トップが語る、「いま、伝えたいこと」

　先週、月刊『フナイメディア』誌の「トップ対談」を船井本社の熱海オフィスで行いました。
　対談者は小河二郎さん。知る人ぞ知る益田ドライビングスクールの創業者で、現在も代表者をつとめる私の長年の友人です。
　私は、同年輩か、少し年長の方に、心の底から尊敬している経営者が１０人くらいいます。
　その一人が大正１２年生まれの小河二郎さんや、昭和３年生まれの日比孝吉さん（めいらく　会長）、そしてほぼ同年輩のオタフクソースの佐々木３兄弟やイエローハットの鍵山秀三郎さんなどです。これらの人は、みんな親しい人ですが、いつも教えられ会うたびにびっくりさせられます。
　日比さんのことや佐々木さんのことは、最近の『Ｎｉｎｇｅｎ　ｃｌｕｂ』誌に、編集者インタビューとして掲載していますので、ぜひお読みください。
　ところで小河二郎さんとの対談の司会をしてくれたのは月刊『フナイメディア』の林彩子さんですが、彼女が対談途中で感動して泣き出したのには、びっくりしました。
　それは小河さんの生きざま、益田ドライビングスクールなどの実績を知って涙が止まらなくなったのだ・・・と思います。
　益田市というのは島根県西部にある人口６万人弱の町。不便なところです。松江から特急で２時間半もかかります。
　ここに小河さんが創り経営する益田ドライビングスクールがあるのですが、これは運転免許を取るための自動車学校です。ここで、ここ１０年くらい毎年約６０００人の人が学び免許を得ています。これはびっくりする数字です。全国の自動車教習所の年間平均卒業者数は１０００人くらいで、全国一のところでも１万人に達しない現状からみると驚異的なことです。
　この益田ドライビングスクールの生徒は全国から集まるのです。そしてたった２週間で若者が生まれ変るのです。
　去年ＰＨＰ研究所から『全国から人が集まる不思議な自動車教習所』という小河二郎さんの著書が出ましたが、本の帯にはつぎのように書かれています。

運転免許を取りにいっただけなのに、笑顔で挨拶し、すすんで掃除をし、整理整頓もできるようになった！
なぜ？　わが子に一体何があったの？

・・・帰ってきた子どもに驚く親たち。
茶髪にピアスの現代っ子を、礼儀正しくボランティア精神に富んだ若者に変えてしまう「Ｍマジック」とは何か？

　その本のはじめに「序に代えて」という題名で、鍵山秀三郎さんが、つぎのような文章を書いています。

序に代えて――ＭＤＳを友だちに紹介したい！

「おはようございます」
「こんにちは」
　益田ドライビングスクール（ＭＤＳ）に入校した教習生に、明るい挨拶で迎えられてびっくりし、目を瞠る（みは）る一瞬です。
　最初は伏し目がちで挨拶もできなかった教習生が、途中から人が変わったように笑顔で挨拶を交わせるようになれるのは、ＭＤＳ全体に満ちている、優れた社風によるものです。数日前に入校したときには、相手の顔を見て話すことさえできなかった教習生を、見事に変身させていくインストラクター（教習指導員）の方々の、惜しみなく注がれる努力の賜物であります。
　企業には、人を幸せにしつつ成長するものと、人を不幸せにしつつ膨張していくものとがあります。ＭＤＳは、人を幸せにしつつ伸びつづける企業の代表であり、チャンピオンであります。
「ＭＤＳを友だちに紹介したい！」
　神奈川県からＭＤＳに入校し、教習のすべてを修了する前に、この「宣言」をしたのは、弊社役員の娘です。
　父親からＭＤＳを勧められたときは、遠隔地であることから難色を示していた娘さんが、ＭＤＳの人間教育を主とした講習に魅せられたのでした。運転の知識と技術を習得しながら、人間としての成長への道を拓（ひら）いてもらえたことに喜びを抱いたのです。
「満足したお客様は、最良の販売員」とは、まさにこのことでした。
　日本には数多くの自動車教習所が存在するなかにあって、知識や技術と同じく人間教育を重視し実践している自動車教習所は、ＭＤＳを除いて他に見ることはありません。しかもその教育は、教習生にとって窮屈であったり制約を感じるものではなく、しぜんで楽しく体得できるところがＭＤＳの身上（しんじょう）でありましょう。
　運転の技術と資格のみを取得するつもりで入校した人たちは、求めていた資格だけでなく、より大きく価値ある宝物を授けられて、生涯、失うことのない力となりましょう。
　他に類のない、優れた「人間教育」を行なうには、教育に当たるインストラクター自身の豊かな人間性と高い人格が求められます。この前人未踏の領域をＭＤＳにて創りあげるために注ぎ込まれた小河二郎会長のご努力に敬意を表します。また、小河二郎会長の期待に応えられたＭＤＳの社員の方々にも敬意を表します
　本書が、人としてあるべき道を示してくれることを確信します。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　２００５年８月２１日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　株式会社イエローハット
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　鍵山秀三郎（抜粋ここまで）

　ぜひ本書をお読みください。経営のヒントが山ほどあります。それとともに月刊『フナイメディア』の私との対談を楽しみにしていてください。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＝以上＝