トップが語る、「いま、伝えたいこと」

　自分と対話すると、自分自身の役割や使命が分ります。たとえば、３０歳までの私自身を振り返ってみます。私は、昭和８年１月１０日大阪府下の普通の農家の長男として生まれました。戦時中で人手がなかったので、小学校３年生くらいの頃から農業を手伝い、大学も農学部に進みました。大学を卒業する頃は、農業人口が急減しているときでしたし、ちょうど就職難の時代でした。たとえば私の出た京大でも大学を卒業する３月の時点で就職が決まっている人は３割くらいしかいませんでした。そのため、経営コンサルタントの道に進みました。また、２０代後半に父を亡くし、妻を亡くし、それらのことがきっかけで世の中の仕組みやシステムに興味を持つようになりました。
　考えてみるとまず、昭和８年という年ですが、昭和６年の満州事変に始まって、昭和１２年のシナ事変、大東亜戦争（第２次世界大戦）が昭和１６年から始まったので、戦争まっただなかの激動の時代に生まれてきたといえます。当時、『農は国のもと』といいましたが、そのころまでは日本人の８割以上は農業を営んで生計をたてていました。
　しかし、当時の日本には封建制度、地主・小作制度がありました。自作農は自分の土地を耕しているからいいのですが、小作農は地主から土地を借りてそこで耕作をし、その代わりに収入の半分くらいを借り賃として地主に納めなくてはならなかったのです。　地主は、土地を持っているというだけで、苦労もなく豊かな生活ができる。その上、いまの社会とは違って、経済外の身分的な制約・・『経済外強制』というものが地主・小作人の間にもありました。ある人は生まれながらに裕福で、ある人は貧しい生活で、しかも自分の努力などとは関係なく、その生まれたところによって一生の暮しを決められる。そういった封建制の理不尽さというのも農村にいたから痛感しました。そして、そういったことから大学では農業経済学を専攻したのです。私の京大の卒論は、『経済外強制と封建制』というテーマでした。卒業の頃はとても就職難の時期でしたが、そのおかげで自分の力で生きていこうと思い、経営コンサルタントの道を選ぶことになったのです。高校３年生の時に頭が禿げたのもショックを受けましたが、そのおかげで『人の欠点を指摘してはいけない』ということに気づき、２０才くらいからは一切、人の欠点を指摘しなくなりました。また、若くして禿げたおかげで、経営コンサルタントの仕事もうまくいったように思います。また若くして父を亡くし、ついで妻を亡くしたことにより、死後の世界や魂など世の中の仕組みや人のあり方に興味を持ち、真剣に勉強するようになりました。
　このように過去を一々振り返ると、すべてが多くの根源的なことを効率よく学ぶための出来事であったようだということです。小学校３年生くらいから働きづめで、余暇時間などほとんどなく、勉強したいことが常に山のようにありました。そこで根元的なことから学ぶことをしたのですが、いままでふり返りますと、根元的なこと以外には時間をまったく割けなかったようです。その上で知ったのが、『人生に起るすべてのことは自分にとって必要・必然・ベストなのだ』ということと、『なにごとにも感謝して、ありがとうというようにしよう』そして『人間にとって学び、働き、まとめる(＝ルール化する)ことは大事なことなのだ』といったようなことです。人の足を引っ張ってはいけない、自然の理に従って生きるのがよいということも学びました。これからもいろんなことを学んでいくだろうと思っています。
　ともかく、３０歳までの自分を振り返っただけでも自分がどんな人間かということがよく分ります。しっかり自分を見つめ、自分自身ととことん対話をしたら、自分の使命や役割、自分がどのように生きようと決めて生まれてきたのかなどがよく分ってきます。皆さんも、一度自分の人生を振り返ってみてください。そのために、自分自身と対話をしてみてください。
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