トップが語る、「いま、伝えたいこと」
いよいよロシアがウクライナに攻撃を開始しました。背景はよく分かりませんが、識者の意見をまとめるとロシアにとって何の意味があるのかよくわからない軍事行為が始まってしまいました。日米欧の経済制裁は初動のウクライナ東部地域の独立をロシアが一方的に認めて平和維持を目的に軍隊を送ると発表したときから迅速に打ち出され、その足並みもそろっていました。ロシアにとって西側からの経済制裁は大きな影響があり、利害得失だけを考えるとプーチン大統領の真意がよくわからないようです。
多分、大きな歴史認識で本来ウクライナはロシアと一帯の存在であり、そこがNATO(北大西洋条約機構)のメンバーとして取り込まれてしまう流れは何があっても容認できないという思いが背景なのかもしれません。ソビエト連邦の復活という大ロシア構想を持っていて、ロシアは世界帝国に返り咲かなければいけないという思いを実現するための動きなのでしょう。それに、アメリカの力が相対的に弱くなってきているいまなら勝てるのではないかという見込みが重なったのかもしれません。しかし、どうも初動をみていると米欧の足並みがそろっているのは計算違いなのではないかと思います。
ただ、バイデン大統領はすでに警告する段階でアメリカはウクライナに軍事侵攻しないと宣言してしまっています。また、ヨーロッパも理屈から言えば、ウクライナは(まだ)NATOのメンバーではないので、ロシアに対抗すべく軍隊を派遣する大義名分がありません。そして、米露や英仏など核兵器を持っている国が直接戦闘状態に入ってしまったときのリスクはとても許容できるものではないので現実的には部隊を派遣するオプションを取ることはあり得ないと思います。そうなると、既成事実を積み上げていってロシアの思惑通りに動く可能性もあるのかもしれません。
原油価格が一時1バレルあたり100ドルを超えるなど世界経済に与える影響は甚大になってきました。市場が気にしているのはウクライナ侵攻にともなう非常事態の出現で3月に確実視されているFRBの短期金利の引き上げ政策がどのようになるのかということです。
一時はいきなり0.5%上げるという見方が有力になってきていましたが、今回の軍事侵攻を受けて、さすがに当初の予定に戻して0.25%ずつの小幅値上げを繰り返していくのではないかという見方が有力になってきているようです。そうなると市場反転のきっかけになるという話しも言われていて、一寸先は闇というか行く末がまったく読めない状況になってきました。
戦争から連想するわけではありませんし、読者の皆さまがこれを読んでくださるときは日付も過ぎてしまっているのですが、先週の土曜日2月26日は1936(昭和11)年に起こった二・二六事件の86周年でした。私は三島由紀夫著「英霊の聲」(河出文庫等)や澤地久枝著「妻たちの二・二六事件」(中公文庫)を読んだことなどをきっかけに事件のことを調べたことが10年ぐらい前にありました。当時の私の力では十分に背景まで理解できたわけではないのですが、政権将校たちが処刑された場所である渋谷の地に二・二六事件慰霊像があり、そこにおまいりに行かせていただいたりしたことがあります。
先週の土曜日まさに2月26日にオンラインではありましたが講演をさせていただける機会があり、テーマを二・二六事件にしてまた勉強をし始めました。10年前には分からなかった陸軍の軍閥同士の争いがその背景にあり、そこには理解するのが不可能なほど対立していた陸軍と海軍の争い等も見え隠れするようです。青年将校たちの意図とは正反対に事件後、青年将校たちと対立していた東条英機に代表されるような陸軍の統制派が軍内部だけではなく政治についても完全に独裁体制をひくきっかになってしまったのですが、この時の教訓はいまこそ活かさなければいけないのではないかと思っています。
ここは父のWebなのでイデオロギー的なテーマは避けようと思いますが、今回色々な本を読んでいて一番感動したものをご紹介したいと思っています。岡山にあるノートルダム清心女子大学の学長や理事長を務められた故・渡辺和子先生の書かれた「心に愛がなければ」(PHP文庫)です。親しくしていただいている世界的な実績がある物理学者の保江邦夫先生は同大学の名誉教授ですが、かなり日本人の学者の枠をはみ出している保江先生のことを守ってくださったのは渡辺先生なのではないかと秘かに思っています。
渡辺先生と言えば大ベストセラーになった「置かれた場所で咲きなさい」(幻冬舎文庫)で有名ですが、二・二六事件で青年将校たちに殺害された渡辺錠太郎陸軍教育総監の次女で、事件の当日自分の眼前でお父さまが虐殺されているのを目撃するという衝撃の体験を持っておられます。「心に愛がなければ」はオリジナルの本が昭和1986(昭和61)年に出版されています。その中に「蝉の声」という短編があります。ちょっと長くなりますが引用させていただきます。読者の皆さまも事件後50年経った時(1986(昭和61)年7月12日(処刑された青年将校たちの命日に開催された仏心会(遺族会)の法要に出席されたときの話)に行われた赦しをじっくり味わっていただければと思います。
(引用開始)
読経の間、目を閉じていると、半世紀という長い歳月が一瞬どこかへ行ってしまって、雪の日の朝になっている。兵士たちの怒号、銃声、目の前にピストルを構えて応戦の用意をして畳に横たわる父、襖を細目にあけて銃身だけのぞかせ、その父に向かって火を吹いた軽機関銃、障子を手荒に引き上げ、土足のまま飛び込んで来た数名の青年将校と兵、切りつけ、とどめを刺して引きあげていくその後姿、そして、血の海の中で、すでにこと切れていた父。
蝉の声が読経の声と競うて聞こえて来る昼下がりというのに、頭の中には、寒い二月の朝の光景が走馬燈のようにめぐっている。「ご焼香を」という声に我に返り、遺族の方々の後に続いて手を合わせる。「どうぞ安らかに、おねむりください」
(中略)
用意された茶菓の会へと席を立って行かれる人々の中には、私の前に来て土下座をして詫びる方もあった。多分その折、襲撃に加わって生き残った兵のお一人だろうか。お手を上げていただきながら、その方の心の“痛み”を思って、私も哀しかった。
寺の境内の墓地に「二十二烈士之墓」というのがあって、十七名処刑の前後に自決、または処刑された人々が合わせて祀られている。
お線香を供え、手を合わせて、言葉もなく振り返ると、そこに、高橋、安田両少尉(舩井注:渡辺錠太郎邸を襲撃した青年将校)のご令弟お二人が深々と頭をさげ、涙を流してくださった。この時である。はじめてその日、思い切ってお詣りしてよかったと思ったのは。
(引用終了)
=以上=
2022.02.21:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】舩井流帝王学 (※佐野浩一執筆)
2022.02.14:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】三千世界大改造 (※舩井勝仁執筆)
2022.02.07:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】あらためて教育を問う (※佐野浩一執筆)
舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長 1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。 2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了) 著書に『生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『未来から考える新しい生き方』(2011年 海竜社)、『舩井幸雄が一番伝えたかった事』(2013年きれい・ねっと)、『チェンジ・マネー』(はせくらみゆき共著 2014年 きれい・ねっと)、『いのちの革命』(柴田久美子共著 2014年 きれい・ねっと)、『SAKIGAKE 新時代の扉を開く』(佐野浩一共著 2014年 きれい・ねっと)、『聖なる約束』(赤塚高仁共著 2014年 きれい・ねっと)、『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(朝倉慶共著 2014年11月 ビジネス社)、『智徳主義【まろUP!】で《日本経済の底上げ》は可能』(竹田和平、小川雅弘共著 2015年 ヒカルランド)、『日月神示的な生き方 大調和の「ミロクの世」を創る』(中矢伸一共著 2016年 きれい・ねっと)、『聖なる約束3 黙示を観る旅』(赤塚高仁共著 2016年 きれい・ねっと)、『お金は5次元の生き物です!』(はせくらみゆき共著 2016年 ヒカルランド)がある。 |
佐野 浩一(さの こういち) 株式会社本物研究所 代表取締役社長 株式会社51コラボレーションズ 代表取締役会長 公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事 ライフカラーカウンセラー認定協会 代表 1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。 著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる 自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた船井幸雄のすべて』(成甲書房)、船井幸雄との共著『本物の法則』(ビジネス社)、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)がある。 |