トップが語る、「いま、伝えたいこと」
当欄を執筆させていただくのが2週間に1度になりましたが、マーケットの状況をある程度落ち着いて見るにはいいペースなのかなと感じています。2週間前は、日銀やFRBが金融政策を決める会合を続けて開いたことに対するコメントを書かせていただきました。
そこから2週間が経って市場はアメリカの利上げは上限に達して、しばらくこの水準を維持するのかもしれないが、やがて利下げに向かっていくのだろうということを織り込みだしたように感じます。そして、日本でも銀行などの金融機関が長期国債を積極的に買いに回るなど、これ以上の債券価格が大きく下げる可能性は低いのではないかと思い始めたようです。
債券価格の下げで、アメリカの中堅銀行の倒産が続いたことによるプチ金融パニックの影響は当面はなくなったと考えてもいいのかもしれません。ただ、為替に関しては、当初予想されていたように来年早々からFRBが利下げに舵を切ることは考えにくく、日本の長期金利が1%以下で当面は推移することが予想される中で、日米の金利差によるドル高の傾向はまだ続くのかもしれないと思います。年初のプチ危機の時は、欧米の景気悪化に対処するための利下げは必要ではないかという意見も見受けられましたが、いまは引き締めを緩める段階にはまだ至っていないという見方が優勢なのだと思います。
そんな流れを受けて、日経平均はまたバブル後最高値の水準に近づいてきました。市場の関心は、バブルの絶頂期につけた最高値に今度こそ本格的に挑戦するような動きになるのかどうかということになってきたのかもしれません。バブルの崩壊が日本に与えた影響はとても大きく、1989年の大納会(その年の最後の取引日)につけた38,915円という史上最高値を超えるかどうかは、かなり大きな心理的な壁になることは間違いないと思います。2024年は超えられるかどうかは別にして、それに挑戦する年になるのではないかと思います。
ただもっと大きな流れで言うと、金融危機が起こる可能性も高いとも思いますので、短期的な希望と長期的な不安の両方を感じながら過ごしていく年になるのかもしれません。
アメリカはインフレの沈静化に何とか成功しつつあるように見えますし、日本も円安や金融緩和措置からの脱却という難しいかじ取りをいまのところ上手くやっているように感じますので、大きな波乱をなるべく先送りしながらいい年を迎えたいと思っております。
相場の流れやもしかしたら天変地異ですら、私たちの思いの集合意識が作り上げているのかもしれません。
私は、新しい時代を迎えるために来てしまうのであろう大難をできれば小難にしたいと思っています。だから、そのためにはどんな情報をお伝えしていけばいいのかをこれからもしっかりと考えていきたいと思っています。
今回紹介するのは新堂冬樹著『極悪児童文学-犬義なき闘い』(集英社文庫)です。『ザ・フナイ』にノアール(暗黒)小説を連載していただいている新堂先生ですが、大好きな犬をよく題材として用いながら白(ノアールの反対の心温まるドラマ)新堂作品もたくさん書いています。代表作は200万部以上売れた「忘れ雪」(角川文庫)ですが、本作ははっきりした白でもなく黒でもなく、また犬をストレートに使ったものでもない一風変わった作品になっています。
ジャンル的には黒新堂で任侠もの(?)。新型ウイルスによって人がいなくなりゴーストタウン化した新宿で生きる犬たちの物語です。ふざけているようにも感じられる設定ですが、一流のエンタメ小説の条件をしっかりとクリアするべくよく練られています。何と言っても、登場犬物紹介が可愛いのがすばらしいと思います。読了後に見返すと『この子達があんな……』と違った感想が得られて楽しめます。
犬の物語ですがシリアスな展開が続きます。平気で死犬も出るし残酷な描写も盛りだくさんの任侠ものですから、そんな風に独特な世界観の中でも本格的な任侠小説とあって読み耽ってしまうのですが、ふとした時に『だけどこれは犬の物語なんだよな……』と頭に浮かんでしまうと、そのシュールさに思わず笑いがこみ上げてきます。
ネタバレになるのであまり内容には触れませんが、主人公的な立ち位置であるシェパードとロットワイラーの関係がいいですね。あとは個人的にはチワワがいい味を出しており、とても好きです。名脇役というか、裏主人公というか、ある意味で人間……ではなくて犬ですが、らしくて大好きです。犬を本当に愛している新堂先生の小説なので、犬については非常に細かく分類、説明がなされています。こういう子だからこの陣営、こんな性格と、犬毎の特徴を知ることもでき、もし飼うことがあればこの子かな……と言うように勝手に想像をして楽しんだりもできるように書かれています。
新堂先生とは仲良くさせていただいていて、時々お食事をご一緒させていただいたりしているのですが、いつも新しい分野への挑戦をしたいと思っているというお話をしておられます。さすがに大真面目に犬を主人公にした任侠小説は世界初の試みだと思いますが、先生は、そんなことをさせてくれた出版社の度量の大きさに感謝しているともおっしゃっていました。新しい文化はこうしてできていくのだなという不思議な読後感を持ちました。たまには、普段読まない分野の本を読んでみるのもいいものです。
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2023.11.20:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】犬の任侠小説? (※舩井勝仁執筆)
2023.11.13:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】本当の自由な生き方とは? (※佐野浩一執筆)
2023.11.06:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】現代の駆け込み寺 (※舩井勝仁執筆)
舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長 1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。 2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了) 著書に『生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『未来から考える新しい生き方』(2011年 海竜社)、『舩井幸雄が一番伝えたかった事』(2013年きれい・ねっと)、『チェンジ・マネー』(はせくらみゆき共著 2014年 きれい・ねっと)、『いのちの革命』(柴田久美子共著 2014年 きれい・ねっと)、『SAKIGAKE 新時代の扉を開く』(佐野浩一共著 2014年 きれい・ねっと)、『聖なる約束』(赤塚高仁共著 2014年 きれい・ねっと)、『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(朝倉慶共著 2014年11月 ビジネス社)、『智徳主義【まろUP!】で《日本経済の底上げ》は可能』(竹田和平、小川雅弘共著 2015年 ヒカルランド)、『日月神示的な生き方 大調和の「ミロクの世」を創る』(中矢伸一共著 2016年 きれい・ねっと)、『聖なる約束3 黙示を観る旅』(赤塚高仁共著 2016年 きれい・ねっと)、『お金は5次元の生き物です!』(はせくらみゆき共著 2016年 ヒカルランド)がある。 |
佐野 浩一(さの こういち) 株式会社本物研究所 代表取締役社長 株式会社51コラボレーションズ 代表取締役会長 公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事 ライフカラーカウンセラー認定協会 代表 1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。 著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる 自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた船井幸雄のすべて』(成甲書房)、船井幸雄との共著『本物の法則』(ビジネス社)、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)がある。 |