トップが語る、「いま、伝えたいこと」

このページでは、舩井幸雄の遺志を引き継ぐ舩井勝仁と佐野浩一が、“新舩井流”をめざし、皆様に「いま、伝えたいこと」を毎週交互に語っていきます。
毎週月曜日定期更新
2024年12月16日
イスラエル (※舩井勝仁執筆)

 先週、一瞬ですが日経平均が4万円の大台に乗りました。背景には、11月のアメリカのCPI(消費者物価指数)が2.7%の上昇だったと発表され、市場予測と一致していたことが背景にあります。これによって、市場がすでに織り込んでいる今週のFOMC(米連邦公開市場委員会)での0.25%の利下げと日銀の金融政策決定会合での利上げ見送りがほぼ確定したという見方が強まり、市場の予測通り無風の政策決定が行われる見込みが高まったことからくる安心感で買われました。ただ、トランプ政権発足が1か月後に迫る中で、不確実性も意識されていて12日(木)の終値は4万円を下回って終わりました。続けて発表されたPPI(卸売物価指数)が市場予測を上回ったことが危惧されて、13日(金)の日経平均は大きく下がって始まりました。
 アメリカでは11日(水)に、日本市場に影響が大きいナスダック総合指数がはじめて2万の大台を超えて終わりました、金融当局のインフレへの対処が順調に成功していることへの安心感が背景にはあるように感じます。実質的に金融の供給量(簡単に言うとお金の量)を無限大に増やせる制度が1971年のニクソンショックで始まってから50年以上の歳月が経ち、インフレコントロールさえ上手くいけばお金の量は減ることなく増え続けるという金融の動向が確立してきたことで金融市場は恒常的に金余りの状況が続いています。市場は投資する理由を屁理屈でもいいので見つけて、それで上がっていくという構造がインフレショックを乗り越えたことで復活したと考えればいいのかもしれません。PPIのマイナス情報もやがて織り込んでいって、トレンドしては上がっていく流れなのだと感じます。
 個人的には、トランプ政権が再度発足することで一番大きな懸念は世界の安全保障制度の抜本的な変革が進むことだと思っています。冷戦が終わって30年以上が経過している現在においてもNATO(北大西洋条約機構)を基本とした安全保障制度が実質的には世界(西側)の安全を守ってきました。冷戦時代には東側にはワルシャワ条約機構(WP)という国際軍事機構がありました。NATOはこれと対立する形で存続していたのが本来の目的です。WPは冷戦が終結した直後の1991年に解体されているので本来であればNATOも存在意義を失っているのですが、アメリカが引き続き東側にも拡大したヨーロッパの安全を守ることで世界を安定するということでいまに至るまで継続しています。
 アメリカがいつまでも自らの資金と若者の血でヨーロッパや世界の安全を守り続けるのはおかしいというトランプ大統領の主張は正しい理屈だと思います。この体制が継続した背景には、アメリカの軍事力を背景にして自由貿易体制を守ることが世界経済において最も大事なことであるというコンセンサスがあったと考えられますが、どちらかというと中国などの敵対国家に対して関税を上げて行こうというトランプ大統領の考え方はこれを否定するものです。そう考えるとNATOは必要ないということになります。ただ、この背景には核兵器が使われないようにすることを担保するという別の大きな意味合いもあります。
 NATOによる安全保障体制が崩れることで、核戦争の脅威が高まることが最も懸念されることだと思います。ただ、来年1月20日に発足するトランプ政権が実際にどのような安全保障政策を採っていくかは未知数なので、市場は固唾を持って見守っている状態にあるということはしっかりと感じておいた方がいいように思います。

 そんな危惧を感じている中で、ある平和財団の会報誌に紹介されていた日本在住のイスラエル人ダニー・ネフセタイ著『どうして戦争をしちゃいけないの?』(あけび書房)を今週は紹介したいと思います。著者はイスラエルで生まれ育ち、徴兵で空軍のパイロットになろうとしましたが、最後の関門でパイロットになれなかったという経歴をお持ちです。もし、パイロットになっていたら、彼もレバノンに対しての爆撃に参加して多くの人を殺していた現実を見つめている方でもあります。現在は日本で暮らしているダニーさんが、現在のガザで起こっている以前の紛争の解説をイスラエル国民の視点から解説し、イスラエルの兵役など基礎的な知識、どのようにして戦争はおこなわれているのか、内部の実態はどうなっているのかを知る事ができる内容となっています。
 中学生でも読めるように、ふりがなや文体などで子どもにも分かりやすい内容となっており、現在のイスラエルによる戦争の背景を解説が主となっており、子どもに戦争について知ってもらい考えてもらうためには最適の本だと感じます。現状のイスラエルを批判しつつも、このような状況になってしまった理由を教育など、イスラエルで育ったからこその視点で語っており、この辺りはとても興味深い内容となっています。イスラエル人はどうして戦争反対の声をあげるのが難しいのか、内部で何が起きているのか、軍部がなぜあれだけの力を持っているのか。
 この問題をイスラエル側の立場から書かれた書籍にしては珍しく、国に忖度する事なく語られている印象であり、一定の冷静さと、国から離れている立場だからこそ書ける内容なのだなと、現在のイスラエル人の立場の難しさを改めて実感します。彼は特に平和主義者的な立場をとっている事から、今回の戦争に強い違和感を抱いている、それを強く主張しています。
 子ども向けでもある為、大人であればあっという間に読み終えてしまう非常にシンプルな内容です。しかし言論の自由を手にした元イスラエルの一国民の立場から書かれた内容は新たな視点を与えてくれるものであり、大人である我々も一度は目を通すべき一冊ではないでしょうか。ガザの紛争が紛糾してしまっている大きな原因が私には、世界の安全保障の枠組みが変更されつつあることと深く関連しているように思えます。日本や世界の平和を考えていく上で大事な示唆を得られる本だと感じています。
                         =以上=

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舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長
1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。
2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了)
著書に『生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『未来から考える新しい生き方』(2011年 海竜社)、『舩井幸雄が一番伝えたかった事』(2013年きれい・ねっと)、『チェンジ・マネー』(はせくらみゆき共著 2014年 きれい・ねっと)、『いのちの革命』(柴田久美子共著 2014年 きれい・ねっと)、『SAKIGAKE 新時代の扉を開く』(佐野浩一共著 2014年 きれい・ねっと)、『聖なる約束』(赤塚高仁共著 2014年 きれい・ねっと)、『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(朝倉慶共著 2014年11月 ビジネス社)、『智徳主義【まろUP!】で《日本経済の底上げ》は可能』(竹田和平、小川雅弘共著 2015年 ヒカルランド)、『日月神示的な生き方 大調和の「ミロクの世」を創る』(中矢伸一共著 2016年 きれい・ねっと)、『聖なる約束3 黙示を観る旅』(赤塚高仁共著 2016年 きれい・ねっと)、『お金は5次元の生き物です!』(はせくらみゆき共著 2016年 ヒカルランド)がある。
佐野 浩一(さの こういち)
株式会社本物研究所 代表取締役社長
株式会社51コラボレーションズ 代表取締役会長
公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事
ライフカラーカウンセラー認定協会 代表
1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。
著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる 自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた船井幸雄のすべて』(成甲書房)、船井幸雄との共著『本物の法則』(ビジネス社)、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)がある。
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