トップが語る、「いま、伝えたいこと」
一般社団法人アンコンシャスバイアス研究所、代表理事である守屋智敬氏によると、「アンコンシャス・バイアスは誰にでもあって、あること自体が問題というわけではありません。過去の経験や、見聞きしたことに影響を受けて、自然に培われていくため、アンコンシャス・バイアスそのものに良し悪しはありません。しかし、アンコンシャス・バイアスに気づかずにいると、そこから生まれた言動が、知らず知らずのうちに、相手を傷つけたり、キャリアに影響をおよぼしたり、自分自身の可能性を狭めてしまう等、様々な影響があるため、注意が必要です。」と伝えていらっしゃいます。
こちらは、内閣府男女共同参画局が出している「共同参画」という冊子から引用させていただきました。
ただ……、ふと思ったことがあります。
男女共同参画?
ということは、この前提には、男女が共同参画していないという事実があります。
男性、女性、若者、高齢者、健常者、障がい者、日本人、外国人……。
たしかに、言葉というのは、「区別」「判別」できるよう生まれたものが多いように思います。ここに、すでに「アンコンシャス・バイアス」が根強く存在する原因があるようにも思います。
企業では、女性の役員の比率を〜%以上にしましょう。
障がい者の雇用比率を〜%以上にしましょう。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
たしかに、「そうでない」から「そうである」ように目標を掲げて、そこに進んでいくことはよくあることです。でも……、だから……、こうした文言には、「アンコンシャス・バイアス」がしつこく、べったりこびりつくことも事実です。
本来は、なにかをやろうとしたら、そこに、男性も、女性も、障がい者も、LGBTQも、高齢者も、とにかくいろんな人たちが自然にいた……。
こんな社会を丁寧につくっていく必要があると痛感します。
結論じみたことを先に書いてしまいました。
★価値観の決めつけ言葉
「“普通” そうだ」
「“たいてい” こうだ」 など
★能力の決めつけ言葉
「どうせムリ・どうせダメ」
「そんなことできるわけない」 など
★解釈の押しつけ言葉
(違う解釈を受け入れない)
「そんなはずはない」
「こうに決まってる」 など
★理想の押しつけ言葉
(自分の理想を相手に求める)
「こうある“べき” だ」
「こうでないとダメだ」 など
よく目にしたり、耳にしたりする言葉ばかりだと思いませんか?
先述した守屋智敬氏がまとめられたものです。
「アンコンシャス・バイアス」とは、「無意識の思い込み」のことを指します。これは、人間誰もが持っているもので、良い・悪い以前の事実です。大切なのは、「私もアンコンシャス・バイアスを持っている」という認識をまず持つことです。精神分析で有名なジークムント・フロイトは、人間は、理性的な存在ではなく、自分で意識していない過去の経験によってつくられた潜在意識を持ち、無意識に動かされていると提示し、近代の人間観に大きな影響を与えました。
たとえば、
有名大学を出た人だから、優秀で頭がいい。
若者はガマンが足りず、すぐに辞める
男性は論理的で、女性は感性が強い
関西人は面白い人が多い。
家事や子育ては女性がやるもの……。
もちろんこういった思い込みは、全員にあてはまる事実ではありません。そういう方もいれば、そうでない方もいる……。要するに個人差であって、全体ではありません。個人の限られた経験による「思い込み」です。こうしたアンコンシャス・バイアスは、さまざまなところに潜んでいます。
アンコンシャス・バイアスは、自分自身にも跳ね返ってきます。たとえば、女性が「女性の幸せは結婚して子どもを産むこと」と考えてしまう……。あるいは男性が「男性はちゃんとした職に就き、妻子を養える収入が必要」と決めつけてしまう……。
アンコンシャス・バイアスにおける最も大きな問題は、ここにあるのではないでしょうか。すなわち、自分自身がアンコンシャス・バイアスにとらわれて自分の価値観が影響されてしまうことで、自分の視野を狭め、世界を小さくしてしまっているということです。
アンコンシャス・バイアスを語るうえで、大きな影響力を持つのが、同調圧力です。コロナ禍になってすぐ、マスクをつけるか、つけないか……においても、とくに日本ではこの同調圧力が大きく影響したように思います。
同調圧力とは、少数意見を持つ人に対して多数意見に合わせさせるような空気がある、あるいは直接圧力をかけることを指します。日本では、昔から「長いものには巻かれろ」という諺もあるくらいで、この同調圧力が、より強いアンコンシャス・バイアスを生んでいるといってもよいと思います。
私が一番強く感じたのが、リクルートのときの服装でした。若いころはとくに反発心も旺盛であったため、周囲とは違う三つボタンの濃紺のスーツに、エメラルドグリーンにブルーの水玉のネクタイを着用して、面接に臨みました。
最終面接……、お名前は伏せますが、応対してくださったのは、有名な社長さんでした。
開口一番、「君は、その恰好は面接に適していると思うかね?」
(きたきたー!)
「はい、そのつもりでまいりました」
そうお答えしたら、少しご機嫌を害されたようでした……。
だから……ではないと信じていますが、不合格でした。
でも、その不合格のおかげで、教師になったので、感謝しないといけませんね。
リクルートの服装は、・・・に・・・。
卒業式では、・・・に・・・。
〜のときは、紺か黒の服装がよい。
もちろんTPOで使い分けることは大事ですが、こうして、まるで規則で強制されているかのごとく束縛されてしまっています。それが、知らぬ間に、自身のなかにアンコンシャス・バイアスとして刷り込まれていくのです。
日本では、「和をもって貴しとなす」「出る杭は打たれる」と言われるように、昔から争いごとはしない、異論を良しとしない文化があります。そのため、ユニークさや個人のオリジナリティーがあまり尊重されてこなかったように感じます。
今回は詳しく触れませんが、それは教育にもあらわれています。もちろん、基礎、基本を学ぶことの大事さは否定しませんが、同じ制服を着て、同じことを学び、ステレオタイプに評価され、そこで「同じ」でないことが許されないのは、どうかと思い続けています。
残念ながら、海外と日本の高校生の自己評価の比較調査では、日本の高校生はアメリカや中国に比べて自己評価や自己肯定感が特別に低いことが毎回伝えられていて、愕然とします。
ここまでお伝えしてきた今回のテーマ、「アンコンシャス・バイアス」から解放されるためには、やはり「〜べき」という思い込みをできる限り捨てて、相手や周囲の価値観を尊重し、受け入れることなのだと思います。昨今、SNSの普及により、自身の「〜べき」論から外れた人を叩く……、つまり強く批判したり攻撃したりする事例が激増しています。ここも大問題ですね!
いま、この時代において、「人それぞれに思い込みがある」と認めて他者を認め合わなければ、日本全体がアンコンシャス・バイアスにとらわれたままで、自分の意見を言ったり、提案したりすることができなくなり、新しいことが生み出せないのではないかと危惧します。もちろん、そこにはある程度の行き過ぎを抑えるシステムも必要であるとは思いますが、もっと世の中全体が活気を取り戻し、個々が生きやすくなっていくためには、まず私たち自身が、アンコンシャス・バイアスから少しでも解放されることが大切なのだと思います。
感謝
2023.02.20:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】「アンコンシャス・バイアス」 (※佐野浩一執筆)
2023.02.10:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】安倍晋三回顧録 (※舩井勝仁執筆)
2023.02.06:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】ダイバーシティ&インクルージョン (※佐野浩一執筆)
舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長 1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。 2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了) 著書に『生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『未来から考える新しい生き方』(2011年 海竜社)、『舩井幸雄が一番伝えたかった事』(2013年きれい・ねっと)、『チェンジ・マネー』(はせくらみゆき共著 2014年 きれい・ねっと)、『いのちの革命』(柴田久美子共著 2014年 きれい・ねっと)、『SAKIGAKE 新時代の扉を開く』(佐野浩一共著 2014年 きれい・ねっと)、『聖なる約束』(赤塚高仁共著 2014年 きれい・ねっと)、『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(朝倉慶共著 2014年11月 ビジネス社)、『智徳主義【まろUP!】で《日本経済の底上げ》は可能』(竹田和平、小川雅弘共著 2015年 ヒカルランド)、『日月神示的な生き方 大調和の「ミロクの世」を創る』(中矢伸一共著 2016年 きれい・ねっと)、『聖なる約束3 黙示を観る旅』(赤塚高仁共著 2016年 きれい・ねっと)、『お金は5次元の生き物です!』(はせくらみゆき共著 2016年 ヒカルランド)がある。 |
佐野 浩一(さの こういち) 株式会社本物研究所 代表取締役社長 株式会社51コラボレーションズ 代表取締役会長 公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事 ライフカラーカウンセラー認定協会 代表 1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。 著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる 自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた船井幸雄のすべて』(成甲書房)、船井幸雄との共著『本物の法則』(ビジネス社)、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)がある。 |