トップが語る、「いま、伝えたいこと」
「トリチウム」は水素の放射性同位体であり、地球上のどこにでも存在します。非常に弱いベータ線を放出する半減期が約12年の放射性物質です。トリチウムは、宇宙からの放射線が空気中にある窒素や酸素とぶつかり、日々新たに 生成され、地球全体で約 1.3×1018Bq存在すると報告されています。
一方、トリチウムは、原子力発電所の原子炉の中でも生成されます。トリチウムのベータ線は、空気中を約5mm、水中を約 0.005mmしか進むことができません。トリチウムから放出されるベータ線を体の外から受けた場合、皮膚の表面で止まってしまうため、人体への影響は非常に小さくなります。また、空気中のトリチウムの呼吸による取込み、または水や食品等に含まれるトリチウムを口から摂取した場合、通常の水と同様に新陳代謝により、体外に排出されるため、人の体に蓄積されることはありません。PWRである泊発電所の場合、1年間あたりのトリチウム(液体)放出量に基づいて、 発電所周辺に住んでいる方々の被ばく線量を評価すると、外部被ばく・内部被ばく合計で年間 0.001mSv より小さい被ばく線量となり、法令で定められた一般公衆の年間の線量限度(1mSv)よりはるかに小さい値になります。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
上記は、北海道電力が運営する泊発電所が発表しているトリチウムに関する記述の要約です。
ところが、「人体に影響がない」とするトリチウムに関して、経産省はわざわざ検討委員会をつくって、トリチウム水をどうするか、5つの案を検討してきたといいます。なんだかよくわかりませんよね……。つまり、「安全でない」という認識が前提になっているということです。
@地層注入、A海洋放出、Bコンクリート固化して地下埋設、C水蒸気にして大気放出、D水素にして大気放出……。
長期保管する案は、技術的課題、処分期間、監視期間、処分費用などの問題で議論はあったものの、浮上することはありませんでした。
他方、原子力規制委員会の委員長は、トリチウム濃度を告示濃度以下に薄めて海洋に放出せよと発言してきました。海に放出して捨ててよいか……。2018年8月末に福島県富岡町、郡山市および東京都内の3会場で、経産省は公聴会を開きました。公述人44名のうち42名が反対の意見を述べたそうです。
トリチウムは半減期が12.3年でベータ崩壊をし、ヘリウムになる放射性物質。いくら薄めるとはいえ、いったん海洋放出されれば海中生物だけでなく、陸上の植物や生物への影響がありえます。漁業にもダメージを与えます。生物濃縮も懸念されます。水なので人体に取り込まれて遺伝子を傷つける恐れがあります。生命系に対して安全とはいえません……。こういう反対意見が次々に述べられたそうです。
トリチウムに限らず、放射性物質に関しては、排液中のその放射性物質の濃度を制限する告示濃度というものが法律で定められています。しかし、この基準値も、条件が複雑すぎて、計算できない……というのが真実だと知りました。
ある濃度の放射性物質が入っている水を、生まれてから70歳まで飲み続けると仮定して、1年あたり1ミリシーベルトの実効線量限度に達するときの濃度が濃度限度とされます。ただし、放射性核種は1種類と仮定しています。他の核種が入っていたらどうなるのかは一切検討されていないのです。
こうした点から、告示濃度以下に薄めて海洋放出する……という考えは、なんと大雑把で無責任であるかと思わざるを得ません。
自然界には、宇宙線によって生ずるトリチウムが存在します。環境中には、核実験と原子力施設で人為的につくり出されたトリチウムがあります。原子力発電では、重水を使うCANDU炉からの放出が大きく、軽水炉では、加圧水型炉のほうが沸騰水型炉よりも多く発生します。再処理工場では桁違いに大量のトリチウムが発生すると知りました。
実際、カナダ、日本、ドイツ、アメリカ、イギリスなどの原子力施設近傍の住民に小児白血病、新生児死亡、遺伝障害などの増加が観察されていますが、原子力推進もしくは容認の立場からは、無視されるか、否定的な扱いを受けているのが現状です。要するに、不都合なデータだということです。
こうして評価が分かれる問題に対して、科学的に明快で統一的な結論を導くことは困難です。実験室のデータを、そのまま自然界に当てはめることが正しいか否かは、素人でも疑問を感じるのは当然です。
にもかかわらず……。
政府は13日、東京電力福島第1原子力発電所の敷地内にたまる処理水を海洋放出の形で処分すると決めました。2年後をめどにするそうです。
菅義偉首相は、「廃炉を進めるにあたり避けては通れない課題だ。処理水の安全性を確実に確保するとともに、風評払拭に向けてあらゆる対策を行う」と述べました。
ちなみに、処理水の処分に関する基本方針は、以下のとおりです。
@東京電力が2年後をめどに海洋放出
A放出時は海水で100倍以上に希釈
B漁場や海水浴場でトリチウムを監視
C主要消費地で福島産品の販路拡大支援
D東電が風評被害の実態に合った賠償
E風評被害対策などの関係閣僚会議を設置
1年間に放出するトリチウムの量が事故前の福島第1原発で設定していた目安を下回るようにするという条件があるようですが、100倍以上に希釈しても、放出するトリチウムやその他の放射性物質の総量は変わりません。「風評被害」という言葉が使われていますが、住民をごり押しで納得させるための詭弁にしか思えません。
国際原子力機関(IAEA)は海洋放出について「科学的に妥当で環境影響はない」との見解を示していますが、これまた支離滅裂です。科学的に検証の余地が余りある問題に対して、「科学的に妥当」とする理屈は、どう考えてもつじつまが合いません。
「福島第1原発の敷地内のタンクは1000基を超え、廃炉作業に支障を来す懸念がありました。事故から10年以上たって海洋放出が決まり、廃炉の本格化に向けた一歩となる……。」
こう報道されていましたが、「廃炉のためにやるんだからいいだろ!」という強硬姿勢がうかがわれます。
世界24カ国の311の環境団体は「福島第一原発の汚染水を海洋に放出してはならない」とする書簡を日本の経済産業省に届けたことを12日に明らかにしました。同書簡には、世界各国の市民およそ6万5000人が署名しています。各国の環境団体からなる「福島原発事故10年国際署名実行委員会」が代表して届けた同書簡は、「福島県をはじめとし、(日本の)多くの人たちが(汚染水の海洋放出に)大きく反発しています。海外からも、憂慮・反対の声が多くあがっています。汚染水は、124万トンを超えており、魚介類の摂取を通じた人体への悪影響が懸念されます」とし「日本政府は福島原発の放射能汚染水を海に流すな」と訴えています。
マイナスの材料を学びながら、こうして書き綴っていくのは、あまり気持ちのよいものではありません。でも、なにをどのように対処していっても、問題が残るもの……、脅威となるもの……。その一つが「原発」であることは明白で、そのことをもう一度お伝えしたかったのです。
未来の子どもたちに、できるだけ安全で安心な未来を残してあげませんか!
それが、今を生きる大人たちの「仕事」です。
そのためのアクションは、プラスの方向を向きますからね!
感謝
2021.04.19:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】本当に流してしまっていいですか? (※佐野浩一執筆)
2021.04.12:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】宇宙の営みとのズレを修正する (※舩井勝仁執筆)
2021.04.05:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】世のため、人のため (※佐野浩一執筆)
舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長 1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。 2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了) 著書に『生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『未来から考える新しい生き方』(2011年 海竜社)、『舩井幸雄が一番伝えたかった事』(2013年きれい・ねっと)、『チェンジ・マネー』(はせくらみゆき共著 2014年 きれい・ねっと)、『いのちの革命』(柴田久美子共著 2014年 きれい・ねっと)、『SAKIGAKE 新時代の扉を開く』(佐野浩一共著 2014年 きれい・ねっと)、『聖なる約束』(赤塚高仁共著 2014年 きれい・ねっと)、『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(朝倉慶共著 2014年11月 ビジネス社)、『智徳主義【まろUP!】で《日本経済の底上げ》は可能』(竹田和平、小川雅弘共著 2015年 ヒカルランド)、『日月神示的な生き方 大調和の「ミロクの世」を創る』(中矢伸一共著 2016年 きれい・ねっと)、『聖なる約束3 黙示を観る旅』(赤塚高仁共著 2016年 きれい・ねっと)、『お金は5次元の生き物です!』(はせくらみゆき共著 2016年 ヒカルランド)がある。 |
佐野 浩一(さの こういち) 株式会社本物研究所 代表取締役社長 株式会社51コラボレーションズ 代表取締役会長 公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事 ライフカラーカウンセラー認定協会 代表 1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。 著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる 自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた船井幸雄のすべて』(成甲書房)、船井幸雄との共著『本物の法則』(ビジネス社)、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)がある。 |