トップが語る、「いま、伝えたいこと」

このページでは、舩井幸雄の遺志を引き継ぐ舩井勝仁と佐野浩一が、“新舩井流”をめざし、皆様に「いま、伝えたいこと」を毎週交互に語っていきます。
毎週月曜日定期更新
2022年4月4日
学び直しの時代、仕事を趣味にできるか? (※佐野浩一執筆)

 舩井幸雄は、生涯、学びを大切にしました。
 晩年、仕事の多くを占めていたのが、講演と執筆でしたが、そのためのシステムが、手帳とノートを活用して、知識と知恵の深化を図り、それらをお客さまに伝えていく流れでした。
 舩井幸雄邸の自室は、本で溢れていました。現在は、「舩井幸雄記念館・桐の家」として公開し、約3000冊に整理しましたが、もともとは、何万冊と存在したのではないかと想像します。そこから得た知識、知恵、あるいは当時ファックスで届く全世界からの情報は、次々に手帳やノートにまとめられていきました。
 それらを、さらに講演や執筆用のネタとして、ルール化・法則化し、別のノートにまとめていきます。そのまとめを組み合わせて、テーマに沿った講演レジュメに進化していくのです。そして、今度は、講演で話した内容の多くは文章化され、そこにまたいくつものエッセンスを書き加えて、書籍化していく……といった具合です。
 鮮やかでした!
 舩井幸雄にとって、学びは人生の大部分を占め、仕事や生活と一体化していたのです。 
 舩井は、「仕事は人生の大半の時間を費やすわけだから、仕事と趣味を一体化するのが、最大効率だ」と説いていました。

 とてもよく記憶しているのは、講演会やセミナーなどで、私を含めた社員たちがお客さま対応などで会場の外にいると、決まって、マイクから「うちの社員たちは外で遊んでばかりいる……」と厳しい声が発せられたものでした。
 つまり、お客さまのご案内などは、お客さまの主体性にお任せして、「せっかくの機会なので、いっしょに学べばいい」と考えていたようです。(もちろん、現場としては、お客さまを前にしてそういうわけにもいかず……、数名を残し、会場内に慌てて入ったものでした。)
 さて、学びは、人生を変える強力な支えとなるものです。
 これまでの時代や人生であれば、大学までで学んだことを、少しずつアップグレードしながら、定年の60歳まで走り切ることができました。でも、これからの時代は、技術の発展自体がとんでもないスピードで進み、数年経つと、それまでの知識や知恵は、使い物にならないほどです。しかも、「人生100年時代」へと進み、65歳、いや70歳以上になっても働き続け、また、そのあとは地域貢献などのために働くことも可能な時代。
 その長い人生の中で、陳腐化した学びで走り切ることは不可能になりました。
 そんななか、ビジネスパーソンの間で「リスキリング」というワードが注目されるようになりました。

 DX(デジタルトランスフォーメーション)などによるビジネス変革が必至となったいま、変革を実現する上では中堅・ベテランも含め、新たなスキルの修得が必須であり、そのための学び直しが不可欠です。
 企業の経営者や人事に、いま、ビジネスパーソンが何を学ぶべきか尋ねれば、多くがAI(人工知能)、DXに関するスキルを挙げます。世界に後れを取るDX推進に、日本は国を挙げて躍起になっています。
 ただ、すべての中高年世代がこれらを学び、身に付けるべきなのかどうかと考えると、必ずしもそうだとは思いません。「リスキリング」はブームとなってはいますが、それに翻弄される前に、自分自身の「棚卸」と「役割」の確認も必要なのではないかと思うのです。
 なぜなら、これらのテーマについては、いまや多くの人が学んでいて、特に「デジタルネイティブ」として学生時代からITになじんでいる若い世代は絶対的な強みがあるわけです。私たち中高年にとっては、そもそも不利です。そこは、仕事における「レッドオーシャン」化しつつあるとも言えます。
 舩井幸雄が、「それぞれには、それぞれの長所を活かした役割がある」と説きましたが、まさにそのとおり……。
 最先端の知識・スキルを持つ若者が活躍するために、ベテランが果たせる役割はいくらでもあると思います。自分のビジネスでAI技術が必要なら、それを専門とする人材の力を借りればいいし、DX化を図りたいならそれをサポートしてくれる会社や人材はいくらでもあります。いまから膨大な時間をかけて技術そのものを学ぶより、専門分野は他人に頼るという割り切りも重要だと思います。つまり、より一層、世代間の「役割」を明確にして、分担、サポートをし合うことで、最短距離を走れるのではないかと思うのです。
 そもそも何を学ぶかを考えるときに、「いま、流行しているもの」「みんながやっていること」に手を出すのは、その時点で、判断軸が自分から離れているからだ言えます。大切なのは、自分が何をやりたいか……。いまこそ、「自分軸」が大事です。

 逆に、「アンラーニング」すべきことを考え、実践することも必要なのではないでしょうか? 「アンラーニング」とは、手放すべき固定観念です。
 ある意味、何年か働いていると、固定観念や自らの仕事のやり方などで、固まった考え方を持ってしまいがちです。そうしたとき、「経験の壁」を打ち破るアンラーニング(学習棄却)をいかに進めるべきかがポイントになりそうです。環境が目まぐるしく変化する現代において、これまで培った常識や経験が通用しないことは往々にしてあります。
 自分のかつて学んだ知識や経験にすがりつくことなく、ここをアップデートできるかどうかが重要です。もちろん、積み上げてきた知識や経験を全て棄却する必要はありません。重要なのは、これまでのキャリアで得てきたものの中から、貴重で残すべきものと、潔く捨て去るべきものを選別することです。

 まずは、古くなったテクニカルスキル。旧態依然とした仕事の進め方や細部へのこだわりです。ハーバード大学教授のロバート・カッツ氏は、ビジネスパーソンに求められる能力を、
(1)テクニカルスキル(業務遂行能力)、
(2)ヒューマンスキル(対人関係能力)、
(3)コンセプチュアルスキル(概念化能力)の3つに分けて論じています。

 テクニカルスキルは実務の第一線で必要となりますが、常に刷新が求められ陳腐化のリスクが高いものです。技術革新が日進月歩の今日、従来のスキルや慣習にこだわると、改革の壁となり、創意工夫を阻害しがちになります。
 次にアンラーンすべきものは、自らの固定観念です。昨今、アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)とも指摘される心理概念です。成功体験を持つベテランほどとらわれやすく、捨て去りにくいものです。
 しかし、天災やコロナ禍や戦争など、100年に1度の非常事態が10年ごとに起きる現代。この固定観念から脱しなければ、組織変革はもちろん、自分自身のキャリアにおいてもうまくいかないことが増えてくる可能性があります。
 できることなら、自分の内面から湧き出す希望やワクワクする関心の延長線上で、学ぶことが大切です。学ぶとは、今まで自分が知らなかった新しい世界を知ることで、視野が広がり、思索が深まるもの。結果として未知の自分、本当の自分を知っていく営みでもあります。

 舩井幸雄は、学び、成長することほどワクワクして、幸せなことはないと考えていたようです。たしかに、学ぶことは楽しいものです。自分自身が興味を持ち、心から知りたい、学びたい、身につけたいと思うことなら、他人から言われなくても夢中で学べます。  
 それは遊びや趣味と同じで、ワクワクして何とも楽しいものだと言えます。
 これは、学びと趣味の一体化です。
 たとえ同じ学びであっても、主体性の有無がつらさと楽しさの分水嶺となり得ます。自分の内面から湧き出す希望やワクワクする関心の延長線上で、学ぶこと。学ぶとは、今まで自分が知らなかった新しい世界を知ることで、視野が広がり、思索が深まるもの……。 
 結果として未知の自分、本当の自分を知っていく営みにもつながっていきます。
 その学びが仕事につながっていくとすれば……。
 それこそが、「仕事を趣味にしよう」と説いた舩井幸雄のスタンスに一歩近づけるアプローチなのでないかと考えています。
                        感謝

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2022.04.11:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】北海道の重要性 (※舩井勝仁執筆)
2022.04.04:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】学び直しの時代、仕事を趣味にできるか? (※佐野浩一執筆)
舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長
1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。
2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了)
著書に『生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『未来から考える新しい生き方』(2011年 海竜社)、『舩井幸雄が一番伝えたかった事』(2013年きれい・ねっと)、『チェンジ・マネー』(はせくらみゆき共著 2014年 きれい・ねっと)、『いのちの革命』(柴田久美子共著 2014年 きれい・ねっと)、『SAKIGAKE 新時代の扉を開く』(佐野浩一共著 2014年 きれい・ねっと)、『聖なる約束』(赤塚高仁共著 2014年 きれい・ねっと)、『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(朝倉慶共著 2014年11月 ビジネス社)、『智徳主義【まろUP!】で《日本経済の底上げ》は可能』(竹田和平、小川雅弘共著 2015年 ヒカルランド)、『日月神示的な生き方 大調和の「ミロクの世」を創る』(中矢伸一共著 2016年 きれい・ねっと)、『聖なる約束3 黙示を観る旅』(赤塚高仁共著 2016年 きれい・ねっと)、『お金は5次元の生き物です!』(はせくらみゆき共著 2016年 ヒカルランド)がある。
佐野 浩一(さの こういち)
株式会社本物研究所 代表取締役社長
株式会社51コラボレーションズ 代表取締役会長
公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事
ライフカラーカウンセラー認定協会 代表
1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。
著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる 自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた船井幸雄のすべて』(成甲書房)、船井幸雄との共著『本物の法則』(ビジネス社)、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)がある。
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