トップが語る、「いま、伝えたいこと」
「ライフカラーカウンセラー認定協会」を発足させてから、もうかれこれ15年ほどになります。
セルフカウンセリングとクライアントさんへのカウンセリング、両方にアプローチできる手法をお伝えしています。年間4回講座を開講していますが、その中でもっとも取り扱いを多くしてきたのが、「自己肯定感」というテーマです。
年々、その「自己肯定感」という言葉を目にする頻度が増えてきました。
ただ、自己肯定感が何かというと、定義が研究者ごとに微妙に異なり、自己肯定感を高めるために紹介されている方法もさまざまです。
たとえば、アドラー心理学では、「自己肯定ではなく、自己受容が重要だ」とされています。ネガティブな人が、無理に肯定的な言葉を発したところで、自己肯定感が高まるわけではない……という感じで、バッサリ斬られている感じです。
では、そもそも、自己肯定感とは何か?
心理学事典の定義を引用すると、「自分の可能性を信じ、自分はできるんだという自信を持ち、肯定的に自己を認識すること」と書いてあります。わかったような、わからないような感じがしますよね。
自己肯定感は「高い」「低い」で表現されますが、「自己肯定感が低い」という概念をわかりやすくするなら、「自己否定感」と捉えたほうがきっとわかりやすいと思います。
「どうせ私なんか……」「自分には無理……」、あるいは、「自分は生きる価値のない人間だ……」などと考えさせてしまうのが自己否定感です。
その逆で、「自分にはできる」「自分には生きる価値がある」「毎日が楽しい」と思わせるのが、自己肯定感です。自己肯定感が高いか低いかではなく、まず「自己肯定感」か「自己否定感」の2つのベクトルで考えると、自分が「どちら寄りの人間か」がよくわかるはずです。
「自己否定感」がある人は、人から褒められたり、励まされたりしても、「どうせ(相手の)本心じゃないし……」「きっと、無理して言っているに違いない」とネガティブに受け取ってしまいます。仕事でよい成果を上げられたときでも、「たまたまうまくいっただけだ」としか思えず、すべての体験を「マイナス」方向に捉えてしまうクセと言ってよいと思います。これでは、成功体験の積み重ねはむずかしくなります。
自己否定感をリセットするためには、「自己受容」が必要です。自分自身のコンプレックスや欠点、短所を抱える自分、失敗だらけの自分、ネガティブな自分をも、そのまま受け入れることです。もちろん、長所、成功体験も、同様に受け入れることが大事です。要するに、「今のままの自分でいい」「ありのままの自分でいい」「今のまま生きていい」、こうした感覚が「自己受容」です。
とくに、子どもの頃に、親から否定されたり、虐待されたりした体験を持つ人は、「自分は生きていてはいけない存在」と捉える傾向が強く、自己肯定感が育まれにくい心的状況になってしまっています。
だからこそ、そのマイナスへ向かっているベクトルを、まずは「ゼロ」の位置に戻していく取り組みが必要です。これが、第一関門だと考えてよいと思います。
極端なことを言うと、「自信がない自分」でもいい……と割り切ることです。
「自己肯定感を高める」=「能力を磨き、自信をつけること」、ではありません。
「自己肯定感をつける」=「ダメな自分を変えて、できることを増やすこと」、でもありません。自己肯定感は、「どんな自分もオッケー」という感覚のことなのです。
自信がない自分を全否定したり、否定から抜け出すために無理やり自信をつけたりするのではなく、自信がないのも自分と受け入れ、「今は自信がないほど落ち込んでいるんだな」と思える状態のことなのです。
……とお伝えすると「できない自分でオッケーなんて思えない!」「どんな自分もオッケーなんて思えない!」とおっしゃる方もいます。
それも、それでよいと思います。
自己肯定感を高める上で一番良くないのは「自分を責めること」だからです。そう思えない自分を責めてしまうくらいなら、「自己肯定感=ありのままの自分を受け入れること」なんて思えなくてもいいのです。
できない自分を受け入れられないと悩むくらいなら、「できない自分を受け入れられなくていい」と割り切ってしまうということです。できない自分を受け入れられないなら、「できる自分」を目指してもいいのですから……。
さて、講演家として日本一だと尊敬する木下晴弘さんが、以前、ご講演でつぎのようなことを話されていました。
「あとよし」の法則。
これは、関わる側からのアプローチですが、たとえば注意したいことがある場合にも、「〜を直しなさい」とだけ言い放つのではなく、「〜についてはぜひ直したほうがいい。あなたには、・・・といういいところがあるのだから」と、注意や苦言を呈した「あと」に、「よいところ」に触れるという伝え方です。
これは、人は「あと」に聞いたことのほうが印象に残るという脳が持つクセがあるからなんだそうです。
同様のアプローチで、自己否定感を持つ人が「自己受容」をするために、勧められている方法を見つけました。
「自己受容の4行日記」。
まずは、1行だけネガティブなことを書きます。それに続いて、「今日あった良かったこと」を3つ書きます。それだけです。
人は、何かを書くことで、考えや感情を整理することができます。ですから、日記などをつけて、そこにネガティブなことを吐き出すというのも1つの方法としてはあります。
ただ、たしかにストレス発散になるのですが、そればかりを繰り返すと「ネガティブ記憶」「ネガティブ思考」が強化される恐れがあります。そこで、「1行=ネガティブ」とセットでポジティブなことを書いて、「あとよしの法則」を起動するのです。
これは、自分自身へのカウンセリング、つまりセルフカウンセリングとして、とても効果的な手法だと考えます。
一方、自己肯定感と関連するのが、「自己効力感」です。
別の見方からすると、この自己効力感というのは「自信」と理解してもよいかもしれません。それでは、この「自信」とはどうやって育まれるのかというと、つぎの図式がわかりやすいと思います。
「自己肯定感」×「経験」=「自信」
自己肯定感を高め、成功体験を積むことによって、「自信」が生まれ、育まれるということです。どちらも「ゼロ」では、この式の解は、「ゼロ」になってしまうので、気をつけなければいけません。
ここで、ポイントとなるのは、「経験」の捉え方です。
たとえば、仕事やテストでよい結果が出たとします。
自己肯定感が少なくともプラスの方向にあると、「がんばったから結果が出た」「がんばってよかった」「これからも続けていこう」と、前向きに捉えることができます。すなわち、「自信」の芽生えにつながっていきます。
しかし、自己否定感のある人は、「たまたまだ……」とか、「つぎはうまくいくはずがない」と、意識はマイナスに振れてしまっています。これを変えるためには、「経験」への意味づけを変えることしかありません。つまり、「受け取り方」です。
一方で、自己否定感のある人は、「たまたまヤマが当たっただけだ」などと、せっかくの「成功体験」を否定的にとらえるので、「自信」として積み上がりません。テストの「結果」よりも、「受け取り方」のほうが重要なのです。
とにかく、自分を責めない「受け取り方」をすることです。
天才バカボンのパパは、尊敬すべき手法で、自己肯定感と自己効力感を高めています。
「これでいいのだ!」
そう、それでいいのです。
そのことはベストな結果ではなかったかもしれませんが、「それでいい」のです。
ここまで、いろんなことを書いてきましたが、「これでいいのだ」がすべてと言ってよいと思います。
「これでいいのだ」と思えるようになると、きっと新しいことにチャレンジできるようになります。行動が積極的になり、自己嫌悪が減り、劣等感も消えていきます。やがて自分に自信がつき、いろんなことが明るく見えてきます。
ぜひ、本稿をお読みいただいた皆さんはもちろんのこと、なにかで八方塞がりになっていたり、悩みごとで前に進めない方がまわりにいらっしゃったら、伝えて差し上げてください。
「どんな自分でもひとまずオッケー」
「これでいいのだ!」
感謝
2023.03.20:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】正解のない時代 (※佐野浩一執筆)
2023.03.13:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】ループの力 (※舩井勝仁執筆)
2023.03.06:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】「これでいいのだ!」 (※佐野浩一執筆)
舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長 1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。 2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了) 著書に『生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『未来から考える新しい生き方』(2011年 海竜社)、『舩井幸雄が一番伝えたかった事』(2013年きれい・ねっと)、『チェンジ・マネー』(はせくらみゆき共著 2014年 きれい・ねっと)、『いのちの革命』(柴田久美子共著 2014年 きれい・ねっと)、『SAKIGAKE 新時代の扉を開く』(佐野浩一共著 2014年 きれい・ねっと)、『聖なる約束』(赤塚高仁共著 2014年 きれい・ねっと)、『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(朝倉慶共著 2014年11月 ビジネス社)、『智徳主義【まろUP!】で《日本経済の底上げ》は可能』(竹田和平、小川雅弘共著 2015年 ヒカルランド)、『日月神示的な生き方 大調和の「ミロクの世」を創る』(中矢伸一共著 2016年 きれい・ねっと)、『聖なる約束3 黙示を観る旅』(赤塚高仁共著 2016年 きれい・ねっと)、『お金は5次元の生き物です!』(はせくらみゆき共著 2016年 ヒカルランド)がある。 |
佐野 浩一(さの こういち) 株式会社本物研究所 代表取締役社長 株式会社51コラボレーションズ 代表取締役会長 公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事 ライフカラーカウンセラー認定協会 代表 1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。 著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる 自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた船井幸雄のすべて』(成甲書房)、船井幸雄との共著『本物の法則』(ビジネス社)、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)がある。 |