トップが語る、「いま、伝えたいこと」
なかなか円高になりにくい状況にあると先週書かせていただいたのですが、先週後半に急激に円高が進行しました。それでも、まだ151円台(2月7日(金)の9:40)ですが、相場はトランプ大統領の発言に振り回されている状態だと感じます。突然カナダとメキシコに25%の関税をかけると表明して、それを電話首脳会議で麻薬対策に対する一定の約束ができたので、1カ月延期するという流れに1日で覆りました。また、ガザ地区をアメリカが長期に保有するという、いままでのパレスチナ和平交渉を無にするような発言をして、トランプ劇場に世界が湧いている状態です。
ディールが背景にあるので、たとえ大統領令に署名したとしても、その真意がなかなか測りかねるというのが本音の所ですが、現地時間の2月7日(配信時には終了しています)にトランプ大統領になって初めての日米首脳会談がアメリカで行われることになっていて、それも円高要因のひとつだと解説されています。私が書くものも含めて、どうも相場の動きの解説は後付けのものがほとんどのような気がしますが、首脳会談の行方と日銀が利上げを継続するであろうこと、さらには、実は日本は主要国の中で一番関税耐性が高いのではないかとみられていることが要因に上げられています。
イメージとはだいぶ違い、日本は輸出大国ではありません。GDP(国内総生産)に占める輸出の割合は20%強で、韓国が50%弱、ドイツが40%弱と両国は大きいのですが、日本の大企業は現地化が進んでいて、いまは製造業というよりは現地で事業を行っていて、その売上利益を業績に計上しているので為替の影響は受けやすいのですが、関税に対してはアメリカに次いで耐性が高い国です。ちなみに昨今の貿易赤字が定着していることからもわかるように、輸入の割合はもっと低く、そういう意味ではマクロに見ると、円安に大騒ぎするほどのことはないこともわかります。
ただ、エネルギーや食糧など本当に生きていく上で欠かせない大事なものを輸入に頼っていることが弱点で、本当はここの改善策を考えて行くことが大事な政策になるのですが、あまりやり過ぎるとアメリカのトラの尾を踏んでしまうことになるのが悩ましい所です。安全保障の問題もありますので、一概には言えないのですが、食糧やエネルギーの独自調達ルートを考えていくことを目標に石破総理がトランプ大統領とのディールを始めてくれれば言うことがないような気もしますが、そこまでできなくても、実はトランプ大統領の再登板は、日本を取り巻く国際環境を考えると有利な面も多くあるのだと思います。
先週、書いたように根本的な円安要因は続いていますので、そう簡単に円高傾向が定着するとは思いませんが、今年の相場は何でもありのつもりで大きく構えておくのがいいと思います。ただ、リスクを最小化することは大事なので、短期トレードの方はなるべく早く利益や損失を確定すること、長期投資の方は不要不急の資金は投資に回さないことが肝要だと思いますし、レバレッジ等をやる方はほどほどにしておかれるのがいいのだとは感じています。
今週ご紹介するのは佐藤文昭著『The Great Luck 大幸運の法則』(あさ出版)です。簡単に言えば、ビジネスで成功していてこれまでの著書はどちらかと言えばビジネス志向が強かった著者の自己啓発というかスピリチュアル本という感じです。普通なら、まず手に取らないのですが、心理学のワークセッションを一緒に受けていた、やはりビジネスで成功している若手社長から強く勧められて読んでみたら、かなり深い内容でびっくりしました。
小説風で読みやすいタイプの自己啓発本です。説明風の台詞が多く全く違和感がないかと言われてしまうと微妙かもしれませんが、逆にそこが自己啓発本である事を完全には忘れさせない程よい塩梅になっているとも言える部分だとも思います。内容については、物語に沿って、自分の悩みを解決する方法、現代人が持つ問題との向き合い方を基礎的な部分から振り返りながら教えてくれ、それらによってどのようにすれば幸運を掴めるか、と言った感じのものです。
例えば一章では、科学的根拠に基づいた正しい生活リズムを維持し睡眠を確保する重要性、SNSによって容易になった視覚化された他人の良い部分ばかり追い求める傾向の危険性、平均の罠、限定品や希少価値のある品へ生まれる欲望への対処、皆が囚われてしまっているマウントや自己肯定感への対処など。意識せずに、日常で当たり前に存在する現代人を苦しめている部分について、どれを取り除けば楽になれるのかを知ることができ、これらは非常に役に立つ事があるはずです。
章が進むにつれて、世の中の仕組みについての独自のアプローチを交えた解説、生きやすい環境の築き方と進んでいきます。同じように日常に活用できる事柄が多数登場し、こちらも興味深いものです。そして最終章では今までの内容を踏まえて本題である大幸運の掴み方について教えてくれるのですが、積み重ねの分の説得力があり、曖昧さが薄いという意味で自己啓発本の欠点を克服している、本書の素晴らしい部分なのかなと思います。
どこか初見では手を出しにくい雰囲気も醸し出している本書ですが、興味深い部分も多々あり、ぜひ一度手に取っていただきたい一冊です。
=以上=

2025.02.17:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】「軽薄な破壊者」との戦い (※舩井勝仁執筆)
2025.02.10:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】大幸運の法則 (※舩井勝仁執筆)
2025.02.03:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】未来から考える新しい生き方 (※舩井勝仁執筆)


舩井 勝仁 (ふない かつひと)
![]() 1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。 2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了) 著書に『生き方の原理を変えよう』 |
佐野 浩一(さの こういち)![]() 株式会社51コラボレーションズ 代表取締役会長 公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事 ライフカラーカウンセラー認定協会 代表 1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。 著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』 |
