トップが語る、「いま、伝えたいこと」

このページでは、舩井幸雄の遺志を引き継ぐ舩井勝仁と佐野浩一が、“新舩井流”をめざし、皆様に「いま、伝えたいこと」を毎週交互に語っていきます。
毎週月曜日定期更新
2023年2月10日
安倍晋三回顧録 (※舩井勝仁執筆)

 相場はどうも不思議な安定感の中にいるようです。ここ数日だけの動きですが、日欧の株式相場は上がりたい気配を漂わせるのですが、肝心要のアメリカの市場がどうも先行きを信じられなくて腰砕けになってしまいます。だから、日欧やその他の国の相場ももう一つ上がりきらないのです。そろそろさすがのFRBの利上げも今年中には打ち止めになり、来年になったらさすがに利下げ局面に移行するだろうという思惑が織り込まれようとするのですが、どうもアメリカはそれに確信を持てずに右往左往しているという状態です。
 それに伴って、為替相場も方向性がはっきりしません。人によって見方が完全に分かれるようになってきて、110円台前半の円高を予想する人もいれば、140円前後の円安になると確信している人もいて、個人的には日本経済にとっては現在の130円を少し上回るぐらいの水準で落ち着けばいいのになあと思っていますが、さっぱり予想がつかない状況です。これで、実際に為替で業績が大きく変動する立場の企業経営者は大変だろうなあと思うのですが、どうなっても大丈夫なように準備をして開き直るしかないのかもしれません。

 ただ、債券の金利が十分に高くなってきたので、年金などの大きな機関投資家がポートフォリオを株式から債券に移行させていくのではないかという見方にはうなずけるものがあります。上記のアメリカ市場の動きも、まだ債券市場がそれほど大きくなっていない日欧に比べて、かなりのボリュームを受け入れる余地を持っているアメリカでは、その動きに対する警戒感が株式相場の動きを低調なものにしている可能性はあるのかなとは感じます。
 中露などは外貨準備に米ドルではなく金(ゴールド)を買う動きを強めているという報道がなされていますが、その割にはいまのところ金価格の動きもおとなしいものに収まっている感じがします。
 日本の市場は今週ぐらいまで、ちょうど企業の決算発表の時期と重なっていますので、好業績銘柄を買う動きに終始するのかなという感じで見ています。いろいろな投資手法があっていいと思いますが、今年は相場も比較的安定している年になるような気がするので、あまり激しいことは考えずにマクロなトレンドを感じながらの長期投資のスタンスで臨むのが、心が安らかでいられるということを含めて一番いいような気がしています。
 相場にはまったく興味がないという方も、こういう時が一番心安らかに相場を見ていられるタイミングなので、どちらかと言えば個別株を物色するというよりは、インデックスに連動してなるべくコストの安い投資信託の購入を検討するなどされてはどうかなと思います。

 発売されたばかりの「安倍晋三回顧録」(中央公論)を読ませていただきました。昨年の参議院選挙の応援演説中に銃撃されて亡くなった安倍晋三総理に読売新聞の記者のお二人が総理退任後に18回36時間にわたって行っていたインタビューをまとめたものです。日本の宰相はあまり回顧録を残さないし、安倍総理もご存命中はいろいろと差しさわりがあるので、出版するのは止めていたそうですが、貴重な歴史の証言として夫人の了解を取った上での出版だったようです。
 個人的なことですが、2014年2月の大雪の日に行わせていただいた父の社葬の折には、内閣総理大臣安倍晋三として弔電をお送りいただいたことが忘れられません。そんなに深いつながりがあったわけではありませんが、気配りを各方面に怠らずにやられていた総理だからこそ実現した弔電だったと感謝しています。
 回顧録の中には、あの大雪が政府が地方の要請を受ける前に災害援助に乗り出すきっかけになったというインタビューがありましたが、本当に日本のトップの政治家として歴代最長の任に当たられた重責はいかばかりだったのか垣間見られる内容になっています。

 すでにいろいろな識者が論評を出されていますが、やはり一番面白く読めたのは外交関係のところだったと思います。安倍総理があれだけの長期政権を担われたことで、日本の国際的なポジションは確実に高く評価されていたのであろうことが感じられます。各国の元首であろうといえどもやはり人間ですので、人間臭さが存分に感じられる総理のキャラクターが信頼される基礎にあったことがよくわかります。暗殺がきっかけになって噴出した統一教会の問題もいつの間にか下火になってきた感があります。安倍総理の在任中もいろいろな問題が取りざたされましたが、どう乗り切られたのかの臨場感が伝わってきたのが、とても参考になりました。
 私は、やはり経済という面では大きな功績があった総理だったなと思います。大きなトレンドで見ると日本の株価も日経平均が2万7千円台後半で推移していますが、安倍内閣以前にはこの数字はとても考えられないレベルでした。経営者マインドでみても、デフレに対応するための後ろ向きのものばかりでしたが、悪い流れだという人もいますが、インフレの心配をしなければならないレベルにまで来たのは事実です。経営者がやるべきことをやらなければいけない時代になってきたように感じます。
 経済人としては、政治のせいにはできない状況になったことにマクロには感謝して、改めて安倍晋三元内閣総理大臣が日本の国益のために果たされた大きな功績に感謝の念を捧げたいと思います。
                         =以上=

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舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長
1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。
2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了)
著書に『生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『未来から考える新しい生き方』(2011年 海竜社)、『舩井幸雄が一番伝えたかった事』(2013年きれい・ねっと)、『チェンジ・マネー』(はせくらみゆき共著 2014年 きれい・ねっと)、『いのちの革命』(柴田久美子共著 2014年 きれい・ねっと)、『SAKIGAKE 新時代の扉を開く』(佐野浩一共著 2014年 きれい・ねっと)、『聖なる約束』(赤塚高仁共著 2014年 きれい・ねっと)、『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(朝倉慶共著 2014年11月 ビジネス社)、『智徳主義【まろUP!】で《日本経済の底上げ》は可能』(竹田和平、小川雅弘共著 2015年 ヒカルランド)、『日月神示的な生き方 大調和の「ミロクの世」を創る』(中矢伸一共著 2016年 きれい・ねっと)、『聖なる約束3 黙示を観る旅』(赤塚高仁共著 2016年 きれい・ねっと)、『お金は5次元の生き物です!』(はせくらみゆき共著 2016年 ヒカルランド)がある。
佐野 浩一(さの こういち)
株式会社本物研究所 代表取締役社長
株式会社51コラボレーションズ 代表取締役会長
公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事
ライフカラーカウンセラー認定協会 代表
1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。
著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる 自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた船井幸雄のすべて』(成甲書房)、船井幸雄との共著『本物の法則』(ビジネス社)、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)がある。
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