ヤスのちょっとスピリチュアルな世界情勢予測
このページは、社会分析アナリストで著述家のヤス先生こと高島康司さんによるコラムページです。
アメリカ在住経験もあることから、アメリカ文化を知り、英語を自由に使いこなせるのが強みでもあるヤス先生は、世界中の情報を積極的に収集し、バランスのとれた分析、予測をされています。
スピリチュアルなことも上手く取り入れる柔軟な感性で、ヤス先生が混迷する今後の日本、そして世界の情勢を予測していきます。
12月になってトランプ政権の外交政策の基本方針を定めた「国家安全保障戦略(NSS)」が発表になった。これは、アメリカの国防戦略である「国家国防戦(NDS)」の前提として機能するもので、米軍の世界展開にも大きな影響を与えることになる。もちろん、日本にも大きな影響がある。今回は、その内容を詳細に要約する。
●アメリカの覇権の放棄と多極化容認
新しく発表された「国家安全保障戦略(NSS)」の内容は、バイデン政権までの既存のアメリカの外交政策を大きく変更する内容である。これは、アメリカの世界覇権の維持を外交政策の目標から明確に排除したことが特徴だ。そして、多極化した世界秩序を容認する方向性を明確にしている。実際の文章を引用しよう。
「冷戦終結後、米国の外交政策エリートたちは、全世界に対する恒久的な米国の支配こそがわが国の最善の利益であると自らを納得させた。しかし他国の事情がわが国の関心事となるのは、その活動がわが国の利益を直接脅かす場合に限られる。
我々のエリート層は、国民が国益との関連性を認めない地球規模の負担を、アメリカが永遠に背負い続ける意思があるという点を著しく誤算した。彼らは、巨大な福祉・規制・行政国家と、巨大な軍事・外交・諜報・対外援助複合体を同時に資金面で支えるアメリカの能力を過大評価したのである。
彼らはグローバリズムと所謂「自由貿易」に、極めて誤った破壊的な賭けをした。その結果、アメリカの経済的・軍事的優位性の基盤である中産階級と産業基盤そのものが空洞化した。同盟国やパートナー国が防衛コストをアメリカ国民に転嫁することを許し、時には我々を彼らの利益には重要だが我々にとっては周辺的あるいは無関係な紛争や論争に巻き込むことも許した」
このように、「全世界に対する恒久的な米国の支配」、つまり世界覇権の維持こそがアメリカを過剰に世界に関与させ、逆に国力を弱体化させた最大の原因だとして米国覇権の放棄を明確にする。
では、世界覇権の維持に代わる方針はなにか? その根幹となる理念は「アメリカ第一」の具体化だ。これは、米国の安全、富、国力を回復・強化することを唯一の目的とする原則だ。そしてこの原則に基づき、強さこそが最良かつ最も確実な抑止力であり、平和を実現するための手段であると断言する。これは、軍事力への巨額投資(1兆ドル)と、同盟国への防衛費増額要求(NATOをGDP比5%へ)という具体的な行動に結びついている。
●覇権の放棄と多極化の容認
そして、こうした基本原則のもとで重要になるのは、非干渉主義と他国の主権の重視という方針だ。他国の内政への介入には極めて高い基準を設定すべきだとし、「国家建設」という過去の誤った政策を明確に放棄する姿勢を見せる。
世界の基本的な政治単位は国家であり、すべての国家が自国の利益と主権を優先することは正当であるという、国際関係における現実主義的な立場を強く取る。これはまさに、米国覇権の放棄と多極化容認の方向性だ。
そのような多極化の方向性を容認した上で、軍事同盟から貿易関係に至るまで、他国からの「公平な扱い」を主張し、フリーライダー行為や貿易不均衡を一切許容しない。
米国の政策は「成長重視」ではなく「労働者重視」であり、米国の労働者を最優先する。これに基づき、エネルギー生産の解放と歴史的な関税措置により、国内の重要産業を保護し、経済的な独立を取り戻したと主張する。
●アメリカの生存圏、西半球
しかし、トランプのアメリカがすべての国民国家の主権を平等に認め、多極化の方向性を完全に容認したかといえば、まったくそうではない。アメリカは、西半球を自らの生存圏として定め、このエリアにおいては中国やロシアなど他国の影響は完全に排除し、親米ではない政権の存在も認めないとしている。ちなみに西半球とは、南北アメリカ、中南米、そしてカリブ海である。以下のようにある。
「長年放置されてきた西半球において、米国はモンロー主義を再確認し、その実施を通じて米国の優位性を回復するとともに、自国本土及び地域内の重要地域へのアクセスを保護する。我々は、非西半球の競争相手が、我々の西半球に軍隊やその他の脅威となる能力を配置したり、戦略的に重要な資産を所有・支配したりする能力を否定する。このモンロー主義への「トランプ補則」は、米国の安全保障上の利益と一致する、米国パワーと優先事項の常識的かつ強力な回復である」
この「モンロー主義」とは、西半球をアメリカの国益が最優先されるエリアとし、このエリアには他国の介入は全面的に排除するとしている。これを見ると、トランプは反米政権のベネズエラのマドュロ政権を転覆して、親米の政権に置き換えるために、地上軍を派遣して戦争を引き起こす可能性も十分にあることが分かる。またトランプは、SNSに西半球のすべての国の政権が麻薬の輸出などに関与していたら攻撃の対象になるともしている。
トランプ政権は、世界の他の地域では主権国家を認め多極化を容認しながらも、西半球は自らの生存圏としてアメリカのために確保する決意だ。ということでは、これから西半球における国家の主権には制限を設け、アメリカの国益と方針に従わせるというものだ。これは、西半球に関してはアメリカは戦争も辞さないということを意味する。西半球は危険地帯になりつつあると判断して間違いないだろう。
●ロシアと中国は脅威ではない
そして、このような「NSS」の内容で特に注目に値するのはロシアと中国の方針だ。前トランプ政権とバイデン政権の「NSS」では、中国はアメリカの脅威となる潜在的な敵対相手としていたが、その扱いのニュアンスが大きく変わった。
中国との関係は、過去数十年の米国の政策が「根本的に不均衡」な状況を生み出したと認識し、経済・安全保障の両面で競争と再均衡を図る。中国との経済関係を「相互主義と公平性」を優先して再構築し、米国の経済的自立を回復する。これは、歴史的な関税措置を維持し、重要産業を国内に回帰させることで実現する。そして、日本、韓国、オーストラリア、インドなどの同盟国・パートナー国と連携し、世界経済の半分以上を占める勢力で中国の略奪的慣行に対抗するとしている。
つまり、中国を敵ではなく対等な競争相手として認めつつ、中国の拡大が既存の国際ルールを蹂躙するようであれば、同盟国と連携してこれを抑止するとしている。
一方、ロシアとの関係は、主に欧州の安定化という観点から論じられる。欧州内の安定化を図るため、ロシアとの間で戦略的安定の条件を再確立する必要があり、そのために米国の積極的な外交的関与が不可欠だと位置づける。
そして、ウクライナにおける敵対行為の迅速な停止を交渉することが、欧州経済の安定化、戦争の拡大防止、そしてロシアとの戦略的安定の再構築のために、米国の中核的利益であると断言する。これは、ウクライナ紛争を外交的に解決し、欧州での緊張を緩和することを最優先事項とする立場を示す。
このようにロシアに対しては、敵として見るのではなく、ウクライナ戦争を終結し、欧州との関係を安定化するためのアメリカのパートナーとして位置づけている。これはロシアをあからさまな敵として認識し、対抗的な関係を主張していたバイデン政権とは、根本的な方針の転換になる。
●ヨーロッパ
一方、扱いがもっとも厳しくなったのはヨーロッパだ。欧州が「欧州であり続け」、文明的な自信を回復し、規制による窒息状態や失敗した政策(リベラルなイデオロギーの蔓延)を放棄することを望むとして、次のように批判する。
「米国当局者は、欧州の問題を軍事費不足と経済停滞という観点で捉えることに慣れきっている。これには一理あるが、欧州の真の問題はさらに根深い。
大陸ヨーロッパは世界GDPに占めるシェアを低下させている――1990年の25%から現在14%へ――これは創造性と勤勉さを損なう国家間・超国家的な規制に一部起因する。
しかしこの経済的衰退は、文明そのものが消滅するという現実的でより深刻な見通しに影を潜めている。欧州が直面するより大きな課題には、政治的自由と主権を損なう欧州連合やその他の超国家的機関の活動、大陸を変容させ紛争を生む移民政策、言論の自由の検閲と政治的反対勢力の弾圧、急落する出生率、そして国民的アイデンティティと自信の喪失が含まれる。
現在の傾向が続けば、20年以内にこの大陸は様変わりするだろう。したがって、特定の欧州諸国が信頼できる同盟国であり続けるのに十分な経済力と軍事力を維持できるかは、まったく明らかではない。こうした国の多くは現在、現状路線をさらに強化している。我々は欧州が欧州であり続け、文明としての自信を取り戻し、規制による窒息状態という失敗した方針を放棄することを望む」
このように、非常に厳しい批判を展開している。現在のEUを主体にしたリベラルな政権のグローバルな方針を真っ向から否定し、ヨーロッパ各国の伝統を重要視する極右政党の主張を代弁したような内容になっている。
●東アジアと日本
記事が長くなるので、中東とアフリカは省き、日本を中心とする東アジアの外交方針を紹介する。東アジアは「次の世紀の主要な経済的・地政学的戦場」の一つと見なされ、軍事的抑止力と経済的優位性の確保が戦略の双璧をなす。
アメリカは軍事的な優位性を維持することで規律ある経済行動の余地を生み出し、その経済的成功が長期的な抑止力維持に必要な米国の資源増強につながるという好循環を目指す。
そして台湾問題だが、台湾は半導体生産における優位性と戦略的な地理的重要性から、主要な焦点となる。軍事的な優位性を維持することによる紛争の抑止が最優先事項だとしている。
これを実現するために、日本、韓国、オーストラリア、インドなどの同盟国・パートナー国と連携を深める。同盟国には、米軍への港湾アクセス拡大、防衛費増額、侵略抑止能力への投資を強く促し、第一列島線全体での抑止力を強化するとしている。そして、特に日本と韓国に関しては次のようにある。
「トランプ大統領が日本と韓国に対し負担増を強く要求していることを踏まえ、我々はこれらの国々に防衛費の増額を促す必要がある。その焦点は、敵対勢力を抑止し第一列島線を防衛するために必要な能力に置かれるべきだ」
このように、日本と韓国にはさらなる国防費の増額を要求している。
●この新しい方針は意味するもの
これが、今回新たに発表された「国家安全保障戦略(NSS)」の概要だ。この方針を一言で言うと、アメリカは西半休を生存圏として定め、このエリアからは他国の影響力を排除しつつ、世界の他の地域では国家の主権と権利を認め、多極型の世界秩序を容認する方向だ。しかし日本や韓国に対しては、既存の秩序の安定と維持を担うため、一層の軍事負担を要求するという構図になっている。
またこの方針の文面から明らかになことは、トランプ政権は中国と戦争をする用意はまったくないということだ。台湾の現状維持は表明しつつも、台湾で軍事的な緊張が高まれば、トランプは中国とディールを結び、台湾に対する中国の権利を一部認めてしまうかもしれない。
さらにこの文書では、アメリカがNATOへの関与を減らし、ヨーロッパから基本的には撤退する方向であることを示している。要するに、アメリカはロシアと協力してヨーロッパを安定させることには協力するが、アメリカが単独でヨーロッパの安全を保障するわけではないということだ。いわばヨーロッパを見捨てたのである。
トランプ政権は今後東アジアにおいても、ヨーロッパと同じ原則を適用するかもしれない。つまり、中国と協力して東アジアを安定させるという方向性だ。そのときにはアメリカは中国とディールを結び、アメリカは軍事的には撤退するかもしれない。そのとき、日本は自立を迫られるだろう。そのとき日本はどうするのだろうか? 注目だ。
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●「ヤスの勉強会」第142回のご案内●
「ヤスの勉強会」の第142回を開催します。2026年が始まりました。どうも大変な年になるようです。トランプ政権はレイムダック化して機能不全に追い込まれ、日本の高市政権も日本を不安定化させる可能性があります。いつものように、入手可能なあらゆる情報を駆使して徹底して予測します。
※録画ビデオの配信
コロナのパンデミックは収まっているが、やはり大人数での勉強会の開催には用心が必要だ。今月の勉強会も、ダウンロードして見ることのできる録画ビデオでの配信となる。ご了承いただきたい。
【主な内容】
・日本のこれから、いったいどうなるのか?
・レイムダック化するトランプ
・2026年に起こる経済危機の予兆
・変化する中国と世界覇権
・変化するBRICSの国際秩序
・テック・ライトの最終計画とは?
・我々の意識の進化
など。
よろしかったらぜひご参加ください。
日時:1月31日、土曜日の夜までにビデオを配信
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社会分析アナリスト、著述家、コンサルタント。
異言語コミュニケーションのセミナーを主宰。ビジネス書、ならびに語学書を多数発表。実践的英語力が身につく書籍として好評を得ている。現在ブログ「ヤスの備忘録 歴史と予知、哲学のあいだ」を運営。さまざまなシンクタンクの予測情報のみならず、予言などのイレギュラーな方法などにも注目し、社会変動のタイムスケジュールを解析。その分析力は他に類を見ない。
著書は、『「支配−被支配の従来型経済システム」の完全放棄で 日本はこう変わる』(2011年1月 ヒカルランド刊)、『コルマンインデックス後 私たちの運命を決める 近未来サイクル』
(2012年2月 徳間書店刊)、『日本、残された方向と選択』
(2013年3月 ヴォイス刊)他多数。
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