トップが語る、「いま、伝えたいこと」
昨年の年末がピークだったアメリカが牽引してきた金融市場拡大の動きは本格的な調整局面に入ったようです。ハイテク企業では、サブスク(サブスクリプション:毎月一定額を支払うことでコンテンツが見放題になるサービス)でパスタイム(娯楽)業界の覇者になったのではと言われたネットフリックス社の株価が半分に下がり、伝説のGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)4社も軒並み下げ幅を拡大しています。
アメリカがハイテクバブルであったことは間違いないようで、この調整局面はまだまだ続くのだと思います。そして、実はアメリカ株の上昇をけん引していたのはハイテク株なので、日本のバブルが崩壊し始めた1990年のような年に今年はなるのかもしれません。
おもしろいなと思ったのは、アメリカでは個人投資家が株式投信(投資信託)だけではなく、債券投信やコモディティ(商品)投信まで売りに走っているという報道です。まさに日本のバブル崩壊の過程で個人投資家が一斉に売りに回ったことを連想させる動きのように私には思えました。反省を込めて言うと、1990年代後半ぐらいから父が資本主義の崩壊は近いと言い始め、これは日本人が金融商品離れを引き起こす原因の一端になったと感じています。アメリカの個人投資家(実は若い人が結構多いといいます)も三十数年前の日本の個人投資家のような危険性を感じ取っているのかもしれません。
一方、日本の金融マーケットの主役は外国人と年輩の個人投資家だと感じます。日本の金融マーケットで売買している外国人は金融のプロであり、利益をひたすら追求する人たちです。そして、年配の個人投資家も痛い目にたくさんあってきた方が多いので、本来の価値をはるかに超えて買い進めるようなことはあまりないのではないかと思います。
その結果、昨年末までの欧米の金融マーケットの高騰についていけていなかったのですが、逆に言うと下げ幅もいまのところそれほど大きくありません。
これからどうなるかは予断を許しませんが、業績が良くて実際のバリュー(価値)に対して株価が低く、かつ配当利回りが高い優良企業などを中心に比較的堅実な動きになるのではと期待しています。
今回は来月の初旬に発売の「ザ・フナイ7月号」に私との対談でご登場いただく小説家の新堂冬樹先生について紹介させていただきます。
多くのベストセラー小説を生み出している新堂先生ですが、小説家としてだけではなく、映画監督や漫画原作、さらには経営者など、幅広い顔を持っている方で、それらの経験を生かしたリアリティのある描写は多くのファンを魅了しています。
また、小説の中にも二つの顔があると言われており、裏社会などを舞台とした暴力シーンなどが中心の強烈な『黒新堂』、一転、柔らかい人間ドラマをメインとした『白新堂』と、対照的な作風を持っています。一般的には黒の方をイメージする方が多そうですが、今回は敢えて(私の好みもあり)白をメインに紹介していきます。
白新堂は動物をテーマにした作品を数多く書かれており、代表作の一つである二百万部のベストセラー『忘れ雪』(角川文庫)は、一匹の犬をきっかけに出会った男女のラブストーリーです。ミステリーとしての側面もありますが、切ない出会い、別れ、その中心に存在する犬のクロスちゃんのエピソードには心を打たれます。他にもさまざまな動物と人間のかかわりを書いた『動物記』(角川文庫)、犬と人間の関係をテーマに書かれた『168時間の奇跡』(中央公論新社)など、特に犬との関係についてとても大切にされている印象です。
最新作である『虹の橋からきた犬』(集英社文庫)も、犬と人間の物語です。
映像制作会社の社長を務める主人公は、仕事を第一に考えるあまり、周囲の人間が離れていき、生活と共に心が荒んでいく日々を送っていました。私生活も仕事も行き詰まる、そんな最悪な状況の中、偶然の重なりで家族となった犬、パステルとの出会い、交流を通じて人間として成長していく物語です。
少しネタバレになってしまいますが、愛犬を突然襲った病魔、治療法を巡る葛藤、失ってしまった際の喪失感と、その後の立ち直っていく過程。実際に新堂先生が飼っていたブレットちゃんとのエピソードをモデルに書かれたものであり、ペットと触れ合う人間の、家族としての感情が丁寧に描かれています。昨年愛猫を亡くしペットロスを経験した私も強く共感できる部分が多々あり、思わず涙を流してしまいました。特にペットを飼っていた方には深く刺さる、『白新堂』の真骨頂と言える作品なのではないでしょうか。
実は、大手の出版社に連載を持つ新堂先生は「ザ・フナイ」に登場することを周りから強く止められたそうです。でも、異種格闘技をしなければ新しい世界は開かれないという信念の下、反対を押し切って7月上旬に発売の「ザ・フナイ8月号」からは小説の連載を始めてくださいます。こちらは黒になる予定です。黒で一世を風靡している時に白を出すことも周りの大反対を受けたそうですが、異種を受け入れることで新しい境地が開かれることを本能的に知っている新堂先生は舩井とのコラボにとても期待してくださっているようです。私も新堂先生を見習って新しい異種との出会いを追求していきたいと思っています。
=以上=
2022.05.23:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】異種を受け入れる (※舩井勝仁執筆)
2022.05.16:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】美意識を育む (※佐野浩一執筆)
2022.05.09:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】インフレと戦争 (※舩井勝仁執筆)
2022.05.02:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】勉強から学びへ (※佐野浩一執筆)
舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長 1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。 2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了) 著書に『生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『未来から考える新しい生き方』(2011年 海竜社)、『舩井幸雄が一番伝えたかった事』(2013年きれい・ねっと)、『チェンジ・マネー』(はせくらみゆき共著 2014年 きれい・ねっと)、『いのちの革命』(柴田久美子共著 2014年 きれい・ねっと)、『SAKIGAKE 新時代の扉を開く』(佐野浩一共著 2014年 きれい・ねっと)、『聖なる約束』(赤塚高仁共著 2014年 きれい・ねっと)、『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(朝倉慶共著 2014年11月 ビジネス社)、『智徳主義【まろUP!】で《日本経済の底上げ》は可能』(竹田和平、小川雅弘共著 2015年 ヒカルランド)、『日月神示的な生き方 大調和の「ミロクの世」を創る』(中矢伸一共著 2016年 きれい・ねっと)、『聖なる約束3 黙示を観る旅』(赤塚高仁共著 2016年 きれい・ねっと)、『お金は5次元の生き物です!』(はせくらみゆき共著 2016年 ヒカルランド)がある。 |
佐野 浩一(さの こういち) 株式会社本物研究所 代表取締役社長 株式会社51コラボレーションズ 代表取締役会長 公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事 ライフカラーカウンセラー認定協会 代表 1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。 著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる 自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた船井幸雄のすべて』(成甲書房)、船井幸雄との共著『本物の法則』(ビジネス社)、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)がある。 |