トップが語る、「いま、伝えたいこと」

このページでは、舩井幸雄の遺志を引き継ぐ舩井勝仁と佐野浩一が、“新舩井流”をめざし、皆様に「いま、伝えたいこと」を毎週交互に語っていきます。
毎週月曜日定期更新
2025年2月17日
「軽薄な破壊者」との戦い (※舩井勝仁執筆)

 先週書いた時は円高だったのですが、今週は円安になりました。いろいろな背景がありますが、FRBのパウエル議長が利下げに慎重な発言をして、何よりもアメリカの消費者物価指数が3%上がって、これはかなり予想値を上回るものでした。ディールとしては利下げを要求しているトランプ大統領の姿勢とは相反することになりますが、数字だけを見ると利下げではなくて利上げを考えなければいけない状態のようにも思えますが、さすがにFRBもそこまでは踏み込んでいないというのが実態なのかもしれません。
 為替相場は一時的には154円台まで円安になりましたが、この原稿を執筆時点では152円台後半の水準にまで戻しています。2期目のトランプ政権は、アメリカの政治の仕組みに精通していて、1期目のときにはできなかった政策をドンドン実行していくという話しはよく聞きますが、逆に市場もトランプ政権のやり方を研究する時間がたっぷりあったわけで、これもずいぶん前からトランプ氏が再選されるだろうという予想が主流の中で、いまのところトランプ政権の不思議な市場との対話がうまくいっているのかもしれません。
 一方の植田日銀は金利を上げていくという面に関してはかなりのタカ派(利上げ推進派)のように感じます。お米の値段を中心に日本でもインフレが顕著に進行しています。自由主義経済において、一番難しい金融政策はインフレのコントロールです。いろいろな意見はあると思いますが、デフレの状態をようやく脱した日本経済は大事なところを通過中で、ここで適度なインフレ水準を保つことが重要になります。政府や市場関係者はどうしても株価が上がったり景気がよくなったりしていくために利下げを求めてしまいますが、現在のインフレ水準は危険水域に近づきつつあるので、引き締めをしていくという方向性は正しい金融政策だということになるのだと思います。
 幸いに、あまり政権基盤が強くない石破政権ですので無理は言わないのかもしれませんが、どちらかというと財政赤字の解消を狙い税収が上がりやすいインフレ状態を望む財務省の(表面的には)見えない力が強くなっているのが気になります。ここで、インフレ政策に舵を切って日本経済を破壊しないような金融政策を採り続けることが大事なように感じます。この辺りは、先週の舩井メールクラブの植草一秀先生の配信の受け売りですが、日銀がこの姿勢を続けると債券価格が下がっていくリスクがあることは認識しておいた方がいいと思います。

 今週は猫組長著『「軽薄な破壊者」との戦い』(ビジネス社)をご紹介させていただきたいと思います。SNSを利用して大衆を巻き込んだムーブメントを起こせた候補が世界各国で選挙に勝利するなど、政治でもSNSの存在感が大きくなっている事を実感する事が昨今増えています。保守派の視点から日本やアメリカの現在の政治を斬る、というような内容の本書ですが、今まで無関心でいた層が新たに政治に興味を持つ、そういった若者が増える事自体は非常に良い傾向なのですが、問題はまだ成熟しておらず、にもかかわらず大きな影響力を持ってしまっている点かもしれません。本書内ではそれらに該当する人々を『軽薄な破壊者』という強い言葉を用いて表現しています。
 猫組長は、倒産を機にアンダーグラウンドの世界に引きずり込まれ、暴力よりも知性で勝負して生き残ってきた方で、ある意味まっとうな金融関係者よりも圧倒的にリアリティのある経済の実態を体感として理解されている方です。金融の中でも最も激しくて厳しい世界である原油取引にまで手を出されていて、アンダーグラウンドの世界のエネルギーマフィアと言ってもいいぐらい現実社会に精通されています。経済産業省で石油マフィアの立場をやっていた方とは面識があるのですが、表の世界の住人でもかなりの裏事情を知っていらっしゃることに驚愕したことがあります。ましてや猫組長は本当のことを誰よりも知っている日本人なのかなと感じたりしています。
 全体的に過激な表現が目立つ文章であり、この時点で抵抗を示す方も多そうな内容ではありますが、その中にも一理あるなと思える内容が多々あります。例えば迷惑行為が数字になる、数字は金になるというような記述。この流れが政治にも進出してきた事は間違いないでしょう。都知事選で2位になった石丸氏や兵庫県の斎藤知事、N国党の立花氏など、強引な取り組みや実態が曖昧な状態のまま実際に躍進し結果を出してしまったケースも多々あり、この流れはおそらく止まらないと思います。
 政治それ自体が、世間的にブームになっているようにも感じます。著名な影響力の強い方でもSNS上で周囲に影響されて政治批判にのめり込んでしまう、そんな姿を少なからず目にします。岸田前総理や石破総理を痛烈に批判する本書ですが、このような声は若者が多く利用する匿名系のSNSでは多くみられて、本書内の記述のような過激すぎる内容さえ当然のごとく語られています。そして著者のような方が、それを扇動している感も否めません。それこそ自身が『軽薄な破壊者』を上手に利用している人間でもあり、即ちこの流れは止まらないという証左である、という見方もできます。
 政治的な混迷が深まっている時代において、如何に世間の流れを正しく読むかが難しくなっていますが、様々な主義主張に目を通し、客観的に状況を見極めていく能力が、今後より強く求められるのかもしれません。ちょっと裏読みをすることに挑戦すると本書はより楽しく読めるようにも思いますので、ぜひ挑戦してみていただければと思います。
                      =以上=

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舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長
1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。
2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了)
著書に『生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『未来から考える新しい生き方』(2011年 海竜社)、『舩井幸雄が一番伝えたかった事』(2013年きれい・ねっと)、『チェンジ・マネー』(はせくらみゆき共著 2014年 きれい・ねっと)、『いのちの革命』(柴田久美子共著 2014年 きれい・ねっと)、『SAKIGAKE 新時代の扉を開く』(佐野浩一共著 2014年 きれい・ねっと)、『聖なる約束』(赤塚高仁共著 2014年 きれい・ねっと)、『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(朝倉慶共著 2014年11月 ビジネス社)、『智徳主義【まろUP!】で《日本経済の底上げ》は可能』(竹田和平、小川雅弘共著 2015年 ヒカルランド)、『日月神示的な生き方 大調和の「ミロクの世」を創る』(中矢伸一共著 2016年 きれい・ねっと)、『聖なる約束3 黙示を観る旅』(赤塚高仁共著 2016年 きれい・ねっと)、『お金は5次元の生き物です!』(はせくらみゆき共著 2016年 ヒカルランド)がある。
佐野 浩一(さの こういち)
株式会社本物研究所 代表取締役社長
株式会社51コラボレーションズ 代表取締役会長
公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事
ライフカラーカウンセラー認定協会 代表
1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。
著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる 自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた船井幸雄のすべて』(成甲書房)、船井幸雄との共著『本物の法則』(ビジネス社)、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)がある。
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