トップが語る、「いま、伝えたいこと」
近年、気候変動を始め、私たち人間の行動が環境へ及ぼす影響の深刻化が世界的な課題となっています。廃棄物量の増加や、資源・エネルギー・食料需要増などの懸念も深刻化しており、グローバル規模での経済活動の見直しが求められています。
舩井幸雄もよく伝えていましたが、「モア&モア」を追求する時代はもう終焉を迎えています。「いまだけ、自分だけ、お金だけ」では、ここから先、幸せな社会は創っていけないということです。「未来も、周りの人々も、そしてお金だけでなく別の価値観も大事にする」ことが、喫緊の課題となっています。
そうした社会環境のなか、従来の大量生産・大量消費・大量廃棄のモデルから、モノを長く使い、廃棄を削減していく考え方として、「サーキュラーエコノミー」に注目が集まっています。単なる環境保護活動としての捉え方ではなく、環境への対応と経済的なメリットを両立すると言われるこの概念こそが、「明るい未来づくり」に必要なことだと確信します。
ちなみに、サーキュラーエコノミーを推進する団体として知られ、イギリスに拠点を置くエレン・マッカーサー財団は「サーキュラーエコノミーの3原則」として以下の内容を挙げています。
★廃棄物と汚染を生み出さないデザイン(設計)を行う
★製品と原料を使い続ける
★自然システムを再生する
具体的には、まず製品の生産においては、できる限り再生利用可能な資源を用い、3R(リデュース・リユース・リサイクル)を前提とした設計を行います。一度製品が完成した後も、製品寿命を延ばすメンテナンスを行うとともに、リースやシェアリング、IoTやAIなどの技術活用によるサービス化、カスケード利用(資源の劣化に応じた多段階の活用)などを通じて資源利用効率を高め、製品の長期利用を実現します。また、製品の生産者は自主回収などを通じてリサイクルを推進し、廃棄物の削減を図るとともに、リサイクル資源を有効活用し、新たな資源投入を抑えた製品生産を行います。このように、製品の生産から利用、メンテナンス、リユース、リサイクルに至るまでの全体サイクルが循環的に行われるように当初より設計し、地球規模で天然資源への負荷を軽減していくのが、サーキュラーエコノミーの考え方です。
大胆にまとめると、つぎのようになると思います。
「サーキュラーエコノミー(循環型経済)では、製品の設計段階から製品の回収と原材料の再利用を前提とし、使い終えた製品を廃棄せずに回収します。これまで捨てていたモノを原材料として使うことで、循環させる経済モデルです。」という感じです。
ただ、サーキュラーエコノミーを単純にリデュース(Reduce)、リユース(Reuse)、リサイクル(Recycle)の「3R」の取り組みの延長線上にあるものと考えてはいけないようです。3Rでは、例えばペットボトルなど「リサイクルできるものはする」が、困難なものは廃棄物になります。最初から全てのモノの回収と再利用を前提とし、廃棄物を出さないことを目指している点が3Rとは大きく異なる点です。
こうしたサーキュラーエコノミーの先進的取り組みは世界で広がってきています。
たとえば、アップル社は2021年4月の年次総会で「将来的に全ての製品と包装容器で100%再生可能な素材を使う」という方針を掲げ、アディダスも「2021年中に、製品の60%以上を持続可能な素材で作られたものにする」と発表しました。また、ナイキは、ペットボトルやTシャツなどをリサイクルした再生素材で使用したシューズを発売しています。
そして、そして、日本もめちゃくちゃ頑張っています!
ブリヂストン社は、2050年以降を見据えた環境長期目標に、製品の原材料の100%サステナブルマテリアル化を設定。軽量化や長寿命化で「使用する資源を減らす」、再生ゴムなどで「資源を循環させる」、天然ゴムの生産性向上技術などで「再生可能資源の拡充・多様化」といった3つのアクションを進めています。
ユニクロ社では、2019年8月期の決算発表会で柳井会長が「サステナブルであることはすべてに優先する」と語っっています。回収したユニクロの服から再び服を作る循環型プロジェクト「RE.UNIQLO」をスタートし、2020年秋に自社のダウン商品を再生・再利用した新商品を発売しています。
ミツカングループの「ZENB(ゼンブ)」は、トウモロコシの芯や枝豆のさやなどの素材をまるごと原材料として使うことで廃棄物を減らすブランドです。原材料は残留農業基準を個別に調査しています。エレン・マッカーサー財団が2019年に立ち上げた「フード・イニシアチブ(Cities and Circular Economy For Food)」に日本企業で唯一参画している企業です。
事務機器・光学機器メーカーとして有名なリコー社は、2050年環境目標、2030年環境目標を据えて、3年ごとに環境行動計画を策定しています。製品の小型化や軽量化、リサイクルしやすい製品設計など「製品を作る段階」、消費者が長期使用できる製品の提供など「製品やサービスを利用する段階」、使用済みの製品を回収し、リユース・リサイクルを行う「製品使用後」の3つのステージで、それぞれ資源を効率的に循環させる取り組みを行っています。実は、こうした取り組みを世界に先駆けて1994年から行っているのです。
ただし、こうした先進企業の多くは、自社製品の原材料を再生可能素材とする、あるいは原材料に廃棄物を利用するなど、「自社の事業を循環型にする」ことを目指しています。
これに対し、さらに新しい取り組みがこの日本国内で生まれてきています。
サイクラーズ社が目指しているのは「循環型社会の構築」です。多くの企業からオフィス機器など、これまでなら廃棄物とされていたモノを大量に回収し、それらを修理して中古機器として販売しています。あるいは解体してプラスチックや金属を取り出し、再利用可能な原材料として販売するといった事業に取り組んでいるのです。
一方、中古品であっても買い手がつかない製品や、そもそも修理ができないオフィス機器などもあります。それらの不用品の受け皿となるのが創業約120年の東港金属社です。
もともと金属スクラップのリサイクル事業を手掛けてきた同社には、「自動車をまるごと解体できる」設備をはじめ、プラスチックや金属などを取り出して再生原料とするノウハウがあります。同社を受け皿とすることで、「不用品として回収したものの修理できない」、あるいは「修理して中古品として販売しようにも買い手がつかない」製品をプラスチックや金属の再生原料として生まれ変わらせることができます。
そこに、スマートフォンアプリを活用して、企業間で不用品を売買できる仕組みを提供し、併せて大量の不用品を無料で回収して、それらを修理して販売したり、解体して再生原料として生まれ変わらせて販売したりといったサーキュラーエコノミーのスキームを構築しているのです。まさに、未来の先取りスキームと言えます。
サイクラーズ社の話に戻すと、同社では「ロングテール戦略」を実践している点が注目です。収集した大量の中古オフィス機器などを千葉・富津市の自社倉庫で長期間、保管して「売れる時期が来るまで待つ」のです。例えば、あるホテルからレストランの椅子100脚を引き取ったとします。この場合、修理して長期間、保管しておけば、「レストラン用の椅子5脚セット」といったニーズにも、30セットのニーズにも、1脚だけの「バラ売り」のニーズにも対応できます。ニッチなニーズにも柔軟に対応し、その売上げと販売量を積み重ねることでビジネスとして成り立つようにしているというわけです。創業100年以上の歴史の中で磨いてきた技術を、デジタル技術と掛け合わせて現在の社会課題の解決に役立てる……。サイクラーズ社の事例からは、老舗企業が次なる成長を目指すヒントが見えてきます。
時代は大きく変化してきています。
これらの先進的な企業の取り組みを支えていくのが、私たち「生活者」としての役割と言えるかもしれません。逆に言うと、私たちが企業人として、あるいは生活者として、何を選択し、購買や活用をとおして何を応援していくか……。
双方の意識変革と取り組みが合わさって、「持続可能な社会」が形作られていきます。実に面白い時代になったと思います。私も、一企業人として、このワクワクする時代をどのように生きるのか……。新しい宿題をいただいた気持ちになっています。
感謝
2021.10.18:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】まずは、自分を大切に! (※佐野浩一執筆)
2021.10.11:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】NEW WORLD (※舩井勝仁執筆)
2021.10.04:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】いま、サーキュラーエコノミーが面白い! (※佐野浩一執筆)
舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長 1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。 2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了) 著書に『生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『未来から考える新しい生き方』(2011年 海竜社)、『舩井幸雄が一番伝えたかった事』(2013年きれい・ねっと)、『チェンジ・マネー』(はせくらみゆき共著 2014年 きれい・ねっと)、『いのちの革命』(柴田久美子共著 2014年 きれい・ねっと)、『SAKIGAKE 新時代の扉を開く』(佐野浩一共著 2014年 きれい・ねっと)、『聖なる約束』(赤塚高仁共著 2014年 きれい・ねっと)、『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(朝倉慶共著 2014年11月 ビジネス社)、『智徳主義【まろUP!】で《日本経済の底上げ》は可能』(竹田和平、小川雅弘共著 2015年 ヒカルランド)、『日月神示的な生き方 大調和の「ミロクの世」を創る』(中矢伸一共著 2016年 きれい・ねっと)、『聖なる約束3 黙示を観る旅』(赤塚高仁共著 2016年 きれい・ねっと)、『お金は5次元の生き物です!』(はせくらみゆき共著 2016年 ヒカルランド)がある。 |
佐野 浩一(さの こういち) 株式会社本物研究所 代表取締役社長 株式会社51コラボレーションズ 代表取締役会長 公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事 ライフカラーカウンセラー認定協会 代表 1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。 著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる 自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた船井幸雄のすべて』(成甲書房)、船井幸雄との共著『本物の法則』(ビジネス社)、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)がある。 |