トップが語る、「いま、伝えたいこと」

このページでは、舩井幸雄の遺志を引き継ぐ舩井勝仁と佐野浩一が、“新舩井流”をめざし、皆様に「いま、伝えたいこと」を毎週交互に語っていきます。
毎週月曜日定期更新
2022年5月2日
勉強から学びへ (※佐野浩一執筆)

 勉強が苦手……、だから勉強しない。
 勉強が嫌い……、だから勉強しない。
 学生時代の自分自身の振り返り、そして教員時代に出会った生徒たちの、勉強に対する姿勢の傾向は、まさにこんな感じでした。
 ときに、この「苦手」と「嫌い」は、その次のアクションやアクション傾向を大きく左右しています。
 いま、官民およそ500人以上で構成する「教育立国推進協議会」のメンバーとして、「アウトプット教育」分科会の議論に加わる中で、やはり「そのためにどうするべきか」が議論のポイントとなっています。
 「勉強」とは、「勉(つと)め強いる」と書くように、本来は気が進まないことを仕方なくする意味の言葉であったそうです。実際に、自分たちもそうであったように、与えられた知識や課題を学ばされること……というイメージで捉えられていることが多いと思います。だから、どうしても受け身になって、「致し方なく……」という感覚が先行します。

 私自身も、ご多分に漏れず勉強は好きでなかったのですが、社会人になっての勉強……、いや「学び」は俄然楽しくなりました。ここで、あえて「勉強」を「学び」と表現しなおしたのも、間違いなく、「勉強」が「学び」に変わったからだと言えます。「学び」には、たしかに、自分が学びたいことを、自らの思いや意思で学ぶ感覚が備わっているからですね。
 社会が大きな転換期を迎え、またとんでもなく変化のスピードが速まってきている今、ますます「未来を見据える力」が求められるようになってきていると感じます。
 実際の仕事においても、コロナ禍が助長したことも事実ですが、ここ数年の変化はとんでもなく大きく、一気にオンライン化やデジタル化が進行してきています。過去の古い価値観や古めかしいスキルやノウハウでは、もはや太刀打ちできない時代。しかも、これからますます進むスピードが速くなると思うと、ますます「学び」の力が重要となります。
 ひと昔前までは「一生懸命勉強して良い大学に入れば、人生勝ち組」というシンプルな方程式が成立していました。しかし、これまで人間が行っていた仕事の多くをコンピューターやロボットが担うようになりつつある社会では、もはや一流大学の卒業証書一枚で成功を勝ち取ることはできなくなりました。
 新しいテクノロジーが次々に古い価値観を塗り替え、人々の暮らしや働き方を変えていく……。そんな変化の激しい時代に活躍できる人材を育てるには、学歴よりもはるかに大切ないくつかの「スキル」に目を向けることが必要です。
 次に挙げるのは、「世界経済フォーラム(World Economic Forum)」が2020年に発表した「2025年に求められるスキル予測」です。

@分析的思考と革新
A主体的学習意欲と戦略的学習
B複雑な問題解決能力
Cクリティカルシンキング
Dクリエイティビティー(創造性)
Eリーダーシップと社会的影響力
Fテクノロジーの使用・監視
Gテクノロジーの設計・プログラミング
H柔軟な判断力
I推論・問題解決

 これらは、世界最先端のグローバル企業に勤務する770万人のビジネスパーソンに対して実施した調査をベースにしているそうです。
 ここで気づくのは、テクノロジーを活用するためのスキルは当然のことで、それももちろん重要ですが、「考える力」に類するものがズラッと並んでいることに注目すべきだと思います。
 これからの教育を考えていくうえでも、極めて重要なポイントとなるのは当然ですが、やはり「主体的な学び」「主体的な思考」「主体的な行動」に重きを置いていく必要があることは言うまでもないことです。
 こう書いてみて感じたのですが、同じことは社会でも言えますね……。企業でも研修として、様々な機会を用意するわけですが、ここでも、冒頭に書いた「勉強」の感覚で捉えて取り組んでも、うまく身につかないのは当然です。しかも、これからの時代は、それではますますついていけなくなりそうなのでたいへんです。
 人から言われなくても自分で考え、決断し、行動する……。こうした姿勢やスタンスを子どものころから身に着けていく環境や教育のあり方を早期に整える必要があります。

 そんな人材に育てるには、まず「なぜだろう?」「どうしてだろう?」という意識を持ち、「それは本当なのか?」「ならば、どうすれば解決できるのだろう?」と自分や周囲に問いかける姿勢を持つことがベースとなります。反発心や反骨精神をもって、様々な事象を見つめるスタンスも必要だと感じます。
 「素直に受け止めること、受け入れること」は、「思考停止」状態を指すわけではありません。まずは、聴いて、受け止めてみないことには、正確な吟味ができません。受け止めたからこそ、「本当にそうであるか」を確認するためには「学び」が必要となります。  
 その学びを生むための問いかけが、先ほどの「なぜだろう?」「どうしてだろう?」「それが本当なのか?」「どうすれば解決できるのか?」という疑問となり、それらを解決する絶対的な必要性が生み出されるのです。
 これからますます「答えのない時代」へと大きく変化していきます。変化が激しく、何が起こるかまったく予測できない時代だからこそ、「当たり前」「普通」「常識」「みんな」に流されることなく、自分の頭で考え「自分なりの答え」を導き出す思考習慣が社会から求められていると言えます。

 いままさに、「教育立国推進協議会」でもホットな議論がなされている点ですが、教育(授業)スタイルの改革により、時代の動きを先取りしたのは、実はアメリカでした。
 1980年以降、アメリカの教育改革の柱として、「記憶」から「考える力」の習得へのダイナミックな変革が行われたのです。私が、はじめてアメリカを訪れ、多くの学校で授業見学をして回ったのが1989年でしたので、まさにその変革後だったのです。アメリカの学校から、先生が一方的に講義する授業スタイルは姿を消していきました。代わって登場したのが、生徒に考えさせ、活発に議論させる「アクティブラーニング」のスタイルだったのです。
 先生の仕事は議論の進行役であり「つっこみ役」、つまりファシリテイターということになります。生徒の発言に対して「根拠は?」「情報源は?」「なぜそう思うのか?」「偏っていないか?」「人の意見ではないか?」と次々に問いかけていきます。
 「問い」に答えていくプロセスで、生徒たちは、自分の思考の「こだわり」「偏り」や「思い込み」に気づくことができます。また一つの問題に対してさまざまな意見を聞くことで、「人はそれぞれが絶対的に異なる存在である」ことを知り、そこから「自身の大切さ」を深く認識することにつながっていきます。実は、この点が「多様性」の認識を深めます。
 ここで書き進めたことは学校教育の制度や現場のことであって、そのまま子どもたちの育て方にご活用いただいて結構なのですが、まったく同様のことが、企業においても言えるのです。……というか、企業においてこそ、重要で必要だと考えます。
 もっとも、これまで受けてきた教育を振り返ってみると、ほとんどすべての方が、知識偏重型のインプット教育、一つの正解を求める教育であったわけで、そうした私たちがここまで述べてきたようなスタイルに変えていくのは、至難の業とも言えるのです。
 だからこそ、実行する側も、ここは本気で、清水の舞台から飛び降りるくらいの覚悟で、「旧来の考え方や学び方、価値観に引っ張られていないか」を自問自答しつつ、進めていく必要があります。
 ポイントは「問い」だと思います。
「どうして?」
「なぜ?」
「どうやって?」
「それは本当か?」
 この問いを、仲間やチームのメンバーと議論し合いながら、選択すべき道を選んでいく……。この問いこそが、本来の「学び」なんだろうと考えます。
                             感謝

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舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長
1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。
2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けている。
著書に『生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『未来から考える新しい生き方』(2011年 海竜社)、『舩井幸雄が一番伝えたかった事』(2013年きれい・ねっと)、『チェンジ・マネー』(はせくらみゆき共著 2014年 きれい・ねっと)、『いのちの革命』(柴田久美子共著 2014年 きれい・ねっと)、『SAKIGAKE 新時代の扉を開く』(佐野浩一共著 2014年 きれい・ねっと)、『聖なる約束』(赤塚高仁共著 2014年 きれい・ねっと)、『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(朝倉慶共著 2014年11月 ビジネス社)、『智徳主義【まろUP!】で《日本経済の底上げ》は可能』(竹田和平、小川雅弘共著 2015年 ヒカルランド)、『日月神示的な生き方 大調和の「ミロクの世」を創る』(中矢伸一共著 2016年 きれい・ねっと)、『聖なる約束3 黙示を観る旅』(赤塚高仁共著 2016年 きれい・ねっと)、『お金は5次元の生き物です!』(はせくらみゆき共著 2016年 ヒカルランド)がある。
佐野 浩一(さの こういち)
株式会社本物研究所 代表取締役社長
株式会社51コラボレーションズ 代表取締役会長
公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事
ライフカラーカウンセラー認定協会 代表
1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。
著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる 自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた船井幸雄のすべて』(成甲書房)、船井幸雄との共著『本物の法則』(ビジネス社)、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)がある。
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