トップが語る、「いま、伝えたいこと」
物価の高騰が止まりません。アメリカの2月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で7.9%増と発表されました。ほぼ想定内とは言え、1月の7.5%増や市場予想の7.8%増よりも上回った数字はマーケットにとってはプチショックであり、これを見ると大きな方向性としてはFRBの利上げは予定通り、今月から実施されることになると思われます。ウクライナショックで少しは利上げの延期を期待していた向きにはその可能性がなくなる大きな出来事だと言えるのかもしれません。
日本も日銀が発表した2月の企業間物価(卸売物価に相当)は前年同月比で9.3%増になり、こちらも41年ぶりの高水準だということです。企業努力で消費者物価は抑えられていた日本ですが、そろそろ限界が来ていてこちらもじわりと値上げが実施されるようになってきました。企業経営者にとっていま一番大事なのは何とか値上げをやり切ることだと思います。ここで、値上げができないようだと近い将来に向けて存続が危ぶまれることになると覚悟を決めて決断することが必要なのかもしれません。
中長期的に見れば、価格決定権を持てる商品やサービスを作りあげるための取り組みが必要になることがますます明らかになってきました。経営者にとって、デフレは何もしなければ一番上手くいったという面で楽な環境であったことを認識しておくが大切だと思います。資本主義経済下においてはインフレの方が通常の状態であり、それが定着するかどうかはまだ特に日本の場合は不確かですが、それに備えて設備投資や新しい商品を生み出すための研究開発に資金を投じる覚悟をつけないといけない局面にきていると考えていただいていいのだと思います。
実際の株式市場は、先週の木曜日(アメリカは水曜日)に日米とも原油価格の急騰が一服したこともあり、大きな上げになりましたが、ロシアとウクライナの外相会談で停戦に向けての伸展がなかったこともあり木曜日のアメリカのマーケットは下げて終わりましたし、日本の金曜日のマーケットも朝の寄り付きは弱く始まっています。特に日本は木曜日に一時1,000円以上高騰した反動だと思いますので、まだ方向性が定まったわけではありませんが、どちらにしてもしばらくは神経質な動きが続くと思われます。
先日、NHKのニュースでパラリンピックウクライナ代表の選手団長のインタビューが放送されていました。彼はスポーツとしてではなく、母国の存在感を高めるため、ウクライナの存在を証明するために勝つ必要があると力強く述べていました。スポーツと政治は切り離して考える必要がある、というのが一般論です。しかし、侵略(一部にはまったく違う見方もありますが・・・)を止めないプーチン大統領に対して、欧米諸国はスポーツを利用した制裁を強化しています。理由としては、ロシアの政治とスポーツは非常に緊密な関係にあるからです。
ロシアがスポーツ選手を国策として強化しているのは有名な話です。国の威信や存在感を外部へ示し国民の士気をあげる、ソ連時代から巨額の投資をし、時には禁止薬物の利用(ドーピング)すら厭わない姿勢をみせてきました。フィギュアスケート、サッカーなどの人気競技でロシア人選手は出場権を失いました。その流れは様々な協議に伝播しており、ほぼすべてのスポーツからロシア人は締め出される流れになっています。ロシア側はスポーツ面までに影響が及ぶことは想定しておらず、非常に動揺しているようです。
また、スポーツはロシアの経済面でも大きな役割を担っています。ロマン・アブラモビッチ氏という方をご存知でしょうか。ロシアの新興財閥、『オリガルヒ』の中で世界的にもっとも有名で、プーチン大統領に近いとされている人物です。彼が高い知名度を誇っている理由、それはイギリスの人気サッカークラブにしてクラブ世界王者であるチェルシーFCのオーナーである為です。
彼がクラブを所有している理由は、スポーツを利用し、イメージアップを図るスポーツウォッシングの為だというのが定説です。また、欧州サッカーは非常に多くの金額が動くので、マネーロンダリングに利用されているとの指摘もあり、チェルシーFCの利益がロシアに流れているという疑惑さえもあります。イギリス政府は先日、ロシアへの制裁の一環としてアブラモビッチ氏の資産を凍結し、チェルシーFCは一切の経済活動を禁止されました。結果、彼は数千億の投資をし、それ以上の資産価値を持つクラブを、実質的に無償での譲渡か破産の二択を迫られています、これは大きな損失でしょう。
このように政治、経済面で大きな力を持っていたスポーツへの制裁により、ロシアは多くの物を失っています。自らの資金源となるオリガルヒとの関係を悪化させたプーチン大統領。様々な国、企業からの経済的な制裁に加え、資金源への圧力も強まる中、今後どのような動きを見せるのか、様々な側面から注視していきたいと思います。
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2022.03.21:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】戦わないで世界を変えていく (※佐野浩一執筆)
2022.03.14:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】スポーツからみるロシア問題 (※舩井勝仁執筆)
2022.03.07:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】包み込みとインクルージョン (※佐野浩一執筆)
舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長 1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。 2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了) 著書に『生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『未来から考える新しい生き方』(2011年 海竜社)、『舩井幸雄が一番伝えたかった事』(2013年きれい・ねっと)、『チェンジ・マネー』(はせくらみゆき共著 2014年 きれい・ねっと)、『いのちの革命』(柴田久美子共著 2014年 きれい・ねっと)、『SAKIGAKE 新時代の扉を開く』(佐野浩一共著 2014年 きれい・ねっと)、『聖なる約束』(赤塚高仁共著 2014年 きれい・ねっと)、『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(朝倉慶共著 2014年11月 ビジネス社)、『智徳主義【まろUP!】で《日本経済の底上げ》は可能』(竹田和平、小川雅弘共著 2015年 ヒカルランド)、『日月神示的な生き方 大調和の「ミロクの世」を創る』(中矢伸一共著 2016年 きれい・ねっと)、『聖なる約束3 黙示を観る旅』(赤塚高仁共著 2016年 きれい・ねっと)、『お金は5次元の生き物です!』(はせくらみゆき共著 2016年 ヒカルランド)がある。 |
佐野 浩一(さの こういち) 株式会社本物研究所 代表取締役社長 株式会社51コラボレーションズ 代表取締役会長 公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事 ライフカラーカウンセラー認定協会 代表 1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。 著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる 自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた船井幸雄のすべて』(成甲書房)、船井幸雄との共著『本物の法則』(ビジネス社)、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)がある。 |