トップが語る、「いま、伝えたいこと」

このページでは、舩井幸雄の遺志を引き継ぐ舩井勝仁と佐野浩一が、“新舩井流”をめざし、皆様に「いま、伝えたいこと」を毎週交互に語っていきます。
毎週月曜日定期更新
2021年7月12日
サスティナブルとエシカル消費 (※佐野浩一執筆)

 私の自慢のスニーカーを紹介します。
 アディダスの「スタンスミス」。
 なぜ自慢かというと、1つは、1971年に発売され、世界で最も売れたスニーカーとしてギネスにも載っていること。
 1963年、アディダスの創設者であるアドルフ(アディ)・ダスラー氏の息子である、ホルスト・ダスラー氏が、当時活躍していたフランス人テニスプレイヤーのロバート・ハイレット氏と共同でテニスシューズを開発しました。それが、スタンスミスの始まりとなる、ハイレットと呼ばれるシューズです。その後、70年代にアディダスがアメリカのマーケットに進出することになった際、当時活躍していたのが、アメリカ出身のスタン・スミス氏。同氏に名前の使用料等のオファーをし、オッケーが出た結果が、今のスタンスミスという名前の始まりです。
 さて、私の「スタンスミス」。2つ目の自慢は、「ペットボトルなどのプラスチック廃棄物」から作られていることなんです。つまり、サスティナブルなスニーカーだということです。
 アディダスの公式ホームページによると……。

ポリエステルは、その製造過程においてエネルギーや水などの資源を消費するうえ、耐用年数にわたり適切に廃棄・リサイクルをしなければ環境に悪影響を与えます。
これに対し、私たちにはより良い解決策を見つける使命があります。その最初のステップとして、可能なところ全てに、未使用ポリエステルではなくリサイクルポリエステルを使用しています。石油から新しいポリエステルを製造する代わりに、ペットボトルなどのプラスチック廃棄物から抽出したPETをリサイクル。この方法で、環境への負荷を大幅に軽減しながら、同じスタイル、高性能で耐久性のあるプロダクトを開発することができるのです。アディダスのすべてのリサイクル製品は、未使用ポリエステルを使用した製品同様、プロダクトテストにより当社の厳しい品質基準を満たし、有害な化学物質を含まないことを確認しています。


 かつて、サスティナブルな社会づくり、商品づくりに対して、「4R」へのアプローチが肝であるとされてきました。これは、とくにヨーロッパでの取り組みはめちゃくちゃ進んでいます。
Refuse(やめる)
Reduce(減らす)

 ゴミは企業責任であり、すべての生産物を最終処分しなければなりません。そのため、企業はゴミになるものは作らず、売らなくなります。また、ゴミは市民責任で、ゴミの量に応じて処理代を払わなければなりません。そのため、市民がゴミになるものを持ち帰らず、買わなくなります。その結果、野菜や果物や卵などは、スーパーでもバラ売りがあたりまえ。買い物袋を持って買い物に行くのもあたりまえです。
 次は、Reuse(再使用)。たとえば、ペットボトルは使い捨てでなく、何度も再使用が原則。店で回収をして、メーカーが洗浄し中身を詰めて販売します。容器をお店に持って行けば、中身だけ量り売りしてくれるしくみもあるのです。
 これら3つのRでゴミを減らすことが、まず大前提。
 その後にRecycle(リサイクル)となるわけです。
 さらに、アディダス社は、ここに5つめの「R」=リピートを掲げています。

 こうした動きは、環境保全に力を入れるグリーンビジネスの先駆者、米アウトドアウェア・ブランドの「パタゴニア」がいまなお先頭を走られています。いまでこそ、先述したようにリサイクル材で商品を作っている企業も増えましたが、同社は1990年代初期からすでにリサイクル素材を製造しており、ゴミをフリースに変身させた最初のアウトドアウェア会社です。企業側=「作り手」のこうしたアクションは、さらに多くの企業がその担い手となり、どんどん広がっています。私が経営する株式会社本物研究所も、なんとかその背中を見ながら歩んでいきたいと考えている今日この頃です。

 さて、その一方で、私たち「生活者」のアクションも大事です。
 「お買い物は投票」です。
 日本におけるフェアトレードの先駆者、京都の「シサム工房」の水野泰平社長は言います。

「さまざまなフェアトレード商品の背景にあるストーリーを丁寧に伝えていくこと……。それによってお買い物をする人が、作っている人たちのことを考え、選び、それによって、『この買い物にはどんな意味があるのだろう』『環境には大丈夫かな?』と考えを馳せる機会にしていただけたらと思います。お買い物はどんな社会に一票を投じるかということですから、お買い物は投票なんです。そして、「お買い物の力で思いやりに満ちた社会を作る担い手になる」というのが、シサム工房が大切にしてきたビジョン(目的)なんです。」

 以前、熱海でご講演いただいた際に、水野社長はこう話してくださいました。

 生活者としての新たな消費行動「エシカル消費」という考え方が広まっています。「倫理的」「道徳的」といった意味を持つエシカル消費は、多くの生活者にサスティナブルなライフスタイルを提供するのみならず、世界的な関心事である気候変動へ有効な対策ともなります。
 普段身につけている衣料品。洋服などのタグを見れば、なんの素材が使われているのか、どこで製造されたかくらいのことがわかります。しかしその素材がどこから調達され、どんな人が縫製・製造したのか。あるいは、その人がどのような労働環境下で働いているのか……、まではわかりません。
 私たちは長らく、その商品の「背景」を気にせず、「より安価であること」「できれば、高品質であること」に注目してきたように思います。もしかしたら、今身につけている洋服を作っている人は、かなりの低賃金で働かされているかもしれません。素材には環境負荷の大きい原料が使われていたり、あるいは動物保護の観点で社会的に好ましくないものだったり……。そうしたことを背景に、近年では「エシカルファッション」に注目が集まってきました。
 エシカル(ethical)とは「倫理的」「道徳的」、あるいは「法的な定めとは別に、みんなが“正しい”と思うような社会的規範」といった意味を持ちます。すなわちエシカルファッションとは「素材選定・材料調達から製造・流通・販売等に至るまで、人・社会・環境に十分配慮しているファッション」のことを指します。
 近年はファッションに限らず「エシカルフード」「エシカルカフェ」「エシカルイベント」「エシカルウェディング」といった「エシカル〜」が増えていて、そうした「人・社会・地球環境に配慮した倫理的な消費行動」「誰かが犠牲になることのない消費行動」は「エシカル消費」、その消費者は「エシカルコンシューマー」などと呼ばれています。
 エシカル、という考え方自体は、海外から始まってきた経緯もあり、日本におけるエシカル消費の普及はまだまだ進んでいません。でも、「エシカル」に近い考え方はこれまでにも存在していました。
 先述した「フェアトレード」。「公正な貿易の仕組み」を意味する言葉です。現代のグローバル社会では、先進国と開発途上国の間でさまざまな貿易が交わされていますが、なかには開発途上国の小規模農家の人たちなど、十分な賃金を得られずに働いているケースが見受けられます。そうした社会課題の解決に向け、労働者に適切な賃金が払われ、労働環境にも配慮し、その人たちの生活改善を支援する貿易を叶えていくのが、世界的なフェアトレードの考え方です。
 フェアトレードの他にも「オーガニック」「伝統工芸」「地産地消」「エコロジー」といった活動も、エシカル消費の考え方に近いと考えられています。エシカルはいわば、消費行動における新しい「尺度」のことと言えます。

 一般社団法人エシカル協会・代表理事の末吉里花氏は、朝日新聞デジタルでつぎのように伝えていらっしゃいました。
 これはわかりやすい!と思いました。

エシカルとは「エいきょうを シっかりと カんがえル」こと。見えないものを見る想像力を育むことです。また古くからの日本人が大切にしてきた「おたがいさま」、「おかげさま」、「もったいない」といった精神性との 親和性が高く、私たち日本人こそ世界にエシカルのマインドを伝える力を持っています。

 一気にすべてを「エシカル」にできないとしても、まずは1つから、少しでも、「意識」して進めていけたらと思います。日本のよいところ、日本人が大事にしてきたものを思い出しつつ、同じやるなら、「楽しみたい」と思うのです。
                             感謝

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舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長
1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。
2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了)
著書に『生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『未来から考える新しい生き方』(2011年 海竜社)、『舩井幸雄が一番伝えたかった事』(2013年きれい・ねっと)、『チェンジ・マネー』(はせくらみゆき共著 2014年 きれい・ねっと)、『いのちの革命』(柴田久美子共著 2014年 きれい・ねっと)、『SAKIGAKE 新時代の扉を開く』(佐野浩一共著 2014年 きれい・ねっと)、『聖なる約束』(赤塚高仁共著 2014年 きれい・ねっと)、『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(朝倉慶共著 2014年11月 ビジネス社)、『智徳主義【まろUP!】で《日本経済の底上げ》は可能』(竹田和平、小川雅弘共著 2015年 ヒカルランド)、『日月神示的な生き方 大調和の「ミロクの世」を創る』(中矢伸一共著 2016年 きれい・ねっと)、『聖なる約束3 黙示を観る旅』(赤塚高仁共著 2016年 きれい・ねっと)、『お金は5次元の生き物です!』(はせくらみゆき共著 2016年 ヒカルランド)がある。
佐野 浩一(さの こういち)
株式会社本物研究所 代表取締役社長
株式会社51コラボレーションズ 代表取締役会長
公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事
ライフカラーカウンセラー認定協会 代表
1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。
著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる 自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた船井幸雄のすべて』(成甲書房)、船井幸雄との共著『本物の法則』(ビジネス社)、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)がある。
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