トップが語る、「いま、伝えたいこと」

　木村秋則さんという「農業の神さまのような人がいる」と教えてくれたのは、多分「百姓の神さま」で有名な高橋丈夫さんだったと思います。

　この木村さんのことを、実によく分るように書いた本が、学研パブリッシングから『木村さんのリンゴ 奇跡のひみつ』（２０１０年３月刊　小原田泰久著）で出版されました。
　先週は、この本を何回か読みました。それくらい感動したのです。
　木村さんは１９４９年生れですから、私よりはるかに若い。しかしやってこられたことから教えられることが、こんなに多い本に出合ったのは久しぶりです。
　ふつうのハードカバーの２００ページ弱の本ですから、「あっ」というまに読めますが、各ページごとに「びっくりすること」がつまっています。
　著者は「まえがき」の題名で、「不可能を可能に変える男」と書いていますが、木村さんは無農薬、無肥料で、絶対に不可能と言われていたリンゴ栽培に成功した人として、その苦労話しは有名です。
　しかし、その考え方が、ふつうの人とかなりちがいます。というより、本書を読むと木村さんが正常で、ふつうの人がまちがっていることが分ります。
　定価は税抜き１，６００円ですが、読む人にとってはとんでもない価値のある本だと思います。できれば買って、真剣に読んでみてください。
　つぎに同書の「あとがき」だけを紹介しておきます。

あとがき――明るい未来を残すために

　「木村さんがこうした苦難を乗り越えてきた原動力ってなんでしょうね」
　そんな質問をしたことがある。
　木村さんは、ちょっと口ごもりながら答えてくれた。
　「言葉を飾っているように思われるかもしれないけどよお、やっぱり、本心は、次の世代に明るい未来を残したいからだな」
　そのためには、惜しむことなくすべてをさらけ出していきたいというのだ。
　「だから、ＵＦＯや宇宙人の話も、話すことを反対したり、誤解する人もいるけれども、私はどう思われたっていいのな」
　賢い人は話さないだろう。それも小さい賢い人である。木村さんは「バカだから」と笑うけど、それは大きな賢さを超えた巨大なバカだと、私は思う。
　すでに何冊も木村さんに関する本は出ている。にもかかわらず、何匹目かのドジョウを狙うかのように、こうやって本を出すのは、気の引ける部分もあった。しかし、書き進めていくうちに感じたのは、木村さんという人は、数冊の本で語りつくせる人ではないということだ。それだけのドラマをもって生きてきた人だ。これまでの本には書かれてなかった新しいエピソードもたくさん紹介した。しかし、まだまだ木村さんの周辺には、まさに目からうろこが落ちるような話が山ほどある。
　木村さんには、お忙しい中、たくさんの時間をとってもらって話を聞かせてもらった。木村さんの身に起こった奇跡の話を聞いたのは、弘前市内の居酒屋だった。その後、何度も何度も電話をして、木村さんの仕事を中断させたりもした。本当に心よりお礼をいいたいと思う。
　これからも、微力ながら、木村さんのいう「次の世代に明るい未来を残す」という活動のお手伝いができればと思う。
　最後まで読んでくださった読者の皆様にも、心より感謝です。ありがとうございました。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　小原田泰久（転載ここまで）

　私はこの本を読んで、�@人にだけでなく、動植物や物に対しても真剣に相手の立場に立って考えよう。　�A「自然の摂理」をもっと勉強し「できるだけ、それに従おう」とあらためて思いなおしました。
　と同時に、同書を出版人の立場で世に送ってくれた学研パブリッシングの三上丈晴編集長に心からお礼を言います。
　三上さんと徳間書店の石井健資編集長のお二人に、最近は感心していますが、石井さんが最近出した伊達巌著『聖書の暗号は知っていた』と本書ほど、私が最近いろいろ考えさせられ、教えられた本は他に余りありません。
　このような本が出る時代になった……うれしいことです。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＝以上＝