるだけではなく、例えば女性が働きやすいような、それぞれの特徴に合わせて能力を発揮できる場所で適切に働ける環境を築き、その成果によってもたらされるべきものであると主張されています。本当の意味で眠っている優れた人材を活用できていない現状は、国自体における大きな損失であり、逆にこの部分を改善し、掘り起こすことができれば、日本は再び大きな成長を遂げることが可能になるという主張は、確かに理に適っていると言えるでしょう。
史上初めて女性である高市総理と片山財務大臣が誕生しました。時代が女性の活躍を求めているということが事実であれば、真の意味での女性の社会進出のひとつの象徴的なできごとと考えてもいいのだと思います。しかしそれと同時に、結婚をしない、子どもを作らないが女性の活躍が目立ってしまっている現状についても改善が必要ですが、所得面の改善、働き方の最適化、離婚によりシングルマザーになってしまった際に男性に比べて大きなハンデを背負う現状を変えられれば、ある程度は対応できるものではないでしょうか。政治的な主張などもあるので全面的に賛成とまでは言いませんが、視点とはしては非常に面白い一冊でした。これを機に我々も女性の立場や現状について、改めて考えていく必要を感じています。
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舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。 2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了) 著書に『生き方の原理を変えよう』 |
佐野 浩一(さの こういち) 株式会社本物研究所 代表取締役会長ライフカラーカウンセラー認定協会 代表 公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事 あたみ・パンダの森ほいくえん 学園長 株式会社ヴォイス 代表取締役会長 他 1964年8月5日、大阪生まれ。大阪府立北野高等学校、関西学院大学法学部政治学科卒業。 大学卒業後13年間、私立中高一貫教育校の英語科教員として従事。2001年4月、株式会社船井総合研究所に入社。舩井幸雄より「人づくり法」の直伝を受け、企業幹部向け研修「人財塾」として体系化、その主幹を務め、経営者向け、社内研修向けに150回以上の講演、研修を実施した。2003年4月、株式会社本物研究所を創設し、代表取締役社長(現在会長)に就任。商品の「本物」、技術の「本物」、生き方、人づくりの「本物」を研究、開発し、広く啓もう、普及活動を行う。また、2008年にライフカラーカウンセラー認定協会を、2012 年5月には株式会社51 Dreams’Companyを、2015年9月に株式会社51コラボレーションズを設立。(2023年本物研究所と合併)さらに、2015年1月、舩井幸雄の思想、哲学を世に広めるために、公益財団法人舩井幸雄記念館を設立し、代表理事となる。2021年2月には、株式会社51メディカルを創業。そして、2022年11月、小規模保育事業B型として、「あたみ・パンダの森ほいくえん」を設立。学園長に就任。 2026年6月にヴォイスグループ5社を経営統合し、代表取締役会長に就任。現在に至る。 著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく 幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた 船井幸雄のすべて』(成甲書房)、『本物の法則』(ビジネス社)※船井幸雄との共著、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)、『SAKIGAKE 新時代の扉を開く』(きれい・ねっと)※舩井勝仁との共著、『幸せになる働き方の法則』(創藝社)、『舩井幸雄の魂が今語りかけてきたこと』(ヒカルランド)※矢山利彦氏、舩井勝仁氏との共著がある。 講演は、年間講演、研修多数。会社経営、学校経営、幹部育成、健康、食育、カウンセリング、話し方など、幅広いテーマで多数の講演を行っている。 |











株式会社船井本社 代表取締役社長



















