“超プロ”K氏の金融講座

このページは、舩井幸雄が当サイトの『舩井幸雄のいま知らせたいこと』ページや自著で、立て続けに紹介していた経済アナリスト・K氏こと
朝倉 慶氏によるコラムページです。朝倉氏の著書はベストセラーにもなっています。

2018.08
急進化する米国政治

アレクサンドリア・オカシオ・コルテス氏
(写真:産経デジタルizaより)

 「私たちの問題は右派か左派かではない! 最富裕層と貧困層の問題だ!」28歳のアレクサンドリア・オカシオ・コルテス氏は米民主党の新しい顔です。民主党の予備選でニューヨークの選挙区において大番狂わせが起きました。コルテス氏が民主党の重鎮で党内のナンバー4の要職にあったジョー・クローリー氏を破ったのです。これには当選した本人もびっくり仰天で、全米の大きな話題となっています。コルテス氏の選挙資金はクローリー氏の10分の1、普通ではとてもかなうわけもありません。コルテス氏の父親はニューヨークの低所得層エリアであるブロンクス出身、母親はプエルトルコ出身です。コルテス氏は1年前まではバーテンダーとしてレストランで働いていたというのです。それが民主党の議員になろうというのです。まさに夢物語、今ではその大出世物語を揶揄して<政界のロックスター>と呼ばれてテレビや新聞、雑誌などマスコミに引っ張りだこの状態です。

●米国の政治シーンで現在起こっていること
 一体米国の政治シーンに何が起こっているのでしょうか? 前回のレポートでは共和党の議員として売春宿を経営しているデニス・ホフ氏が共和党の正式な候補者となったという驚きの事実を伝えました。そのホフ氏をキリスト教福音派の牧師まで支持しているというのですからレポートを読んだ人も更に驚いたと思います。今回も米国の衝撃的な政治の流れ、並びに社会の変化を米民主党の動きを通してレポートします。

 従来米国政治のシーンは共和党、民主党の二大政党が政権交代を繰り返していたわけですが、共和党においては前回の大統領選挙では誰もが共和党の大統領候補にはなり得ない、と思われていたトランプ氏が予想を覆して共和党の大統領候補にまで勝ち上がり、本戦でも勝利は確実と思われていたヒラリー・クリントン候補を破って、正式な大統領となってしまいました。そのトランプ大統領が米国第一主義を引っさげて傍若無人に振る舞い、現在世界を混乱させているのはご存知の通りです。
 トランプ氏もかなり独善的なとても議員にはふさわしくないようなタイプの人間ですが、現在は世界中でかような極端な強さを見せる左右のポピュリスト政治家が大きな支持を集める傾向があります。イタリアでも極右と極左の連立政権ができました。極右政党は同盟で、移民を徹底的に排除することを公約にしています。また財政的にはバラマキ政策を掲げています。極左の五つ星運動は同じく財政のバラマキ政策を支持、またEUからの離脱を主張しています。本来ならば極右と極左、日本の政治に例えれば共産党と自民党の右派が連立政権を組むようなもので、そんなことは常識的にはあり得ないわけですが、イタリアにおいては、この極右と極左の政党がバラマキ政策という一致点をもとに政権樹立となりました。
 この極端な右か左か、ないしは独裁的な政権が世界中で広がっています。ロシアのプーチン大統領や、中国の習近平政権も独裁色を強めていますし、トルコのエルドアン大統領は言うに及ばず、アジアにおいても軍部が政治を牛耳るタイ、選挙で野党を許さないカンボジア、フィリピンのドゥテルテ大統領など強権的な政治が広がっています。
 米国ではトランプ大統領が中間選挙前で余計に強硬な貿易政策を進めていますが、そのトランプ政治に反対する勢力である、民主党は現在極端に左傾化してきたように思えます。
 米国においてもかような左右の極端な政治スタイルが支持されるということは、人々が基本的に現状に不満を抱いていて、それを急進的に変えていきたいという内からの願望が強いからでしょう。有権者が米国第一主義をトランプ氏に期待するのと一緒で、左派の候補者に対しては大胆なバラマキ政策を期待しているわけです。バラマキ政策と言えば、その末路として典型的なベネズエラ政治においては、経済が完全に破綻に瀕しているわけです。米国民主党の急進的な候補者はかような例は全く無視して、バラマキ政策のいいところしか喧伝していないわけです。

●社会主義への憧れが強いミレニアル世代
 ポピュリストが良いことばかり言って、有権者を惑わすのはどこの国でも同じですが、現在の米民主党を支える米国の若い世代、いわゆるミレニアル世代の意識には注意を要します。ミレニアル世代とは1977年から1996年に生まれた現在20歳以上から30歳代の若い年代層です(※1980年代から2000年代初頭までに生まれた人をいうこともある)。ミレニアル世代は現在米国で最も多数の年齢層となっています。このミレニアル世代においては社会主義への嫌悪感はほとんどないようで、アンケート調査によりますと社会主義国で暮らすことを望む人が45%、共産主義国で暮らすことが望む人が7%、そして資本主義国で暮らすことを望む人は42%ということです。かようにミレニアル世代においては社会主義への憧れが強く、社会主義に対して思想的なアレルギーがないのです。
 これは社会主義の悲劇とか社会主義の崩壊が起きたのが遥か昔ということも影響していると思います。スターリンも毛沢東も国内統治において数千万人の死者を出すなど悲劇の歴史があったわけですが、かような歴史についてミレニアル世代はほとんど知識がないようです。
 先の米国大統領選において、民主党の指名争いでは最後までヒラリー・クリントン氏とサンダース氏が接戦を繰り返しました。サンダース氏は自らを社会主義者と呼び、大学教育の無料化などを訴えたわけですが、これが大学生を中心とする若い層に圧倒的な支持を得ました。
 世界中で所得の格差が広がってきていて、富が富裕層に集中してきている傾向が収まりません。日本と違って米国においては物価が恒常的に上昇し続けているわけですが、その中でも最も上昇しているのが大学の授業料です。米国において1985年から2013年の間に高等教育にかかる費用は500%も増加したと言われています。現在米国では多くの大学生は借金を背負ってやっと教育を受けるか、ないしは進学をあきらめる、または大学を出てから学生ローンの借金の返済地獄に苦しむという状態になっています。この学生ローン問題は大きな不良債権の巣となっていて米国の深刻な社会問題となっています。かように普通の人が教育を手軽に受けられないような状況に当事者である学生は憤りを抱き、このような資本主義社会の成り立ちに疑問を感じているのです。ですから、自らの境遇から社会主義に対しての憧れが強まってくるわけです。
 社会主義の過去や悲惨な部分はあまり大きく報道されてきていません。過去のものだからです。こうしてミレニアル世代は左傾化し、格差是正、大学無料化、国民皆保険の導入など、社会的弱者を救済するという民主党左派の考えに同調するようになっています。

●今後の米国、そして世界の行方
 もちろん、大学教育が無料化し、国民皆保険ができて、人々の収入格差がなくなるのが望ましいことではあるわけですが、現実問題としては財政的に余裕があるわけではありませんから、かようなバラマキ政策を行うことは経済の停滞や悪性インフレの発生などとてつもない副作用を伴うわけです。しかしポピュリスト政党がかような甘い話ばかりを提示すると人々は乗ってしまうわけです。まさに過激な社会主義思想なのですが、かような社会主義的な考えを全面に出して、選挙戦を戦ってコルテス氏は当選したわけです。米国においてかような社会主義的な急進的な思想が急激に広がってきていることも注意すべきです。
 コルテス氏は選挙戦において「私のような女性は選挙に出ないと思われている。私は裕福な家庭や有力者の家庭に生まれなかった」と自らの生い立ちを述べて、有権者にアピールしました。また選挙戦においては「若者、有色人種、英語が第二言語の人、労働者階級の人、二つの仕事を掛け持ちしているために忙し過ぎて投票に行けない人の心に届くように心がけた」と戦いを振り返っています。
 トランプ氏を大統領に押し上げた原動力は、見捨てられた白人の労働者層と言われていますが、コルテス氏は逆に若者や有色人種に的を絞ったようです。いずれにしてもトランプ氏は白人労働者やキリスト教右派など右寄りの支持者を基盤にしています。一方、コルテス氏は移民や貧困層など左寄りの支持者が大半です。
 かような格差拡大を背景にした社会の分裂や、左右両派の極端な政策や主張がぶつかり合うのが現在の政治シーンの特徴です。有権者は温厚な指導者よりも激しく急進的な指導者を求める傾向を強めています。結果、どうしても政治がより急進的になっていきます。
 現在の米国の政治シーンで起こっている流れは世界の流れと通じたものがあります。
 そしてその結果としてどの国も自分本意となり、妥協を拒みます。このような流れは各国間の対立や国内内部の対立も深めていきます。現在米国の景気拡大は史上最高の長さで続いていて、株価も絶好調、失業率は最低水準に近く、米国全体が好況を謳歌しているのです。その米国でかような状況が起こっていて、人々が大きな欲求不満を抱えているわけです。
 今後、株価下落や景気後退が起こって来た時はどうなるのか? また米国一強のもとで混乱を深める世界全体はどうなっていくのか、将来は楽観できない状況です。


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バックナンバー
18/08

急進化する米国政治

18/07

衰えぬトランプ人気

18/06

米中対立とトランプ劇場

18/05

監視社会

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新著『株の暴騰が始まった!』まえがき

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イアン・ブレマーの警鐘

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ビットコイン相場は終了へ

17/11

年金が大黒字

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株式市場の<びっくり現象>

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好調な日本経済と外部情勢

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加速する人手不足と日本の将来

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新著『暴走する日銀相場』まえがき

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AI技術者に殺到するヘッジファンド

16/08

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衣食住がただ、お金のいらない世界に!?

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トランプ旋風が写すもの

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波乱で始まった2016年

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現れ始めた高齢化社会のひずみ

15/08

荒れた株式市場の先行きは?

15/07

異常気象の連鎖

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値上げラッシュ

15/05

新刊『株、株、株! もう買うしかない』まえがき

15/04

日米同盟強化の恩恵

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アベノミクス その光と影

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ギリシアの悲哀

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止まらない<株売却ブーム>

14/12

アベノミクス

14/11

バンザイノミクス

14/10

新刊『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(舩井勝仁との共著)まえがきより(※目次、舩井勝仁のあとがきも含む)

14/09

加速する物価高

14/08

新冷戦という脅威

14/07

新刊『株は再び急騰、国債は暴落へ』まえがき より

14/06

深刻化する人手不足

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物価高騰に備えよ

10/10

まえがき(新著『2011年 本当の危機が始まる!』より)

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09/08

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09/02

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09/01

ゲート条項

08/12

ドバイの落日

08/11

ターミネーター


暴走する日銀相場『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)に引き続き、『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)が2009年5月に発売。その後 家族で読めるファミリーブックシリーズ『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)が同年5月30日に発売。さらに2009年11月には、船井幸雄と朝倉氏の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)が発売され、2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』(ダイヤモンド社)を、2011年7月に『2012年、日本経済は大崩壊する!』(幻冬舎)を、2011年12月に『もうこれは世界大恐慌』 (徳間書店)を発売、2012年6月に『2013年、株式投資に答えがある』(ビジネス社)を、2012年10月に朝倉慶さん監修、ピーター・シフ著の『アメリカが暴発する! 大恐慌か超インフレだ』(ビジネス社)を発売。2013年2月に『株バブル勃発、円は大暴落』(幻冬舎)を、2013年9月に『2014年 インフレに向かう世界 だから株にマネーが殺到する!』(徳間書店)を 、2014年7月に『株は再び急騰、国債は暴落へ』(幻冬舎)を、2014年11月に舩井勝仁との共著『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(ビジネス社)を発売、2015年5月に『株、株、株!もう買うしかない』を発売、2016年3月に『世界経済のトレンドが変わった!』(幻冬舎刊)を発売、最新刊に『暴走する日銀相場』(2016年10月 徳間書店刊)がある。

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Profile:朝倉 慶(あさくら けい)

K朝倉慶経済アナリスト。 株式会社アセットマネジメントあさくら 代表取締役。 舩井幸雄が「経済予測の“超プロ”」と紹介し、その鋭い見解に注目が集まっている。早い時期から、今後の世界経済に危機感を抱き、その見解を舩井幸雄にレポートで送り続けてきた。 実際、2007年のサブプライムローン問題を皮切りに、その経済予測は当たり続けている。 著書『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)がアマゾンランキング第4位を記録し、2009年5月には新刊『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)および『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)を発売。2009年11月に舩井幸雄との初の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)、2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』(ダイヤモンド社)を、2011年7月に『2012年、日本経済は大崩壊する!』(幻冬舎)を発売。2011年12月に『もうこれは世界大恐慌』(徳間書店)を、2012年6月に『2013年、株式投資に答えがある』(ビジネス社)を、2012年10月に朝倉慶さん監修、ピーター・シフ著の『アメリカが暴発する! 大恐慌か超インフレだ』(ビジネス社)を発売。2013年2月に『株バブル勃発、円は大暴落』(幻冬舎)を、2013年9月に『2014年 インフレに向かう世界 だから株にマネーが殺到する!』(徳間書店)を 、2014年7月に『株は再び急騰、国債は暴落へ』(幻冬舎)を、2014年11月に舩井勝仁との共著『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(ビジネス社)を発売、2015年5月に『株、株、株!もう買うしかない』、2016年3月に『世界経済のトレンドが変わった!』(幻冬舎刊)を発売、最新刊に『暴走する日銀相場』(2016年10月 徳間書店刊)がある。

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