トップが語る、「いま、伝えたいこと」
「違い」から生じる問題は、いまの時代もまだ後を絶ちません。
極論すれば、ほとんどすべての問題が、「違い」を受け入れられないことから生まれているとも考えられます。
日本は、世界的に見て、とても特殊な国だとも思います。いわゆる単民族国家として、どちらかというと「同じ」であることに重きを置かれ、ある意味同調圧力はかなり強いと感じます。
ところが、日本にはまだ、人種や宗教、性的指向への差別によって生じる犯罪、ヘイトクライムは多くありません。黒人だから、イスラム教徒だからということで、いきなり殴られたり、LGBTQ+だから暴力を振るわれたりする事件は、世界的に見てまだ非常に少ないと言えます。
もちろん、差別・偏見はゼロではありません。見えないところ、知らないところでは、想像以上に多いのです。アイヌや在日外国人への差別、誹謗・中傷ともいえる書き込みがネット上にはたくさんありますし、文化や肌の色の違いから生まれる偏見も未だ存在するのです。
これからさらに世界へ向けて開かれていくことを考えると、より一層、「違い」をどう認め、活かし合うかが焦点となります。
歴史を振り返ってみると、とてもユニークなエピソードがあることを知りました。偏見を持たず、「違い」を受け入れ、「違い」に期待した結果、どうなったか……ということです。
戦国時代、黒人の武将である弥助を家臣として取り立てたのが、織田信長です。信長はオランダ人宣教師が連れていた黒人を譲り受けて、弥助と名づけ、奴隷や見世物にするのではなく、家臣にしたのです。もしも、本能寺の変がなかったら、大名として取り立てていたかもしれませんね。そうなると、黒人系の大名の一族が日本に残ったかもしれず、想像すると実に興味深く感じます。
信長が生きた16世紀は、まだ奴隷貿易も本格的に始まっていませんが、この時期に黒人を認めて重用したのは、アフリカ以外の世界では、稀有な例だったと思います。「人種」という概念は、どうやら15世紀頃にできたと言われています。それ以前も民族は交流しており、肌、髪、目の色、姿形が違うことは、お互いに認識していたことと思います。
しかし、当時の日本人はその違いが突出していました。男性はちょんまげ頭、女性は日本髪、衣服は着物で、男性は刀を差しています。初めて日本人を見る人にとっては肌の色以上に衝撃だったと想像できます。
そもそも、「遠くからきた人は、とにかく全然違うものだ」というのが、近代以前のグローバルスタンダードだったんだと思います。ですから、「人種」というのはさまざまな違いの一要素にすぎず、ことさらに意識されなかったのかもしれません。
「違っているから面白い。」
シンプルすぎるかもしれませんが、これからの多様性の時代のなかで、こうした観点に立てば、様々な問題の解決法が見えてくるかもしれません。
さて、その「違い」を認め、大事にするために、どのような考え方に立てばよいのか、舩井幸雄の「包み込み」の考え方に焦点を当てて考えてみたいと思いました。
舩井幸雄曰く……。
「競争時代にベストであった「包み込み」は、自己のエゴに基づいてなされた部分もあったのですが、これからの時代は愛情の目で「包み込む」のがベストだと言えるわけです。つまり、時代は違っても、「包み込む」という手法自体は真理の方法なのですが、そもそもの動機が異なったという訳です。
動機が変われば、行動が変わります。行動が変われば、結果が変わります。愛情の目で「包み込もう」という姿勢が、弱者を救済し、お互いを認め合い、両者ともどもの良心的な行動を生みだすわけです。ちなみに愛情で包み込む対象は、人間に対しても同じです。過去も悪も、何もかもすべてです。そうすることによって、すべてを肯定する姿勢となり、他人にやさしい生き方が可能となります。「温かく迎え入れ、包み込む」。それは相手をも活かす、共生、調和、互助の時代の基本的な姿勢と言ってよさそうです。」
「愛情の目で包み込む」
「温かく迎え入れ、包み込む」
これによって、相手も活かしながら、共生、調和、互助の時代を進む……。ちょっと大き過ぎる視点かもしれませんが、「ダイバーシティが重要」「世界の多様な価値観を理解すべき」と唱えられる時代です。多様性がないと無知になり、発想が貧しくなります。多様であることが新たな文化を育み、イノベーションのもとになります。この点を忘れてはいけないと思います。そして、その違いを前提として、どうやってうまくやるか、合意形成をしていくかがそれ以上に大事なことだと考えます。
文化や習慣の違いをまずは知り受け止めることが、多様性の受け入れの最初のステップではないかと思います。これから日本国内でも、国籍の異なる人と同じ職場で働くなどの機会が増えていくことでしょう。
すでにミレニアル世代の若者たちを見ると、まったく考え方や見方、好きなモノ、嫌いなモノが異なっていて、愕然とします。ましてや、まったく表現方法や考え方、常識の異なる人同士が、まずは誤解なく、ともに生活をする、あるいは同じところで暮らしたり、働いたりするということは、想像する以上に、丁寧なコミュニケーションや、お互いに対する理解が必要です。
これまで日本人同士であれば、特に言葉にしなくても何とかなっていたこと、相手に伝わっていたことが、互いに言葉にしないと伝わらないことが多々あるかもしれません。それは、育ってきた環境や互いの常識が違うから当然のことです。だからこそ、きちんと気持ちを言葉にする、コミュニケーションをとることが大切なのだと思います。
グローバル化も進み、異なる文化・習慣を持つ人が関わり合う機会が増えたこと、また、個を重んじる考え方が広がってきたことなどにより、最近は「ダイバーシティ・インクルージョン」をよく耳にするようになりました。
ダイバーシティ(Diversity)は「多様性」を意味し、「人種、性別、国籍、障害の有無など、多様な人材を受け入れて活かす」ことをあらわす言葉としてビジネスシーンでも用いられるようになりました。また、インクルージョン(Inclusion)は直訳で「包括・包含」という意味。これが、舩井流でいう「包み込み」と言い換えられます。
「多種多様な価値観や考え方を持つ人材一人ひとりの能力やスキルが認められ、組織で個人が活かされる」ことを現す言葉として使われています。
多様性を受け入れるためには、相手に伝えたいことを言葉にする、コミュニケーションをとり、相手を理解しようとするといったことが大切です。
なかには言葉にしにくい繊細な事柄もあるかもしれません。その場合は、こちらから相手の立場について学ぼうとすることも必要です。互いの認識・考えの違いを見過ごし、理解しないまま進むと、大きな誤解やトラブルを招くことになります。
これらは人種や国籍に限らず、世代や性別の違い、個々の考え方の違いなど、さまざまな状況で言えることです。「ガマン」はストレスが溜まりますから、「一歩譲る」姿勢がさらに問われてくるようにも思います。いきなり、国家レベルの問題や人種問題の解決という「大枠」では、むしろ問題の捉え方が複雑化して、結局答えも解決策も見つからないで終わるように思えて仕方がありません。
まずは、目の前の人、近くにいる人、ともに暮らす人、ともに働く人……から。
「包み込み=インクルージョン」
当たり前でありきたりな結論です。
時間はかかるかもしれませんが、まずやコミュニケーションや学びを通して、自分にとっての当たり前で相手にとって当たり前でない事柄が何なのかを認識し、互いに違いを認め合うことが多様性を受け入れるということに繋がっていくように思います。
感謝
2022.03.21:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】戦わないで世界を変えていく (※佐野浩一執筆)
2022.03.14:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】スポーツからみるロシア問題 (※舩井勝仁執筆)
2022.03.07:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】包み込みとインクルージョン (※佐野浩一執筆)
舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長 1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。 2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了) 著書に『生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『未来から考える新しい生き方』(2011年 海竜社)、『舩井幸雄が一番伝えたかった事』(2013年きれい・ねっと)、『チェンジ・マネー』(はせくらみゆき共著 2014年 きれい・ねっと)、『いのちの革命』(柴田久美子共著 2014年 きれい・ねっと)、『SAKIGAKE 新時代の扉を開く』(佐野浩一共著 2014年 きれい・ねっと)、『聖なる約束』(赤塚高仁共著 2014年 きれい・ねっと)、『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(朝倉慶共著 2014年11月 ビジネス社)、『智徳主義【まろUP!】で《日本経済の底上げ》は可能』(竹田和平、小川雅弘共著 2015年 ヒカルランド)、『日月神示的な生き方 大調和の「ミロクの世」を創る』(中矢伸一共著 2016年 きれい・ねっと)、『聖なる約束3 黙示を観る旅』(赤塚高仁共著 2016年 きれい・ねっと)、『お金は5次元の生き物です!』(はせくらみゆき共著 2016年 ヒカルランド)がある。 |
佐野 浩一(さの こういち) 株式会社本物研究所 代表取締役社長 株式会社51コラボレーションズ 代表取締役会長 公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事 ライフカラーカウンセラー認定協会 代表 1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。 著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる 自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた船井幸雄のすべて』(成甲書房)、船井幸雄との共著『本物の法則』(ビジネス社)、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)がある。 |