トップが語る、「いま、伝えたいこと」
「Z世代」というのは、厳密な定義はありませんが、1990年代後半から2000年代に生まれた世代を指すといいます。2010年から2020年代に社会に進出する世代。2022年現在では、10代前半から25歳くらいの若者が、その「Z世代」にあてはまります。
この世代は、ほかの世代にない特徴的な価値観を有すると言われています。
最大の特徴は、やはりデジタルネイティブであること。インターネットにつながるデバイスを当たり前に利用しているため、ネットリテラシーが高いことも他の世代とは一線を画す特徴です。また、多様性を認め受け入れるダイバーシティ&インクルージョンを重視する傾向が見られ、新しいテクノロジーへの興味関心が旺盛であることも特徴です。
そんな「Z世代」の若者たちに、最近とても人気なのが、「昭和レトロ」なんだそうです。アナログなもの、スローなもの、ちょっと不便なもの、親や祖父母の世代の匂いがするものに惹かれるというのです。
乱暴な言い方をすると、これだけ何でも速くて、カンタンで、便利な環境にいきなり生まれてきたわけで、その逆のゆっくりで、多少不便でも味わいを感じるものに興味を持つのは、ある意味当たり前かとも思います。モノで溢れかえっているので、ココロを大事にしたいと余計に感じるのでしょう。
一方、ちょうど、占星学的には「風の時代」に入ったとあちこちにコメントが溢れかえっています。「風の時代」は、「風」が目に見えないように、情報や知識など形のないもの、伝達や教育などが重視され、人々は何より「知る」ことを求めていくことになると言われています。これまで以上に、知性・コミュニケーションなど、形のないものが意味を持つようになり、想像力、思考力が重要視されたり、柔軟性が必要になると言われています。そして自分の好きなことや、やりたいことに素直に行動することが大切な時代になるようです。
とはいうものの……、Z世代の若者たちが皆「昭和レトロ」に惹かれるのかというと、きっとそうではないでしょう……。「風の時代」に入ったからと言って、いきなり物質や財を大事にした時代と言われる、先の「土の時代」の文化や考え方、習慣がすべて消えてなくなるわけでもないでしょう……。
そうなんです。
世の中に溢れかえる情報は「極端さ」でもって注目されているということ。トレンドは極端から極端へ向かって繰り返されていくのです。ネクタイやスーツの襟、パンツなどの太い、細い。スカート丈の長い、短い。ラグジュアリーとカジュアル。ファッションだって、この繰り返しで、もっともこのことがよくわかる材料と言えます。
そんな折、ふと、つぎの言葉を目にしたのです。
仁に過ぎれば弱くなる。
義に過ぎれば固くなる。
礼に過ぎれば諂(へつら)いとなる。
智に過ぎれば嘘をつく。
信に過ぎれば損をする。
あの伊達政宗が遺したと言われる「伊達政宗五常訓」です。
これは、論語にある「五常」=「仁・義・礼・智・信」に対するアンチテーゼとも受け止められますし、しなやかに戦国末期から徳川3代までを生き抜いた武将の人生学とも理解できます。
「仁に過ぐれば弱くなる」
→人を思いやる気持ちは大切ですが、度が過ぎると相手のためになりません。何事もいいころ合いがあるということです。
「義に過ぐれば固くなる」
→正しくあることは大切ですが、常にそれを求めるのは単なる堅物であると戒めています。ガチガチの「堅物」では本当の人望は得にくいと考えたのかもしれません。
「礼に過ぐれば諂(へつらい)となる」
→礼儀をわきまえることは大切ですが、これも極端になると相手に媚びているだけになってしまうということです。媚を売る人はなかなか信用されないのは戦国の世も現代も同じかもしれません。
「智に過ぐれば嘘をつく」
→いつの時代も、利口な人ほど得てしてウソや虚言を策するケースがあります。国会答弁などを見ていても感じます。政宗はウソや虚言が命取りになることを実体験から感じ取ったのかもしれません。
「信に過ぐれば損をする」
→人を信用し過ぎると手痛い目に遭うので、注意が必要だと戒めています。
ちなみに、「伊達政宗五常訓」にはこの5つの教えのほかに続きがありました。
「気ながく心穏やかにして、よろずに倹約を用い金を備うべし。
倹約の仕方は不自由を忍ぶにあり、
この世に客に来たと思えば何の苦もなし。
朝夕の食事は、うまからずとも誉めて食うべし。
元来、客の身なれば好き嫌いは申されまい。
今日の行くを送り、子孫兄弟によく挨拶して、
娑婆の御暇(おいとま)申するがよし。」
要約すると次のようになります。
「気持ちを楽にして、心穏やかになりなさい。この世にお客さんとして生まれてきたと思えばよい。人は生まれることではじめてこの世に出て、死ぬことで再び、旅立つ。毎日の食事は粗末でも、この世に客人として招かれているのだから、文句を言ってはいけない。感謝の気持ちが肝要である。間もなく、私はこの世を離れるが、子や孫や兄弟に感謝の声をかけて、旅立つのが幸せである。」
人生を楽しく生きる秘訣……と言ってもよいかもしれません。「お客さんとして生まれてきた」という感覚、これからしばらく味わってみようと思います。
さて、先述した「伊達政宗五常訓」。
私の父から何度も聴かされた「過ぎたるは猶及ばざるが如し」を思い出しました。ご存じ「論語」にある有名な言葉です。何事もほどほどがよいという意味で、中庸の教えの代表格的な存在となっています。
「中庸」とは、もともと儒教の用語ですが、今でも、「偏りのないこと、中正なこと、調和が取れている」という意味で使われています。
ならば、「“どっちつかず”がいいのか?」というと、そういうわけではなさそうです。
「中庸」の考え方として、解釈はいろいろあったり、絶対的な正解もないと言えますが、つぎに挙げる視点は大事にしたいと考えます。
「中庸」という考え方の基本には、「陰陽」があると教わりました。まず、陰陽と聞くと、陰はよくない、陽の方が優れているというイメージがあるかもしれませんが、陰と陽に優劣はありません。表裏一体で欠くことのできないものです。
物事は、大別してこの2つの極に分けられるという考え方です。
天と地、昼と夜、動と静、男性と女性、親と子、膨張と収縮、夏と冬、太陽と月、剛と柔、攻めると守る、などなど。
これらが影響し合って、私たちの世界は刻々と変化をしていくということになります。
ここで大事なことは、「どちらかが全く無い」などということはなく、どちらも常に存在し、必要であり、優劣の問題ではないということです。
つまり、中庸の、偏りがないこととは、まず陰と陽の両極端のどちらかに偏ってはいけないというふうに考えると腑に落ちるかと思います。
昼があれば夜もあるように、膨張(拡大していく)もあれば収縮(縮小を選ぶ)も必要であるということです。また、 最近、とにかく積極的に動いている……という場合は、時には一人でじっくり考えることも必要である……と。そのような感覚で考えればわかりやすいかもしれません。
こんな風に、宇宙にも、地球にも、世の中にも、物質にも、両極端は必ず存在します。だからこそ、どちらも大事にする必要がありますし、どちらかに偏ると心の在り方や物事の捉え方も固まってしまうように思います。もちろん、どちらかに偏っている……と感じることは、すでに「中庸」を意識できているということなのかもしれません。
「不動心」というのも、同じです。「決して乱れぬ心」のことではありません。禅語でいう「不動心」とは、「乱れ続けない心」のことを指します。田坂広志先生によれば、「生身の人間であるかぎり、一瞬、心が大きく揺らぐことがあってもよい。しばし、心が穏やかならぬ状況に陥ってもよい。その直後、心が戻っていくべき場所を知っていること。それこそが不動心である」と。
これもまた「中庸」。
「中庸」って深い……。
だから、人生の大きな目標にしていけるんだなって、感じたのです。
感謝
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舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長 1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。 2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了) 著書に『生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『未来から考える新しい生き方』(2011年 海竜社)、『舩井幸雄が一番伝えたかった事』(2013年きれい・ねっと)、『チェンジ・マネー』(はせくらみゆき共著 2014年 きれい・ねっと)、『いのちの革命』(柴田久美子共著 2014年 きれい・ねっと)、『SAKIGAKE 新時代の扉を開く』(佐野浩一共著 2014年 きれい・ねっと)、『聖なる約束』(赤塚高仁共著 2014年 きれい・ねっと)、『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(朝倉慶共著 2014年11月 ビジネス社)、『智徳主義【まろUP!】で《日本経済の底上げ》は可能』(竹田和平、小川雅弘共著 2015年 ヒカルランド)、『日月神示的な生き方 大調和の「ミロクの世」を創る』(中矢伸一共著 2016年 きれい・ねっと)、『聖なる約束3 黙示を観る旅』(赤塚高仁共著 2016年 きれい・ねっと)、『お金は5次元の生き物です!』(はせくらみゆき共著 2016年 ヒカルランド)がある。 |
佐野 浩一(さの こういち) 株式会社本物研究所 代表取締役社長 株式会社51コラボレーションズ 代表取締役会長 公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事 ライフカラーカウンセラー認定協会 代表 1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。 著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる 自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた船井幸雄のすべて』(成甲書房)、船井幸雄との共著『本物の法則』(ビジネス社)、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)がある。 |