“超プロ”K氏の金融講座

このページは、舩井幸雄が当サイトの『舩井幸雄のいま知らせたいこと』ページや自著で、立て続けに紹介していた経済アナリスト・K氏こと
朝倉 慶氏によるコラムページです。朝倉氏の著書はベストセラーにもなっています。

2025.02
ドイツ総選挙に思う事

「責任を自覚している。できる限り早く行動力のある政府を樹立する」
 注目されたドイツの総選挙は事前の予想通り、最大野党のキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)が勝利しました。党首のフリードリッヒ・メルツ氏はこの勝利に対して浮かれた様子はありません。今後連立交渉を急ぐ考えを示しました。実際CDU・CSUの得票率は28.6%であり、議席の獲得は過半数に届いていません。連立の相手はこれまでの与党だったショルツ首相率いる社会民主党(SPD)となる模様です。両者合わせてかろうじて過半数に届いているので、連立政権の樹立には時間がかからないと思われます。
 敗れた与党SPDのショルツ首相は「私の責任だ」と敗戦の弁を述べています。しかしながら世界中が注目していたのは、極右政党の「ドイツのための選択肢(AfD)」がどのくらい票を伸ばすかということでした。AfDは事前の予想通り票を伸ばし、前回2021年の選挙から倍増の20.8%の得票率を得ることが出来ました。
 選挙期間中は米国テスラのトップであるイーロン・マスク氏が公然とAfD支持を鮮明にしてあからさまな選挙介入を繰り返して欧州全体で物議を醸しだしていました。米国では米国第一主義の下、トランプ氏が大統領となりましたが、トランプ政権としては同じくドイツにおいても考え方が似通っているAfDの勝利を強く望んでいたようです。選挙結果が判明するとAfDのワイデル共同党首は「歴史的な勝利だ」と勝利宣言を行いました。ワイデル氏は早くもAfDとしてメルツ氏に新政権入りを要求しています。

●ドイツ総選挙と米大統領選の共通点
 今回の選挙の驚きの一つはその得票率にあります。今回のドイツの総選挙の得票率は何と84%、如何にドイツ国民が今回の選挙に関心を持っていたかわかるというものです。最終的な議席数はCDU・CSUが208、AfDが152、SPDが120、緑の党が85、左派党が64となっています。何と言っても選挙最大の争点は移民問題でした。AfDの投票した有権者のうち99%が「AfDの移民政策を評価する」と回答しています。ドイツでは近年、不法移民が起こす犯罪が相次ぎ、治安に対する懸念や不満が異様に高まっていました。
 それにしても様変わりです。従来AfDはナチスの再来と言われ、一部のAfDの関係者などはドイツの法律に違反しているとみなされ、ドイツの司法当局の調査対象になっていました。ところが今回の選挙ではイーロン・マスク氏は「AfDはドイツの希望だ」と大々的に支持して応援キャンペーンを行いました。移民排斥を訴え続けてきたAfDは「ドイツの文化と価値観を守る」としてトランプ政権に倣って「ドイツを再び偉大に」とドイツ第一主義を唱えてきたわけです。

 マスク氏は1月のワシントンの集会でまるでナチス時代を彷彿させるような敬礼を行って話題となりました。マスク氏は以前、ナチス擁護論を拡散したこともあり、今回のマスク氏の異常なまでのAfD支援は欧州全体で反感を買ったようです。そのためテスラの欧州での売り上げは激減したのですが、今やトランプ氏に最も近いとされ、米国政府で権力を行使しているマスク氏はテスラの欧州での売り上げ減など全く気にかけていないようです。
 トランプ支持者もそうですが、人びとは厳しい状態になってくると独裁的な指導者を求める傾向が高まってきます。ドイツでかつてのヒトラーが出現したのも、第一次大戦の敗戦と賠償金の支払いからきた経済的な破綻、そこからの疲弊によって人びとが強い独裁的な指導者を求めた経緯があります。トランプ氏も米国内の様々な不満の受け皿として「米国第一主義」を唱えたことで支持を広げていきました。AfDの選挙での圧倒的な勝利をみると、その地区はほとんど旧東欧地区です。やはりドイツでも比較的裕福な旧西ドイツ地区と、引き続き取り残されている旧東ドイツ地区に分かれています。旧東ドイツ地区は人びとの多大な不満を背景にしてAfDを勝利させているわけですが、これは米国でのラストベルト、いわゆるさびれた工業地帯の不満と一緒の傾向です。どうしても経済的な不満はじめ様々な不満が溜まってくると、人びとは他人のことや民主主義などという理念など構っていられないわけです。これら米国のラストベルトの人たちもドイツの旧東ドイツ地区の人たちも「ウクライナ問題などどうでもいい、自分たちの生活に目を向けてくれ」という気持ちでしょう。これが米国第一主義と同じくドイツ第一主義に繋がっていくわけであり、トランプ氏の当選、そしてドイツではAfDの勝利の原動力です。かような自国第一主義の考えはグローバリズムや民主主義の否定で、今や世界の潮流です。

 今回ドイツの選挙ではかろうじてAfDの政権奪取までは至りませんでしたが、勝利したCDUのメルツ氏は「AfDが得票数を480万票から1030万票に倍増させたという事実は、民主主義を支持する各中核政党が協力して解決策を見つけ出さなければならないことを示す、まさに最後の警告サインだ」と危機感を示していました。ドイツの経済は3年連続でマイナス成長に陥ると予想されています。与党だったSPDが大敗したのも移民問題もさることながら、経済的な苦境が大きかったもの事実です。ドイツは今世紀に入ってからロシアからの安いエネルギーに依存して中国の大発展の流れの中で大きな利益を得てきました。ドイツ経済は実は深くロシアと中国に依存してきたわけです。それがロシアによるウクライナ侵攻で大きく変わりました。また中国はEVなどでドイツのみならず日本なども圧倒する安さと性能を確立して世界市場に打って出ようとしています。ドイツにとって中国はもはやおいしい市場ではなく、厳しいライバルとなってしまったのです。
 ドイツに残された時間は長くないでしょう。メルツ氏の言うように今後新しい政府がこの難局の解決策を見出せなければ次の選挙では本当にAfDが政権を握ってしまう流れとなってしまうでしょう。まさに歴史は繰り返すではないですが、ドイツに再び独裁的な民族主義の政権が誕生することがないよう祈るばかりです。

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Profile:朝倉 慶(あさくら けい)

K朝倉慶経済アナリスト。 株式会社アセットマネジメントあさくら 代表取締役。 舩井幸雄が「経済予測の“超プロ”」と紹介し、その鋭い見解に注目が集まっている。早い時期から、今後の世界経済に危機感を抱き、その見解を舩井幸雄にレポートで送り続けてきた。 実際、2007年のサブプライムローン問題を皮切りに、その経済予測は当たり続けている。 著書『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)がアマゾンランキング第4位を記録し、2009年5月には新刊『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)および『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)を発売。2009年11月に舩井幸雄との初の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)、2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』(ダイヤモンド社)を、2011年7月に『2012年、日本経済は大崩壊する!』(幻冬舎)を発売。2011年12月に『もうこれは世界大恐慌』(徳間書店)を、2012年6月に『2013年、株式投資に答えがある』(ビジネス社)を、2012年10月に朝倉慶さん監修、ピーター・シフ著の『アメリカが暴発する! 大恐慌か超インフレだ』(ビジネス社)を発売。2013年2月に『株バブル勃発、円は大暴落』(幻冬舎)を、2013年9月に『2014年 インフレに向かう世界 だから株にマネーが殺到する!』(徳間書店)を 、2014年7月に『株は再び急騰、国債は暴落へ』(幻冬舎)を、2014年11月に舩井勝仁との共著『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(ビジネス社)を発売、2015年5月に『株、株、株!もう買うしかない』、2016年3月に『世界経済のトレンドが変わった!』(幻冬舎刊)を発売、最新刊に『暴走する日銀相場』(2016年10月 徳間書店刊)がある。

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