トップが語る、「いま、伝えたいこと」
本当に金融市場が目まぐるしく変化しています。主要な要因はやっぱりトランプ大統領だと思います。イスラエル・イランの12日間戦争の電撃的な停戦が大きなインパクトを呼び、株価が急騰と言ってもいい勢いで上がっています。いわば本音丸出しでウソのない(後から考えるとわかりやすいブラフ(はったり)という小さなウソは連発しています)姿勢がいい結果を生み出していて、外交や中央銀行等の官僚の世界で通用しているインナーだけの用語などを駆使することで既得権益を守ってきていた人たちにとっては難しい時代になってきたようです。
ただ、よりしたたかな金融市場関係者はトランプ大統領の扱い方をある程度見極められてきて、トランプ大統領も彼らと手を打つことのうまみは1次政権の時に熟知しているのでお互いの妥協がかなったというのがマクロな見方なのかもしれません。先週末に日本の株式市場にとっては象徴的な日経平均が4万円の大台を5カ月ぶりに回復したニュースが典型的ですが、中短期的に見ればこれから株価は右肩上がりで上昇していくのだと思います。あまり具体的なことを書かないのが当欄のポリシーなのですが、買うのなら一単元当たりの金額が低くすむアメリカ株の方が優れているのかもしれません。
日本株も上がってきますし、株式投信も上がってくるのでそちらを選んでもいいのですが、ここから半年ぐらいは多分アメリカ株の方が上昇率は高くなると考えられます。投信で手数料を取られることや株式投資の体験を実際にやってみるという面では、よりダイナミックな動きをすると考えられるアメリカ株を買ってみるのもありなのかもしれません。だた、大事なのは、あくまで余資の運用でやるべきもので、なくなってもそれほど大変にならないお金で投資するということです。リスクは小さくしたいというのなら、一番安全と考えられる全世界株式投信(オールカントリー:オルカン)を毎月コツコツ買い増していくのがいいと思います。
少し前には、リスクが高くなりそうなのでオルカンすら危ないと書いた覚えがありますが、そういう意味では本当に変化が激しくなっています。今回の楽観的な意見がいつまで持つかはわかりませんが、私の意見を含む専門家の方の意見はあくまで参考にしていただいて、自分でナラティブ(共創構造をもった物語、仮説:正しい必要はありませんが他人の意見を受け入れやすいもの)を作っていただいて、それで試行錯誤をするうちに投資に対する基本的なスタンスが見つかっていくと思います。マーケットでは買わないリスクと書かれるようになりましたので、日経平均では年末に向けて5万円(NYダウなら6万ドル?)を目指すのかな、といまの時点では感じています。
投資は自己責任ということと、インフレが続くとすると現預金の実質的な価値は目減りしていきますので、やっぱりある程度資産をお持ちの方はどうしても投資の基本的な知識と挑戦は必要だと思いますので、ご自分にあったやり方を考えていただきたいと思います。
今週は作家でコンサルタントでもいらっしゃる佐藤智恵先生の『なぜハーバードは虎屋に学ぶのか ハーバード白熱教室の中の日本』(中公新書ラクレ)をご紹介したいと思います。
日本では、日本は没落してしまった国で明るい未来はないという大きな声が聞こえてくる頻度が高くなっているように思います。確かに、デフレで失われた30年が続いたことで経済力という面では国力がかなり落ちてしまった事は事実だと思います。私のナラティブではインフレになってきたのでその意味では経済力は回復してくるのだと思っていますが、案外に底力は強いのではないかなと思います。
データを取って調べたわけではありませんが、多分260年続いた江戸時代は西洋に比べて圧倒的なデフレで停滞的な社会だったのではないかと思います。豪華絢爛な江戸文化が花咲いた元禄や文化文政時代あったにせよ、農を中心とする米本位制に基づく経済で何よりも権力者である武士階級は金銭に関することを考えるのは武士道にもとるということで重要視していなかったわけですから、いまの基準で考えると経済的には停滞していたのだと思います。トランプ大統領の考えている通り短期的に考えれば戦争は儲かりませんが、長期的には暮らしを大きく変革していくイノベーション技術の大半は軍事技術から生まれてきたものであることは間違いありません。
ただ、佐藤先生は平和で民度の高い江戸時代があったからこそ明治維新後に急成長して大国に成り上がれたということをハーバード・ビジネススクールでは考えているということを紹介しています。そして、最近まで続いた日本の失われた30年も同様の効果をこれから発揮するのではないかということで、ビジネススクールの学生の一番人気の視察先が日本であるということと、彼らが考える日本の優れているところを丁寧に紹介していて、誇らしくなれますし元気になれる本のような気がします。
内容に関しては、読みやすく嬉しい内容なので楽しく読めますから詳しい解説は省略させていただきますが、最後の章でハーバード・ビジネススクールでは広島・長崎への原爆投下に対しての授業をディベート(討論)の形で「トルーマン(原爆投下を決めた大統領)と原爆」と題してずっと続けていることが紹介されています。通常のアメリカ人はどちらかというと犠牲者の数を最小限にするために原爆の投下をしたのだという教え方をされるようですが、国を担っていくエリートを要請するわけですから実際に日本へのスタディツアーでも必ず広島を訪れることになっていて、80年前の判断の是非をいまでも真剣に考えています。
過去を水に流せるのは日本人の良さでもありますが、失敗学という学問の分野もありますので、反省というか何が間違っていてどうすればより良い判断ができたかを問い続ける姿勢は大きな意味があることだし、そういう点はアメリカに学ぶべきことはまだまだあることを再認識できました。80年目の原爆の夏が間もなくやってきます、私たち日本人もしっかり振り返ってみなければいけないと感じています。
=以上=

2025.06.23:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】光も陰も愛 (※舩井勝仁執筆)
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2025.06.09:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】日本発のコンテンツ (※舩井勝仁執筆)
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舩井 勝仁 (ふない かつひと)
![]() 1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。 2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了) 著書に『生き方の原理を変えよう』 |
佐野 浩一(さの こういち)![]() 公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事 ライフカラーカウンセラー認定協会 代表 1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。 著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』 |
