ヤスのちょっとスピリチュアルな世界情勢予測
このページは、社会分析アナリストで著述家のヤス先生こと高島康司さんによるコラムページです。
アメリカ在住経験もあることから、アメリカ文化を知り、英語を自由に使いこなせるのが強みでもあるヤス先生は、世界中の情報を積極的に収集し、バランスのとれた分析、予測をされています。
スピリチュアルなことも上手く取り入れる柔軟な感性で、ヤス先生が混迷する今後の日本、そして世界の情勢を予測していきます。
トランプ政権の実態と予想されるガザ戦争の最終解決策、そしてそれがもたらしている中東の情勢は今後、どうなるだろうか。
次期トランプ政権の閣僚の任命が進むにつれ、この政権の実態について次第に見えてきた。たしかに、「ディープ・ステート」を排除するというトランプの公約の通り、「ネオコン」を中心とした「ディープ・ステート」の人脈はトランプ政権から排除されているように見える。しかしながら、「ディープ・ステート」とは異なる別の勢力が大きな勢力を持っている。それらは、次に3つである。
1. キリスト教ナショナリストとシオニスト
2. 地球温暖化否認のエネルギー業者
3. ウォールストリートの金融勢力
この中でも、トランプ政権の外交政策に最も大きな影響力を持つと思われるのが、1.の「キリスト教ナショナリスト」と「シオニスト」の勢力だ。指名された閣僚の多くが「キリスト教ナショナリスト」と「シオニスト」となんらかのつながりがあるので、トランプ政権はこの勢力が作った政権であると言ってもよいかもしれない。その中でも、この熱烈な信奉者であると呼べるのが、次の人々である。
・ピート・ヘグゼス国防長官
・エリーゼ・ステファニック国連大使
・マイク・ハッカビー駐イスラエル米国大使
・スティーブン・ウィトコフ中東特使
ちなみに「シオニスト」とは、ユダヤ人は神によって選ばれた民族だという選民思想を信じ、パレスチナは神がユダヤ人に与えた領土だと主張する人々である。現在のイスラエルの政権与党である「リクード党」、そしてそれと共闘している右派勢力はみな熱烈なシオニストである。日本でもよく知られた勢力なので、あえて詳しい説明は不要だろう。
一方、我々にも馴染みがないのが、「キリスト教ナショナリスト」である。なんとなくイメージはつかめるが、漠然としている。
●「キリスト教ナショナリズム」とはなにか?
「キリスト教ナショナリズム」とは、アメリカ合衆国はキリスト教徒によってキリスト教徒のために建国された国であり、アメリカ社会はキリスト教の倫理に基づいて統治すべきであるという思想である。そのためには、聖書を国家法の根拠とし、宗教指導者を政府の地位に就かせる神権政治を主張する。そして、これを実現するためには、連邦政府に対するすべての権限を大統領に集中させる「統一行政理論」に基づいて、大統領独裁制の導入を求める。強化された大統領の権限によって、神権政治の実現を目指す。
これが「キリスト教ナショナリズム」の基本的な思想だが、この思想運動の基盤になっているのが、キリスト教原理主義の「福音派」である。
「福音派」は聖書の一字一句を疑いなく信じ、神の奇跡を実体験することを強調する教派である。アメリカでは白人労働者層を中心に、8000万人の信者がいる。
そして、「福音派」と「キリスト教ナショナリズム」の特徴は、新約聖書の「ヨハネの黙示録」にあるハルマゲドン預言を堅く信じていることである。これが、彼らの信仰の中核にもなっている。すでに知っているとは思うが、「ヨハネの黙示録」の「ハルマゲドン預言」を確認しておこう。
「福音派」は、「ヨハネの黙示録」に書いてあることがそのまま現実になり、「最後の審判」と「キリストの再臨」が起きる日が来ると信じているのである。「ヨハネの黙示録」には次のようなことが起こると予言されている。
1.ローマ帝国によって滅ぼされたユダヤ人の国、イスラエルが再建され、ユダヤ人が再び集まってくる。
2.イスラエルは強大な国となり、ユダヤ人が神から授かったとされているユーフラテス川からナイル川までの「約束の地」を領土とする。
3.現在イスラム教の聖地である「岩のドーム」と「アルアクサ・モスク」があるエルサレムの「神殿の丘」に、ユダヤ教の神殿が建てられ、イスラム教のモスクと岩のドームは破壊される。
4.すると、反キリスト教の勢力が結集し、イスラエルとの最終戦争が起こる。その際、全世界の指導者や軍隊がイスラエルの「メギドの丘」に集まる。これを「ハルマゲドン」という。
5.最終戦争でイスラエルは一度滅びそうになるが、キリストが天から降臨する。ユダヤ教を信じるユダヤ人は、イエスを救世主と認めてキリスト教に改宗するが、異教徒は焼き殺される。その後、1000年間の至福の時代が来る。
そして、「福音派」は、まさに現実の歴史は「ヨハネの黙示録」にある通りに展開していると信じているのである。
つまり、1948年にイスラエルが建国したが、これで1.が実現した。そして1967年の第三次中東戦争でイスラエルがヨルダン川西岸、ガザ、シナイ半島を周辺国から奪って占領した時点で2.が始まり、イラク戦争でも2.が進み、イスラエルが強大化する方向に向かっている。
そしていま、ガザ戦争で3.のイスラエルへの各国の非難と反発が強まっているので、このままゆくと4.のハルマゲドンに至る。そしてハルマゲドンが起こると、5.の神が降臨し、神が統治する千年王国が姿を現すというのだ。
現実の歴史がまさに「ヨハネの黙示録」通りに進んでいると解釈するのが、「福音派」の特徴だ。
このように、ハルマゲドンを引き起こして神を降臨させ、キリストが支配する神の千年王国を実現することを目指している「福音派」と、選民思想に基づきイスラエルの拡大を主張する「シオニスト」との親和性は非常に強い。神の降臨のための絶対的な条件は、イスラエルの再建と拡大、そしてハルマゲドンが起こることだからである。
そのためには、「福音派」は全力で「シオニスト」を応援する。毎年の「福音派」によるイスラエルへの支援訪問だけではなく、「福音派」の信者をアメリカ軍や国防総省に送り込み、イスラエルを支援して「ヨハネの黙示録」の予言が実現できる環境を整える支援もしている。
「福音派」にも、穏健な派閥や過激な派閥などいろいろ存在するが、全米でなんと8000万人も信者がいると考えられている。そして、こうした「福音派」を最大の支持基盤とした政治運動こそ、「キリスト教ナショナリズム」である。「キリスト教ナショナリズム」と「シオニスト」との親和性は強力である。
●国防長官に指名されたピート・ヘグゼス
こうした「キリスト教ナショナリズム」のなんらかの影響下にあるトランプ政権の閣僚は多い。しかしなかでも、国防長官に指名されたピート・ヘグゼスの経歴が群を抜いている。彼自身が「キリスト教ナショナリスト」であると見て間違いないようだ。
ピート・ヘグゼスは、元フォックス・ニュースの司会者である。ヘグゼスは陸軍州兵の将校を務めたが、連邦政府最大の機関である国防総省の運営に役立てられるような大規模組織運営の経験はない。
ヘグゼスは、主にミレニアル世代の超保守派男性で構成されるグループ、「テオブロス」と強いつながりがある。「テオブロス」のメンバーの多くは、自分たちを「キリスト教ナショナリスト」であるとと誇らしげに主張している。彼らはアメリカは聖書の法に従うべきという考えを共有している。
またヘグゼスは、ダグ・ウィルソンという人物に精神的な影響を強く受けたと証言している。ウィルソンは典型的な「キリスト教ナショナリスト」で、「テオブロス」の支持者でもある。彼は、キリスト教徒は中世の十字軍のように、自分たちが支配する領土を拡大するよう召されていると信じている。なぜなら、これこそ、地上に神の王国を築くことであるからだという。
またウィルソンは、宗教教育と聖書に重点を置く私立のK-12学校の全国ネットワークである「Association of Classical Christian Schools」の創設者でもある。ヘグセスもこの学校ネットワークと強いつながりがあることはよく知られている。
このように、次期国防長官に指名されたピート・ヘグセスという人物は、彼自身が「キリスト教ナショナリスト」であり、また熱烈な「シオニスト」でもある。ヘグセスの胸にはエルサレム十字架のタトゥーが刻まれている。これは「キリスト教ナショナリスト」のシンボルであるとともに、「シオニスト」も象徴しているとされている。
●イスラムに対する憎悪とガザ戦争の究極の和平案
次期トランプ政権に指名された閣僚や高官には、国防長官に指名されたピート・ヘグセスと同じように、「キリスト教ナショナリスト」や「シオニスト」の組織との関係が強い人々が多い。また、「福音派」の信者も多くいる。「ディープ・ステート」の人脈が排除された代わりに、「福音派」を主体にした「キリスト教ナショナリスト」と「シオニスト」の勢力が、政権を占めているということだ。
こうした勢力のもうひとつの特徴は、イスラムを悪魔としてとらえ、それに対する強烈な憎悪である。「福音派」や「キリスト教ナショナリスト」は世界を神と悪魔の二元的な対立として見ており、イスラムは悪魔の象徴なのである。イスラムの撲滅こそ、彼らの密かな願望である。
では、こうした極端な親イスラエルでイスラムを悪魔化している勢力の提示するガザ戦争に対する和平案とはどのようなものなのだろうか?
それは、一言で言えば、ガザとヨルダン川西岸地域からすべてのパレスチナ人を追い出し、パレスチナ全土をイスラエルに完全に統合してしまうことである。
そして、野心的な次の3つの計画を実現し、イスラエルが中東の経済大国として絶対的な覇権を握る目標を達成する。
1. 東地中海パイプライン
2. ベングリオン運河
3. インド・中東・欧州経済回廊(IMEC)
●すべての中東諸国は敵になるイスラエル
すでにイスラエルは、トランプ政権のこのような動きと連動してネタニアフ政権の閣僚の一人が、パレスチナのヨルダン川西岸地域をイスラエルに統合する、と発言をしている。ネタニアフ政権にもこのような動きがある可能性は高い。
だが、こうした極端な和平案が中東諸国に受け入れられるわけがない。すでに、これを予期した動きも見られる。まず、トルコはイスラエルと国交を断絶する方向に動いている。また、イランとサウジアラビアの軍首脳の会談が行われ、紅海での合同軍事演習の実施が決まった。これまではイランが中東諸国の共通の敵であったが、それが根本的に変化した。イスラエルが共通の敵になっている。
このように見ると、大きな混乱はこれからやってくることになる。
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社会分析アナリスト、著述家、コンサルタント。
異言語コミュニケーションのセミナーを主宰。ビジネス書、ならびに語学書を多数発表。実践的英語力が身につく書籍として好評を得ている。現在ブログ「ヤスの備忘録 歴史と予知、哲学のあいだ」を運営。さまざまなシンクタンクの予測情報のみならず、予言などのイレギュラーな方法などにも注目し、社会変動のタイムスケジュールを解析。その分析力は他に類を見ない。
著書は、『「支配−被支配の従来型経済システム」の完全放棄で 日本はこう変わる』(2011年1月 ヒカルランド刊)、『コルマンインデックス後 私たちの運命を決める 近未来サイクル』
(2012年2月 徳間書店刊)、『日本、残された方向と選択』
(2013年3月 ヴォイス刊)他多数。
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