トップが語る、「いま、伝えたいこと」
一昨年開催された東京五輪は、結局いろんな問題が露呈して、なんとなく後味がよくない感じもしますが、大会自体は、やはり世界中を大きな感動に巻き込んだと実感しました。
とくに、パラリンピックは、また特別な感動がありました。
そもそもは、私の長男が、脳腫瘍、脳梗塞を乗り越えて、いまは車いすユーザーとして生活していますが、このことがやはり大きな理由となったことも事実です。
あたりまえのことですが、「知らない」ことは「わからない」ものです。
「わからない」から、壁がつくられていること、放置されていること、無視されていること、無関心であること、理解されていないこと、共感されていないこと……など、まだ まだ世の中は、未解決、無関心のままの課題に満ち溢れていることを痛感します。
「世界の15%」「7人に1人」「12億人」
この数字を見て、皆さんは何を思い浮かべますか?
東京パラリンピックの開会式の動画で大きく締めされた数字……ですね。
この「15%」という数字を記憶に残された方も多かったのではないかと思います。
世界の人口78億人のうち、「体や心に何らかの障がいがある人の数」です。
街なかの交差点にも近所のコンビニにも。通勤の電車の中にも、あなたのそばにも12億人のうちのひとりがきっといるのが現実です。
伝えようとしているのは「みんなで、壁を壊そう」というメッセージです。
まさに、あの記憶に残る「ベルリンの壁」……。
その壁と同じです。
その壁を壊そうという動きが、世界ではすでに始まってきています。
残念ながら、日本は、まだかなり遅れていると感じざるを得ないのが、残念でなりません。
しかしながら、近年、その日本でも「ダイバーシティ(Diversity)」という言葉をよく目にするようになりました。
その意味は、
・多様性
・相違点
・多種多様性……など。
ダイバーシティを企業経営で用いる言葉として解釈すると「個人や集団の間に存在しているさまざまな違い」といった意味になります。
たとえば、
・年齢
・性別
・国籍
・学歴
・職歴
・人種
・民族
・宗教
・性的指向
・性自認……といった人材の多様性を認めるだけでなく、積極的に労働市場で採用、活用しようという考え方も表しているのです。
「ダイバーシティ」という考え方は、もともとアメリカで生まれました。アメリカ国内におけるマイノリティや女性が、差別を受けない採用活動や公正な処遇の実現を求める運動から広がったと考えられています。
近年の日本社会では、人権、少子高齢化によって引き起こされる労働力人口減少に対応できる人材確保といった両方の視点から、ようやく「ダイバーシティ」が叫ばれるようになりました。本来的には、ここからスタートしていった事実には、正直言うと、違和感を感じてはいますが……。
現在では、ようやく
・人種
・宗教
・価値観
・性別
・障がい者
・ライフスタイル……といった観点の「ダイバーシティ」が日本企業の中でも広がりを見せつつあります。
日本語では「多様性」と訳されることが多い「ダイバーシティ」ですが、それは、組織やグループなどで多様な人材を登用し、意見を交わしたり、それぞれが持つ違った能力をいかすことで、組織としてより一層力をつけていこうとする取り組みです。
しかし、ここで、次のような課題が浮き彫りになってきます。
「うちの職場では女性が活躍しています!」
「障がいを活かした仕事の仕方を!」
「マイノリティの立場を守ろう」
といった「呼びかけ」によって、これらが「ダイバーシティ」そのものだと誤解されています。もちろん間違っていません。でも、それは、多様性の「一部」にしか過ぎないのです。
ここでいう「多様」について、高千穂大学高千穂学会の中村豊先生が、次のように分類されていて、とても勉強になりました。
「ダイバーシティ」の属性を、生まれ持ったもので変えようがない「表層的ダイバーシティ」と、ぱっと見では違いがないが、実は複雑な「深層的ダイバーシティ」の2種類が存在するという考え方です。
★表層的ダイバーシティ
・年齢(→年齢に関する偏見や差別を表したエイジズムの軽減)
・性別(→ジェンダー不平等の改善)
・国籍
・人種
・民族
・障がいの有無
・SOGI(性自認・性的指向)
★深層的ダイバーシティ
・価値観
・仕事観
・宗教
・学歴
・職務経験
・コミュニケーションの取り方
・受けてきた教育(→人によってはデジタル格差もある)
・第一言語
・嗜好
・組織上の役職や階層
感覚的には、このように分類されると、非常によくイメージができると思います。
実際には、物事の捉え方や価値観は国民性や時代背景にも影響を受け続けていますから、「表層的ダイバーシティ」による違いが、「深層的ダイバーシティ」を生む要因になると考えることもできます。
現代における「ダイバーシティ」は、特定の人々を性別や人種などの生まれ持った属性でくくり、それを「保護」することではなく、一人ひとりが持っている「違い」を認め、「尊重」しようということなのです。
そこに、「インクルージョン(包括)」と一緒になった「ダイバーシティ&インクルージョン(Diversity & Inclusion)」という概念が生まれてきました。ビジネスにおけるインクルージョンとは、性別や年齢、国籍などさまざまな属性を持つ人々を等しく認め、互いの違いを受け入れ、活かしあいながら、それぞれに実力を発揮できる職場のあり方を指します。「D&I」と略されることもあります。
近年の女性の活躍推進や外国人雇用の促進、経験豊富な高齢者の採用なども「D&I」の例と言ってよいと思います。さらに、そうした属性だけでなく、時短勤務や在宅勤務などの働き方制度の整備や、妊娠・出産・子育てしやすい職場環境や制度づくりなど、「働き方」を多様にすることも、「D&I」として各企業で進められています。
多様な人材が集まっている状態を指す「ダイバーシティ」と、その状態を発展させ、多様な人材が一体となって働いている状態を指す「インクルージョン」。この2つの取り組みを両立することでこそ、人材が定着し、経営上の成果を出すことにつながるという視点が、ようやく日本でも定着していく……、いや……定着させていかねばならないと考えます。
そのためには、「知る」こと。
「わかろう」とすること。
「同じ」という観点、感性を捨てること。
違いを前向きにとらえて、「包み込む」こと。
お互いが「違い」に胡坐をかくことは新たな問題を生むと考えますが、「違い」があるからこそ、それをわかり合い、乗り越えていくことこそが、これからの日本の新しいスタンダードになればと願います。
それは、人だけのことではなく、この世に存在するすべてのものに向けられたとき、舩井幸雄が伝えた、地球自体の次元上昇につながることも、私は確信してやみません。
感謝
2023.02.20:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】「アンコンシャス・バイアス」 (※佐野浩一執筆)
2023.02.10:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】安倍晋三回顧録 (※舩井勝仁執筆)
2023.02.06:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】ダイバーシティ&インクルージョン (※佐野浩一執筆)
舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長 1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。 2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了) 著書に『生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『未来から考える新しい生き方』(2011年 海竜社)、『舩井幸雄が一番伝えたかった事』(2013年きれい・ねっと)、『チェンジ・マネー』(はせくらみゆき共著 2014年 きれい・ねっと)、『いのちの革命』(柴田久美子共著 2014年 きれい・ねっと)、『SAKIGAKE 新時代の扉を開く』(佐野浩一共著 2014年 きれい・ねっと)、『聖なる約束』(赤塚高仁共著 2014年 きれい・ねっと)、『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(朝倉慶共著 2014年11月 ビジネス社)、『智徳主義【まろUP!】で《日本経済の底上げ》は可能』(竹田和平、小川雅弘共著 2015年 ヒカルランド)、『日月神示的な生き方 大調和の「ミロクの世」を創る』(中矢伸一共著 2016年 きれい・ねっと)、『聖なる約束3 黙示を観る旅』(赤塚高仁共著 2016年 きれい・ねっと)、『お金は5次元の生き物です!』(はせくらみゆき共著 2016年 ヒカルランド)がある。 |
佐野 浩一(さの こういち) 株式会社本物研究所 代表取締役社長 株式会社51コラボレーションズ 代表取締役会長 公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事 ライフカラーカウンセラー認定協会 代表 1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。 著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる 自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた船井幸雄のすべて』(成甲書房)、船井幸雄との共著『本物の法則』(ビジネス社)、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)がある。 |