トップが語る、「いま、伝えたいこと」
株式相場はかなり厳しい調整局面を迎えています。いまの関心はどこで底をつけるのかということになるのかもしれません。「落ちてくるナイフはつかむな」という相場の格言があります。どんなに割安になって魅力的な価格になっても、相場の急落時は手を出したらケガをする。ナイフが床に落ちてから、つまり底を打ったことを確認してから投資をするべきだという意味になります。いまは、まだナイフが床に落ちたことを確認できていない状態だと感じます。
アメリカにロビンフッドというオンライン証券会社あります。ちょうど1年ぐらい前にゲームストップという会社の取引を巡ってトラブルを起こしました。高騰していた同社の株を買うことができなくなったことで起きた混乱です。ヘッジファンドが明らかに実際の価値より割高になっていたゲームストップの株式の空売りを仕掛けていたのですが、ロビンフッドの顧客たち(ロビンフッダーと呼ばれています)が買いに向かって高騰し、ヘッジファンドが慌てて買い戻して大きな損失を出したことで話題になりました。
しかし、今度はあまりにも暴騰した同社の株のリスクに備えるために30億ドルの補償金の追加を精算機関から求められたのです。ロビンフッド社は2020年の12月末には2千万人の個人投資家が講座を開設していました。そして、1月に入ると同社のアプリのダウンロード数が1位になりました。コロナ禍で外出できない個人投資がコロナ対策の給付金をそれこそゲーム感覚でゲームストップ社の株式の買いに突っ込み始めたのです。事件が起きた2021年1月28日の朝。なんとかその日の営業を開始するために30億ドルはかき集めたものの、それ以上の高騰を放置することができずにゲームストップ株の買いを制限せざるを得ない事態に追い込ました。
そんな事件があったのをものともせずにロビンフッドは昨年の7月にナスダックに上場を果たしました。大型上場と騒がれて、取引初日の終値で同社の時価総額は3兆2千億円ものバリューになりました。しかし、4四半期連続の赤字決算を発表して、1月27日の終値では9700億円ぐらいに価格を下げています。それでも、野村証券の親会社である野村ホールディングスの時価総額が1兆6千億円であることを考えるとまだまだ割高に思えてしまいますが、ロビンフッダーと同社の上場がアメリカ株の宴を象徴しているのかもしれませんが、同社の動きがアメリカ相場の宴の象徴になっている気がします。
落ちてくるナイフの状態になっているアメリカの株式は、特にナスダック市場の下げがきついのですが、果たしてこのまま日本のバブル崩壊の時のように宴が終わってしまうのでしょうか。私はナイフが床に落ちるにはもう少し時間がかかるかもしれないと思いますが、今回の下げは一端終わりをむかえ、一度は最高値に向かって上昇していく可能性もあると思っています。ナイフが落ちている原因はFRBの利上げ観測です。3月にも利上げを実施することが確実視されていますが、それが0.25%ですむのか、あるいは0.5%になるのかが大きな分かれ目になると思います。
アメリカのインフレは危惧すべきレベルになっていますし、2021年10〜12月期のGDPの速報値は年率換算で6.9%増と景気の過熱を心配しなければいけないレベルになっていますので、大きな利上げが必要という声もあるようです。ただ、あまりにも急激な利上げは相場に大きな混乱をきたすことが予想されるので、大勢は0.25%の利上げを今年3〜4回行うのではないかと見られていて、これは相場にすでに織り込まれています。いまは、もしかしたら想定外の0.5%利上げが実施されるリスクをも織り込む相場になりつつあるのですが、その懸念が外れた時には間違いなく底を打つと思われます。
先週開かれたFOMC(米連邦公開市場委員会)後のパウエル議長の記者会見で、何らかのフォワードガイダンスが出ることをマーケットは期待していたのですが、それを出してしまうと、政策の選択余地が狭まるので何も明らかにされませんでした。そのことで、市場は疑心暗鬼になっているという見方がなされているようです。当面はFOMCの議事要旨の発表を待つことになり、それまではどちらかというと下げ含みの一進一退で市場は進むのかもしれません。
トランプ政権下の4年間はFRBの存在感が感じられずに、それよりも大統領のツイッターで市場が一喜一憂していましたが、バイデン政権になって市場が伝統的にFRBの顔色を窺いながら動いていくようになりました。逆に言うと、相場をされる方はFRBや日銀の動きを見ていればどうなっていくかが大体予想できるようになっているということなので、この辺りのウオッチを怠らないことが大切なのかもしれません。トランプ大統領時代は面白い時代でしたが、そういう意味での宴は終焉しつつあるのかもしれません。ただ、相場は大きく動かした方が儲かる人たちがいることを考えると、このまま一方的に下げることはないのではないかとも感じています。
=以上=
2022.01.24:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】自分を活かす人間学 (※佐野浩一執筆)
2022.01.17:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】立春までの2週間 (※舩井勝仁執筆)
2022.01.10:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】中庸って深い……! (※佐野浩一執筆)
2022.01.03:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】2022年の相場 (※舩井勝仁執筆)
舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長 1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。 2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了) 著書に『生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『未来から考える新しい生き方』(2011年 海竜社)、『舩井幸雄が一番伝えたかった事』(2013年きれい・ねっと)、『チェンジ・マネー』(はせくらみゆき共著 2014年 きれい・ねっと)、『いのちの革命』(柴田久美子共著 2014年 きれい・ねっと)、『SAKIGAKE 新時代の扉を開く』(佐野浩一共著 2014年 きれい・ねっと)、『聖なる約束』(赤塚高仁共著 2014年 きれい・ねっと)、『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(朝倉慶共著 2014年11月 ビジネス社)、『智徳主義【まろUP!】で《日本経済の底上げ》は可能』(竹田和平、小川雅弘共著 2015年 ヒカルランド)、『日月神示的な生き方 大調和の「ミロクの世」を創る』(中矢伸一共著 2016年 きれい・ねっと)、『聖なる約束3 黙示を観る旅』(赤塚高仁共著 2016年 きれい・ねっと)、『お金は5次元の生き物です!』(はせくらみゆき共著 2016年 ヒカルランド)がある。 |
佐野 浩一(さの こういち) 株式会社本物研究所 代表取締役社長 株式会社51コラボレーションズ 代表取締役会長 公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事 ライフカラーカウンセラー認定協会 代表 1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。 著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる 自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた船井幸雄のすべて』(成甲書房)、船井幸雄との共著『本物の法則』(ビジネス社)、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)がある。 |