“超プロ”K氏の金融講座

このページは、舩井幸雄が当サイトの『舩井幸雄のいま知らせたいこと』ページや自著で、立て続けに紹介していた経済アナリスト・K氏こと
朝倉 慶氏によるコラムページです。朝倉氏の著書はベストセラーにもなっています。

2024.07
最低賃金 引上げ急ピッチ

 日本の最低賃金が改定されます。最低賃金を決める国の機関、中央最低賃金審議会(厚生労働省の諮問機関)は今年の最低賃金を昨年に比べて50円引き上げて、全国の最低賃金を1054円にするように通達しました。今後、この通達に基づいて各都道府県で最終的な最低賃金を決めることとなります。
 これについて様々な議論がありました。
 世界水準からみて日本の最低賃金は低すぎるという意見や、収益も上がっていない中小企業にとってこの水準はキツイ、など労働側と経営側との立場の違いから議論は白熱したようです。最終的に今年の最低賃金が決まったので、今後日本のどんな地域であっても、賃金を決める場合、この最低賃金の水準は上回る必要があります。今後の展開を考えてみます。

●日本の最低賃金に関する現状
 最低賃金は4年連続で上昇中です。昨年度は過去最高となる43円の引き上げ、そして今年度は昨年度の過去最高の水準を更新して50円の引き上げです。
 これだけみれば日本政府も必死になって日本全体の賃金水準を引き上げようと努力をし続けているように思えるかもしれません。しかし現状は、あまりに遅く、あまりに世界の流れに置いていかれている日本の実体を映していると言えるでしょう。
 賃金はもらう方の労働者側も支払う方の経営者側も非常に重要な問題です。
 儲かっていないのに法外な賃金を支払い続けていたら会社は倒産してしまいます。一方で働く労働者にとって、あまりに安い賃金では生活そのものが成り立たないわけです。労働側の「もっと賃金を上げてくれ」と言う声は昨今の物価上昇を考えれば当然のことでしょう。今回も議論は紛糾しました。
 連合は「物価高の中、最低賃金引き上げの期待感はかつてなく高い。歴史的な賃上げを、社会全体に広げることが必要だ」と述べています。一方で経営が苦しい中小企業からみると「支払い能力を超えた過度な賃金の引き上げは倒産や廃業を招き、地域の雇用が失われかねない」と危機感をあらわにしてきました。
 一見すると労働側、中小企業の経営側、お互いに言い分があり、難しい問題のように思えます。
 一方で世界に目を向けてみましょう。スイスの最低賃金は4100円です。これはスイスで働いた場合、最低でも1時間4100円の賃金がもらえるということです。日本で決まった過去最高の引き上げを受けた最低賃金は1054円なので、スイスの4分の1という、体たらく(ていたらく)です。米国でもマクドナルドなどで働くファーストフード店の従業員の給与は1時間3200円です。これも日本より3倍も高いのです。欧州などでも物価高に対応するために最低賃金の引き上げペースは上がる一方で、この5年間の最低賃金の伸び率をみてみると、日本は11%ですが、英国は27%、ドイツは33%に達しているのです。如何に日本の最低賃金が低すぎるか、ひいては日本全体の賃金体系が世界に比べてあまりに低すぎるかがわかるというものです。そんな状態で日本は5%の最低賃金引き上げに議論しているのですから、これはもう他の先進国からみたら別世界の貧困の国の話のようなものです。

 その日本が6月に発表した「骨太の方針」で「2030年半ばまでに最低賃金1500円を目標として、この目標をより早く達成するように取り組む」というのです。
 これは貧困国の話ではないでしょうか? 日本は本当に先進国なのでしょうか? 今から10年経って1500円の最低賃金などでは東南アジアの国々にも置いていかれてしまう貧困国に陥ってしまうでしょう。
 日本企業が世界に展開していて輸出で大きく儲けていることを忘れてはいけません。日本企業は世界で稼いでいるわけです。日本の賃金水準は否応なく世界水準に追いついていくしかないのです。今後、日本では驚くような賃上げラッシュが各企業で始まるしかなく、そのように動かなければ、日本企業は沈没してしまうのです。これは世界を見渡せばはっきりわかると思います。世界で活躍している企業がどうして世界水準の給与を支払うことなく、働く人を確保できるというのでしょうか? 日本企業だけは給与が著しく安くても奉仕の精神で働き続けるということはあり得ないのです。
 実は利益の中から労働者に給与を支払う労働分配率でみると、日本企業は一貫して低下傾向が続いているのです。日本の大企業の労働分配率は38%と過去最低の水準です。大企業は労働者にいくらでも給与を支払えるだけの余力があり、現在、大企業では率先して給与引き上げに動いてきています。
 そんなことは国際展開している大企業だけであり、中小企業ではとても無理と思うかもしれません。しかしながら統計をみると、日本の中小企業でも労働分配率は歴史的な低水準にあるのです。確かに苦しい中小企業が多々存在しているのは事実です。しかしながら全体としてみれば日本の中小企業も収益が拡大傾向であり、十分、大幅な賃金アップの給与を支払えるだけの余力を有しているのです。これは統計上の事実です。

●今後の日本についての所感
 一方で日本では利益で金利すら支払えない、いわゆるゾンビ企業と言われる企業が多々、存在しています。
 ゾンビ企業は日本全体で25.1万社あると言われていて全企業の6分の1がゾンビ企業と言われています。これらゾンビ企業はここにきての物価高や人手不足、そしてゼロゼロ融資の返済開始などの厳しい条件下の中で苦境に陥りつつあります。これは大変厳しい状況ではあるのですが、これら収益の上げられない企業を基準にして日本全体の賃上げの流れを抑制することは日本経済全体にとっていいこととは思えないのです。
 最低賃金を引き上げれば倒産が続出すると言われますが、実は1990年から2023年まで最低賃金は1.9倍になりました、その間、倒産が続出して雇用が減少するどころか、日本の雇用者は減らずに1000万人超も雇用は増え続けたのです。
 日本はそもそも人口が減少しつつあり、恒常的に人手不足の状況にあるのです。どこでも人が欲しくて仕方ないのですが、人が確保できません。これは圧倒的に人が各企業に固定化されてしまっているからです。
 厳しい言い方かもしれませんが、日本が全体として発展していくためには、人を効率的に、言い換えると、収益力のある企業に雇用してもらわなくてはならないと思います。それには雇用の流動化が必要です。誰でも自由に会社を変えることができて、すぐに次の職場が見つかるという米国のような状況になっていかなくてはなりません。米国では移民も含めて人口が増え続けているのですから、問題がないのですが、日本では特に働くことのできる生産年齢人口が減る一方なのです。これら貴重な日本の人材という資源を無駄に使ってはならないのです。また日本経済全体を考えた場合、そのような無駄を行っている余裕などないのです。
 最低賃金の引き上げは日本に大きな変化をもたらしていくと思います。そしてこの程度の最低賃金の引き上げではとても追いつきません。日本はもっとドラスティックに最低賃金の引き上げを目指すべきであり、時代はインフレ到来で、そのようにあらゆるものが人びとの想定を超えて上がってくる流れに突入しつつあるように思います。最低賃金の引き上げは一つのトピックに過ぎません。今後、日本では賃金も物価、株価も人びとの想定をはるかに超えて上がり続けるインフレ時代に向かっていくのです。

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★朝倉慶 公式HP: http://asakurakei.com/
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Profile:朝倉 慶(あさくら けい)

K朝倉慶経済アナリスト。 株式会社アセットマネジメントあさくら 代表取締役。 舩井幸雄が「経済予測の“超プロ”」と紹介し、その鋭い見解に注目が集まっている。早い時期から、今後の世界経済に危機感を抱き、その見解を舩井幸雄にレポートで送り続けてきた。 実際、2007年のサブプライムローン問題を皮切りに、その経済予測は当たり続けている。 著書『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)がアマゾンランキング第4位を記録し、2009年5月には新刊『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)および『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)を発売。2009年11月に舩井幸雄との初の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)、2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』(ダイヤモンド社)を、2011年7月に『2012年、日本経済は大崩壊する!』(幻冬舎)を発売。2011年12月に『もうこれは世界大恐慌』(徳間書店)を、2012年6月に『2013年、株式投資に答えがある』(ビジネス社)を、2012年10月に朝倉慶さん監修、ピーター・シフ著の『アメリカが暴発する! 大恐慌か超インフレだ』(ビジネス社)を発売。2013年2月に『株バブル勃発、円は大暴落』(幻冬舎)を、2013年9月に『2014年 インフレに向かう世界 だから株にマネーが殺到する!』(徳間書店)を 、2014年7月に『株は再び急騰、国債は暴落へ』(幻冬舎)を、2014年11月に舩井勝仁との共著『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(ビジネス社)を発売、2015年5月に『株、株、株!もう買うしかない』、2016年3月に『世界経済のトレンドが変わった!』(幻冬舎刊)を発売、最新刊に『暴走する日銀相場』(2016年10月 徳間書店刊)がある。

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