トップが語る、「いま、伝えたいこと」
ご縁あって、この週末、静岡県富士宮市にある「日蓮宗大日蓮華山興徳寺」の松永泰然住職を訪ねてきました。ちょうど、「花まつり」の日。境内からみえる富士山の全貌と美しく咲き誇る桜がいまでも目に焼き付いて離れません。
松永泰然住職が、ご法話でお話されたこと、これまた心に染み入りました。「陰徳を積むこと」「布施は自分の姿勢や心でできること」、子どもでも理解できるように、優しく、易しくお話いただきました。
「徳というのはね、人の見ていないところで積むんだよ。天へ貯金するつもりでね。」
「布施というのはお金だけじゃない。誰かのためになることを率先して行うこと。これも 布施の一つなんだからね。」
たいへん有り難いお話でした。
舩井幸雄もまた、生涯「世のため、人のため」に経営し、行動することを説き続けました。会社を興す場合、なにか事業を始める場合、まずそれも「世のため、人のため」であるかを考えなさいと……。
20世紀は、それが世のため、人のためであろうと、エゴからくるものであろうと、それを実行する人の思いが強ければ実現できたが、新しい時代はそうでなくなるとメッセージを残しています。「世のため、人のため」でないことは、実現がむずかしくなる時代になるということです。
舩井幸雄は、無宗教のスタンスを通しましたが、その根幹や軸となる思想には、共通点を見出せるものがいくつもあって、極めて興味深く感じるのです。
「布施」と言えば、「財施」「法施」「無畏施」の3種類があることはよく知られています。この3種の中の「財施(ざいせ)」というのは、貪(むさぼ)る心とか、欲しいと思う心、恩にきせる心を離れて、お金や衣食などの物資を必要とする人に与えることをいいます。
「法施(ほうせ)」とは、物質財物をあたえるのではなく、教えを説いてきかせるといった、相手の心に安らぎを与えること、精神面でつくすことを言います。
「無畏施(むいせ)」とは、恐怖や不安、脅(おび)え、慄(おのの)きなどを取り除いて、安心させることをいいます。
舩井幸雄は、講演にしても書籍においても、この「法施」と「無畏施」を徹底していたように感じます。未来への息吹、未来へのヒントを数多く伝えることで、一人でも多くの人が明るい未来の到来を確信できるように心がけていたと感じます。
さて、世の中には、施すべき財も、教える智慧もないと感じ、ましてや人様の恐れおののきなどを取り除くことなど縁遠い……と感じている方も多いと思います。「世のため、人のため」の心はあれど、なかなかその実践は難しいものです。
「雑法藏経」というお経の中で、釈尊は「財力や智慧が無くても七施として、七つの施しが出来る」ことに触れています。「無財」というのは、費用も資本もそして能力も使わないで実行できる布施のことです。
その七つの布施とは、
1、眼施(慈眼施)
慈(いつく)しみの眼(まなこ)、優しい目つきですべてに接すること。
2、和顔施(和顔悦色施)(わがんえつしきせ)
いつも和やかに、おだやかな顔つきをもって人に対すること。
3、愛語施(言辞施)
ものやさしい言葉を使うことである。しかし叱るときは厳しく、愛情こもった厳しさが必要である。思いやりのこもった態度と言葉を使うことを言うのである。
4、身施(捨身施)
自分の体で奉仕すること。模範的な行動を、身をもって実践することである。人のいやがる仕事でもよろこんで、気持ちよく実行することである。
5、心施(心慮施)(しんりょせ)
自分以外のものの為に心を配り、心底から、共に喜んであげられる、ともに悲しむことが出来る、他人が受けた心のキズを、自分のキズのいたみとして感じとれるようになること。
6、壮座施(そうざせ)
わかり易く云えば、座席を譲(ゆず)ること。疲れていても、電車の中ではよろこんで席を譲ってあげることを言う。さらには、自分のライバルの為にさえも、自分の地位をゆずっても悔いないでいられること等。
7、房舎施(ぼうしゃせ)
雨や風をしのぐ所を与えること。たとえば、突然の雨にあった時、自分がズブ濡れになりながらも、相手に雨のかからないようにしてやること、思いやりの心を持ってすべての行動をすること。
以上が「無財の七施」ですが、舩井幸雄が伝え残したキーワードで振り返ると……。
1〜2は「温顔招福」につながり、3〜5は「自他同然」「至誠・慈愛」、そして、6〜7は「ギブ&ギブ」につながっていくことに気づきます。
さて、松永泰然住職が10年前に植えられた山桜が、今年花を咲かせたそうです。そして、近くの小学校を卒業される生徒さんたちに桜の苗木をプレゼントして、花でいっぱいの地域にしたいと展望されています。30年後、50年後、100年後……、この興徳寺の位置する柚野の里がどんな様子になっているか……。自分自身は見ることができないかもしれない……。それでも、次の世代に残していくことができたら……と未来を優しく、情熱的に語られるお姿は、本当に素敵で、心より尊敬いたします。
「布施」という仏教語は少々難しく感じるかもしれません。でも、シンプルに「喜んでもらうこと」と言い換えたら分かりやすいのだとも思いますし、その方法は、この「無財の七施」に限ったことではないかもしれません。
いずれにせよ、このコロナ禍で、世の中が少々窮屈で、ギクシャクしてきているようにも感じます。そんなとき、ほんの少しばかり周囲を見渡し、ほんのわずかでも「世のため、人のため」を実践できたらと、松永住職のお話を伺って思いました。
舩井幸雄記念館の舩井の部屋の窓から見える桜の木。「主人」が亡くなったときには、すでに花を咲かせていませんでした。「もう死んだ木だ……」と、植木職人もそう言いました。それが、約2年を経て、突如として花を咲かせたのです。
舩井幸雄も松永住職も、粋な「花咲爺」だと思います。そして、多くの人の心にも明るい花を咲かせています。
「世のため、人のため」は、人の心に花を咲かせることですね!
感謝
2021.04.19:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】本当に流してしまっていいですか? (※佐野浩一執筆)
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舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長 1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。 2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了) 著書に『生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『未来から考える新しい生き方』(2011年 海竜社)、『舩井幸雄が一番伝えたかった事』(2013年きれい・ねっと)、『チェンジ・マネー』(はせくらみゆき共著 2014年 きれい・ねっと)、『いのちの革命』(柴田久美子共著 2014年 きれい・ねっと)、『SAKIGAKE 新時代の扉を開く』(佐野浩一共著 2014年 きれい・ねっと)、『聖なる約束』(赤塚高仁共著 2014年 きれい・ねっと)、『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(朝倉慶共著 2014年11月 ビジネス社)、『智徳主義【まろUP!】で《日本経済の底上げ》は可能』(竹田和平、小川雅弘共著 2015年 ヒカルランド)、『日月神示的な生き方 大調和の「ミロクの世」を創る』(中矢伸一共著 2016年 きれい・ねっと)、『聖なる約束3 黙示を観る旅』(赤塚高仁共著 2016年 きれい・ねっと)、『お金は5次元の生き物です!』(はせくらみゆき共著 2016年 ヒカルランド)がある。 |
佐野 浩一(さの こういち) 株式会社本物研究所 代表取締役社長 株式会社51コラボレーションズ 代表取締役会長 公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事 ライフカラーカウンセラー認定協会 代表 1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。 著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる 自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた船井幸雄のすべて』(成甲書房)、船井幸雄との共著『本物の法則』(ビジネス社)、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)がある。 |