トップが語る、「いま、伝えたいこと」

このページでは、舩井幸雄の遺志を引き継ぐ舩井勝仁と佐野浩一が、“新舩井流”をめざし、皆様に「いま、伝えたいこと」を毎週交互に語っていきます。
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2024年3月4日
いまのいまからでも人生は変えられる!(アドラーに学ぶ) (※佐野浩一執筆)

 アルフレッド・アドラー(1870-1937)は、19世紀生まれのユダヤ系オーストリア人心理学者。いまや、この名を知らない人はいないだろうというくらいに、有名になりました。そのおおきな要因としては、ベストセラーになった『嫌われる勇気』(岸見一郎氏著)で一気に広がったのではないかと思います。
 アドラーは、かつてはフロイトとともに研究していたそうですが、その後決別し、独自の「個人心理学」を構築していきました。その学説はフロイト理論とは大きく異なり、たとえば苦しみの原因を「トラウマ」に求めません。そもそも原因を求めることすら否定する点が、とてもユニークだと思います。
 アドラーは、学ぶたびに発見と気づきがあります。今回は、そんな発見と気づきについて、まとめてみたいと思います。
 たとえば、何をしても怒鳴るだけの上司がいるとします。しかし、その上司の理不尽な感情は、自分自身の課題ではありません。上司が自分で処理すべき課題です。自分自身でなすべきことは、自分ができる仕事をきっちりこなすことのはずです。上司の感情に対応することが仕事ではありません。
 つまり、自分でできることとできないことを見極める……。アドラーはこのことを「肯定的なあきらめ」と表現しています。
 逆に、上司の理不尽な命令のままに働いて、結果として大トラブルが起こったら、どうなるでしょう? その責任を引き受けますか? いや……、きっと「上司のせい」にすると思われませんか?
 この流れでいくと、結局、「原因論」に縛られて、仕事に失敗してしまった口実として、上司の存在を用意していると考えます。これを「目的論」に即して考えれば、「真っ当な仕事ができない自分を認めたくないから、理不尽な上司を作り出している」というのが、アドラーが指摘するところです。
 そのとき、自分自身は「上司」という言い訳を用意して責任転嫁をする、「人生の嘘」に陥ってしまっていると考えます。
 結論から言うと、自分の人生を、自分の責任だけで選択することの大切さを、アドラーは教えています。そうすればすべてがシンプルになると……。そのようにできず、人生を複雑にしているのは、ほかならぬ自分自身だということなんです。
 そうはいっても、「私には過去にこんなトラウマがある。だからこうするしかないんだ。」そんな反論も聞きます。自分のややこしい選択には原因がある、ということですね。
 しかし、アドラーはこうした「原因論」を否定します。トラウマは嘘だということです。もちろん、過去の出来事が今の自分に影響していることはいくつもあると思います。
 でも、「何かの行動を過去が決定した」ということはないんだと断言するのです。
すべての行動には「目的」があります。つまり「目的論」です。何かの行動や感情に足して、たとえばトラウマのような原因を求めるという思考は、この「目的」を隠していると考えます。
 私は、幼いころ、母によく𠮟られました。……というか、母の感情が爆発して怒っているという感じに見えました。いまでも、けっこう鮮明に記憶しています。あの頃は、子どもながら、その都度、「早く終わらないかな……」って内心思いつつ、その場をやり過ごすことを考えていたものです。もちろん、“理不尽”という言葉は知りませんでしたが、「どこか理不尽だ」とずっと感じていたのです。
 アドラー心理学に出会って、とんでもない答えを見つけてしまったと感じたものです。この「怒る」という感情は、「目的」があって作り出されたものであって、何かの「原因」によるものではない……。(「え、ちょっと待って……。そういうことなの?」)このとらえ方には、正直びっくりしたものです。でも、そこに1つの「答え」があったのです。
 あえて第三者的な書き方をすると、この猛烈に子どもを叱っている母親は、その行為で子どもを屈服させたいという目的があって怒っている……。子どもが不始末をしでかしたという原因で怒っているのではない……。
(「え、そこまで断言してしまっていいの? そういうことなの?」)
 ものすごく葛藤が沸きあがる「答え」でした……。
 でも、その証拠に、叱っている母親が、急に「ピンポーーン」って鳴って、来客を迎えた瞬間、急に上機嫌な声で話している様子を、私は記憶していました。つまり、アドラーが言うには、「母親は感情に支配されてはいなかった」ということになります。
 ここで、「私はあんなに叱られたダメな人間なんだ……」という認識を持ってしまったら、先述した「人生の嘘」に陥ることになったのですが、どういうわけか、「大丈夫!なんとかなる!」という楽天的な性格も幸いしたのか、その後遺症みたいなものは、母との思い出レベルにとどまってくれています。もちろん、一人っ子だったこともあり、可愛がられた記憶が山ほどあるからかもしれませんが……。人の心理って面白いものですね!
 
 さて、『嫌われる勇気』のなかで、哲人がこう語ります。
 「われわれは『いま、ここ』にしか生きることができない。」
 アドラー自身は、「いま、ここ」とははっきり言っていないようで、「ザッハリッヒに生きる」と表現しています。「地に足がついた現実的な生き方が大事だ」ということです。具体的には「人からどう思われるか気にしない」こと。そして、「自分や他者に理想を見ない」こと。この2つが大事だとアドラーは説いていきます。
 ザッハリッヒに生きるためには、もうひとつポイントがあると岸見先生は言います。それが「いま、ここを生きる」ということ。
 舩井幸雄は、よく、「自然には2つの役割がある」と言いました。1つは、「秩序形成機能」、もう1つは「秩序維持機能」。この後者は、人間が行き過ぎたことをしてしまったとき、自然はその秩序を守るために、自然災害という形で警鐘を鳴らすのだと……。
 「警鐘を鳴らす……」なんて、ある意味、とても恐ろしいことを述べているように感じます。事実、今年も新年早々、能登での大地震が発生し、各地で甚大な被害が発生し、また多くの人々がその犠牲となりました。お亡くなりになられた方々、そしてそのご家族の方々に、慎んで心よりご冥福をお祈り申し上げます。
 私は、阪神大震災、そして東日本大震災も経験しました。とくに阪神大震災のときは、一瞬にして形のあったものが崩れ落ちる様を目の当たりにしました。そのとき、「あたりまえ」はない……ということ。日常は、いつ非日常になるかもしれない……ということを思い知らされました。ましてや、思い描いたようになることもあれば、そうでないことも多々あるということも痛感したものです。
 失くしてしまうと、あったときのことが思い出されます。つきまといます。変わってしまうと、それ以前の姿、様子が思い出されます。つきまといます。それが理不尽で想定外なことであればあるほど、人はどうしても過去に縛られ、思い出し、後悔したり、苦しんだりしてしまうものです。
 だからこそ、「いま、ここ」なんだと思います。この先のわからないことを不安に思ったり、見えないことに思いを馳せるより、「いま、ここ」に集中して、「これから何ができるか」を考えた方がよいということですね。「いま、ここ」で、いかに自分が周囲に貢献できるかを考えながら、今日、いまできることを真剣かつ丁寧にやっていくしかありません。

 アドラーの名言というと、もちろんたくさんあるのですが、今回お伝えしたかったことを、まとめてくれているような言葉を選んでみました。

「遺伝もトラウマも、あなたを支配してはいない。どんな過去であれ、未来はいまここにいるあなたがつくるのだ。どんな過去のことも、今のあなたを「今」変えることはできません。過去は変えられませんが、未来は今のあなたがこれから作っていくのです。」

 そう、私たちは、だれにも支配される必要はないのですね……。

「楽観的でありなさい。過去を悔やむのではなく、未来を不安視するのでもなくいま現在だけを見なさい。どんな時でもポジティブであること。過ぎたことを後悔したり、まだ先の未来のことを不安に感じてもどうしようもありません。今を生きることです。」

 ポジティブであることは、いまを生きるということなんです。

「未来は自分で決めて行ける。目的の持ち方で未来は変えられる。過去の解釈の仕方で今は変えられる。自分の力で変えていくことができるのは、未来です。過ぎ去った過去も、自分がどう思うかによって変えられるのです。」

 過去だって変えられるんです。解釈の仕方1つで、暗かった過去も、明るく自分自身を照らしてくれる貴重な経験に変わるということです。

 いまのいまからでも、人生は変えられます。
 ぜひ、ご自身の人生を明るく照らす光を見つけませんか!
                          感謝

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舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長
1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。
2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了)
著書に『生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『未来から考える新しい生き方』(2011年 海竜社)、『舩井幸雄が一番伝えたかった事』(2013年きれい・ねっと)、『チェンジ・マネー』(はせくらみゆき共著 2014年 きれい・ねっと)、『いのちの革命』(柴田久美子共著 2014年 きれい・ねっと)、『SAKIGAKE 新時代の扉を開く』(佐野浩一共著 2014年 きれい・ねっと)、『聖なる約束』(赤塚高仁共著 2014年 きれい・ねっと)、『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(朝倉慶共著 2014年11月 ビジネス社)、『智徳主義【まろUP!】で《日本経済の底上げ》は可能』(竹田和平、小川雅弘共著 2015年 ヒカルランド)、『日月神示的な生き方 大調和の「ミロクの世」を創る』(中矢伸一共著 2016年 きれい・ねっと)、『聖なる約束3 黙示を観る旅』(赤塚高仁共著 2016年 きれい・ねっと)、『お金は5次元の生き物です!』(はせくらみゆき共著 2016年 ヒカルランド)がある。
佐野 浩一(さの こういち)
株式会社本物研究所 代表取締役社長
株式会社51コラボレーションズ 代表取締役会長
公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事
ライフカラーカウンセラー認定協会 代表
1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。
著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる 自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた船井幸雄のすべて』(成甲書房)、船井幸雄との共著『本物の法則』(ビジネス社)、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)がある。
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