トップが語る、「いま、伝えたいこと」

　アップルの時価総額が2兆ドル（210兆円）を超えました。2年前に1兆ドルを超えたということが話題になっていたそうで、2年間で2倍になって105兆円分の新たな価値を生み出したことになります。ちなみに日本で一番時価総額が高い企業がトヨタ自動車で約23兆円。自動車企業としての規模がはるかに小さなテスラが40兆円近くの価値がありますので、アメリカのハイテク企業に資金が集中していることが良く分かる数字です。
　さらに、中国企業の株価も高くなっています。上海の株価指数は3,300〜3,500ぐらいで推移していて、武漢ショックの1月には2,500程度まで落ち込んだことを考えるとかなりの回復ぶりです。実際に企業業績や経済の統計数字などもはっきり回復してきています。中国経済はもうすぐ崩壊するという兆しを煽る向きもありますが、アフターコロナの世界は中国の一人勝ちで、アメリカの覇権は終焉するという見方も根強くあるようです。
　中国は公共事業などの景気刺激策が本格化してきているようです。鉄鋼の輸入量が先月は3倍になり、日本の鉄鋼大手東京製鉄は10年ぶりに中国向けの輸出を再開したそうです。つい最近まで中国の鉄鋼の生産能力が過剰でそれが輸出ダンピングに回って鉄鋼の価格の下落の原因を作っていたことを考えると、大きな様変わりです。ただ、いまでも日本よりもはるかに長い高速鉄道（新幹線）網が存在するのですが、採算無視でこれをいまから倍増させる計画など、本当の資本主義国ならとてもできないような事業が数多くあるようで、実際に上手く行くかどうかはお手並み拝見というところでしょうか。
　また、金の価格も高騰を続けています。1オンスの価格が2千ドルを超えてきていて、歴史的に高い水準です。いまの金の高騰の原因は、投資商品として見るのではなく、通貨としてとらえられている側面があります。米ドル、ユーロ、円などの先進国の通貨が信用されなくなってきて、ただ未だに金融の完全自由化をしていない人民元が世界通貨になることも難しいので、人民元等の新興国の通貨を代替するものとして金が注目されているようです。ただ、ロシアは外貨準備として金を買っていたのですが、人民元に一部を変える動きがあるということが報道される等、虚々実々の駆け引きが行われているようです。

　最近知り合った遠藤夕幻さんという将来を嘱望された書家がいます。古代文字の研究にも熱心で勉強家の彼を好ましく思い、応援するようになりました。８月は、銀座の松屋デパートの裏の土屋グループのショールームで個展を開くまでになりました。「光の書家」として、各地で講演も頼まれたりして、日本全国の人々を励ます作品を精力的に作り出しています。銀座での個展も「生きる力」というテーマで展示しており、ちょうどこの時世にあった生命力に満ちた書は、多くの人に活力と癒しを与えたようです。とても素敵な曼荼羅アートとの作家さんとのコラボも迫力のある空間になっていました。
　芸術家は本業で独り立ちするのに、どの職種より最も困難な仕事だと感じます。清貧というような生き方も私は否定しませんが、「芸術自体が注目を要求する」という言葉を聞いたことがあります。モジリアニなどの時と違って、死んでから評価されるという時代はもう終わったのは周知の事実です。今は地球のどこにいても、人の心に響くものを生み出せる優れた作り手は、本人の意思さえあれば、必ず見つけてもらえて正当な評価がされると思います。
　夕幻さんともそんな話をしました。彼の芸術家としての経済的なビジョンをざっくばらんに聞いて、「それでは、１枚の書を２００万円で買ってもらえるようになろう」と言いました。しかし、今の彼の書にそれだけの値がつくか、それは厳しいように思います。　　アートだけではなく、商売をしている人に、自社の商品やサービスのセルフ値付けについて相談されることが多いのですが、私は「値下げはもちろん、値上げも本当に難しいよ。気軽に安易にできることではない」という話をします。
　もし値上げをするのなら、値上げ後の価格の３倍くらいの満足度をお客様に与えるくらいのベネフィットがないと、買い手の心は向かないと思います。どのように付加価値をつけて、満足度を高めるか、頭から湯気を出して考える努力と日々の研鑽が、多くの成功者を見てきて、商売の正しいスタンスだと痛感します。
　芸術も、形は違えど客観的に自分の作品を見られるようにならなくてはいけない、情緒的価値だけではなく、機能的価値にもきちんと気持ちが及ぶ、そんな両輪を回す作品を創ることが要求されている時代に来ていると思います。夕幻さんは素直で謙虚なお人柄ですし、彼の周りには素敵なブレーンがたくさんいるので、これからどんどん世に出てくることでしょう。私もしっかり応援していきたいと思います。
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