トップが語る、「いま、伝えたいこと」
時々学友から電話がかかってきます。大体私と同年輩です。
「船井よ、君は本を書いたり、講演をしているから考えたことは、ないだろうが、A君もB君も最近少し変なんだ。いわゆる認知症という病気になったらしいのだ」という話しが、去年あたりから、かなりあります。
ふだん認知症なんてことは考えたことがなかったのですが、友人のことを聞くと、一度調べねばと思っていたところへ、実に分りやすい名論文(?)が届きました。
それは学士会会報の最新号(今月1日発行 第881号)です。
私は学士会会員ですが、学士会から送られてくる学士会会報は毎号本当によい記事で埋められており、隅から隅まで読んでいます。
その881号に「認知症の理解と援助」とうい杉山孝博医師の文章がありました。95〜108ページまでを、上記の題名のもとで詳しく述べられています。
杉山医師は、東大医学部を昭和48年に卒業した医師で、現在は川崎幸クリニック院長です。この記事(論文)の冒頭に杉山さんは要約としてつぎのように述べています。
要 約
現在、日本では急速に高齢化が進み、認知症問題は重要な社会問題となっている。認知症を抱える家族にとって介護における最大の問題は、症状の理解の難しさである。介護者が認知症の不可解な症状を理解し、誰でも上手な介護が出来るようになるために、認知症共通の特徴を「九大法則・一原則」にまとめた。認知症やその症状に対する正しい理解がより良い介護につながり、認知症の方や介護者の幸せにも直結する(転載ここまで)。
彼は29年前に「社団法人 認知症の人と家族の会」を立ちあげた人で、認知症については、もっとも詳しい人の一人といってよいようです。
詳しくは学士会会報の881号を見てもらうか、前記クリニックへ聞いてもらうとよいのですが、認知症を理解するためには、九大法則と一原則があると彼は経験上言っています。
そして、それを次のようにまとめています。
「認知症をよく理解するための九大法則・一原則」
第一法則 記憶障害に関する法則
第二法則 症状の出現強度に関する法則
第三法則 自己有利の法則
第四法則 まだら症状の法則
第五法則 感情残像の法則
aほめる、感謝する b同情(相づちを打つ) c共感(「良かったね」を付け加える) d誤る、事実でなくても認める、嘘をつく(悪役を演じる俳優の気持ちで)
第六法則 こだわりの法則
@こだわりの原因をみつけて対応する
Aそのままにしておく
B第三者に登場してもらう
C場面転換をする
D地域の協力理解を得る
E一手だけ先手を打つ
F本人の過去を知る
G長期間は続かないと割り切る
第七法則 作用・反作用の法則
第八法則 認知症症状の了解可能性に関する法則
第九法則 衰弱の進行に関する法則
介護に関する原則
認知症の人の形成している世界を理解し、大切にする。その世界と現実とのギャップを感じさせないようにする(転載ここまで)。
これ以上の転載は、ここにはやめておきますが、この杉山先生の文章を読むと認知症の内容さえ上手に理解しておくと、充分に対処法があり、認知症をある程度防ぐこともできそうです。杉山先生の著書には『杉山孝博Dr.の「認知症の理解と援助」』(クリエイツかもがわ)、『家族が認知症になったら読む本』(二見書房)、杉山孝博編『介護・ケアに役立つ実例集 認知症・アルツハイマー病』(主婦の友社)などがあるようです。また、全国20地方新聞に「知ってますか!認知症」というタイトルのコラムも連載されているようです。
20年前の日本の認知症者数は約70万人。2006年は約170万人。
これから10年後にはさらに100万人以上増えると推定できるということです。また最近は20才台で認知症になる人もいるらしいです。
この数値を知ってびっくりしましたが、杉山先生の文章のおかげで安心もしました。
なお、「高齢者の一人ぐらしは、なるべくやめるべし」というのが私の知った大事なことでもありました。よろしく。
=以上=
※杉山先生は、川崎幸クリニックHPの「院長ご挨拶」というコーナーでも認知症についてのコラムを書かれています。どうぞご参照ください。
→ http://www.sekishinkai.or.jp/saiwaicl/outline/message.html
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