トップが語る、「いま、伝えたいこと」

このページでは、舩井幸雄の遺志を引き継ぐ舩井勝仁と佐野浩一が、“新舩井流”をめざし、皆様に「いま、伝えたいこと」を毎週交互に語っていきます。
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2022年6月27日
ウェルビーイングとエヴァの時代 (※佐野浩一執筆)

 舩井幸雄は、これからは「エヴァの時代」になると、もうかなり以前より伝えていました。「エゴ」とは「今だけ、自分だけ、お金だけ」。それに対して、「未来のことも、相手のことも、お金以外の大事なものも」という考え方が「エヴァ」。より多くの人、できればすべての人が幸せであることを大事にするのが「エヴァ」の時代ということになります。
 舩井幸雄は、かなり「先取り」していたことがわかります。いま、やっと時代の流れが追い付いてきたのではないかと思うくらいです。
 それは、昨今、よく目にしたり耳にしたりする「ウェルビーイング」という言葉に凝縮されています。「ウェルビーイング」とは、直訳すると「良くあること」となります。ここから転じて「幸せ」や「健康」「癒し」などを指す重要な概念として使われるようになりました。まさに、この「エヴァ」の時代の重要な概念だと言えます。

 そもそも、ウェルビーイングという表現が世に問われたのは、世界保健機関(WHO)のその憲章前文においてでした。
Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.
(健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいいます。)

 このように「ウェルビーイング」は、当初は医療や介護など社会福祉の領域で注目された概念でした。しかし社会全体で働き方改革が進んでいることもあり、現在はビジネスの現場だけでなく、学校現場などでも意識されることが増えています。
 肉体面、精神面、そして社会面において「満たされた状態」にあることを指すこの概念は、いわば社会全体で追求すべき課題であるといえます。なぜならば、ヘルスケアも経済活動も、教育活動も、究極的には個人や社会のウェルビーイング(幸福)の実現を目的にしたことだからです。したがって昨今では福祉以外の領域でもウェルビーイングの概念は使われるようになり、社会全体で意識が高まりつつあります。
 先ごろ政府への提言を終えた「教育立国推進協議会」においても、子どもたちの「ウェルビーイング」については分科会が設けられ、たいへん活発な議論が展開しました。教育もやっと新しいステージに入っていくな……と実感しました。

 さて、「ウェルビーイング」の概念として有名なものに、「PERMA」という指標があります。これは、「ポジティブ心理学」という自己実現理論を唱え発展させた、マーティン・セリングマンによって考案されたものです。人は以下の5つの要素を満たしていると幸せである、とするもので、頭文字をとって「PERMA」と呼ばれています。

Positive Emotion(ポジティブな感情)
Engagement(何かへの没頭)
Relationship(人との良い関係)
Meaning and Purpose(人生の意義や目的)
Achievement/ Accomplish(達成)

 また、世論調査やコンサルティング業務を行うアメリカのギャロップ社が定義した5つの要素もよく知られています。

Career Wellbeing:仕事に限らず、自分で選択したキャリアの幸せ
Social Wellbeing:どれだけ人と良い関係を築けるか
Financial Wellbeing:経済的に満足できているか
Physical Wellbeing:心身ともに健康であるか
Community Wellbeing:地域社会とのつながっているか

 いずれも、ウェルビーイングをよりシンプルに理解するための一助となっていると感じられます。

 さて、この分野の研究はこれまで欧米がリードしてきました。これまた、日本はかなり遅れを取ってきたと言えます。
 その背景には、やはり日本特有の事情があるようです。
 2021年に国連が発表した世界幸福度ランキングを見ると、日本は世界56位で、先進国の中では最下位という残念な結果でした。調査された6項目のうち、特に「人生の自由度」と「他者への寛容さ」が低いという特徴が見られました。
 ランキングはアンケートの表記内容や国ごとの価値観などの影響を受けるため、この結果がすべてではありません。しかし、個々の事情に合った働き方ができる労働環境が充分でなく、ジェンダーや学歴など属性で判断されることも多い日本において、ウェルビーイングはまだまだ浸透していないと考えられます。日本のウェルビーイングは、ようやく転換のスタート地点に立ったばかりと言えるのかもしれません。
 そして、2021年になって、日本は大きな一歩を踏み出したのです。政府が毎年発表する「成長戦略実行計画」に、「国民がwell-beingを実感できる社会の実現」という文脈で、やっと目に触れるようになりました。また、イギリスに続き世界で2番目に「孤独・孤立対策」の担当大臣が任命されたのです。
 さらに同年9月には、「日経Well-beingシンポジウム」が開催され、政府や企業関係者、有識者等によって、ウェルビーイングの実現へ向けた議論が行われています。
 2021年は、日本におけるウェルビーイング元年とも言われており、遅まきながらウェルビーイングに向かう素地が整いつつあります。
 その背景には、東洋と西洋、集団主義と個人主義などの違いに着目し、また日本の国民性を考慮に入れたウェルビーイング研究が進められてきたことが挙げられます。
 その前提には、決定的な「価値観の変化」がありました。ウェルビーイングが注目されるようになった第一の理由として、「モノ」から「心の豊かさ」へと価値観が変化してきたことが挙げられるでしょう。
 これは、まさに本物研究所が生まれた背景でもあるのです。効率や利益、売り上げなどの経済指標を優先してきた結果、格差の拡大や地球環境の悪化、貧困などさまざまな問題が起きました。これらはこれまでの「モノ」の価値観では解決できない課題ばかりで、成長を追い求めることに限界がきていると認識され、地球規模で調和やよりよい社会をつくる方向へと変わろうとしてきたことにあります。
 ちなみに、舩井幸雄は、「心の豊かさ」を得られる「モノ」こそを“ほんもの”とらえていました。これこそが、舩井幸雄の商品哲学だったわけです。
 私が経営する本物研究所は、10周年を機に「“ほんもの”クレド」を、キャスト全員で議論し、創り上げました。その際、会社理念を「“ほんもの”で笑顔をつなぐ」と定めてくれたことは、実は、このウェルビーイングの先取りだったのだと振り返るとき、そこに弊社の未来へ向けての大きな役割と使命を深く感じ入るところです。
 
 さて、そんな流れのなか、2015年に国連で採択された「SDGs」(持続可能な開発目標)がウェルビーイングの考え方の浸透に大きな影響を与えたようです。ともに、この現代社会に必要不可欠なものだからです。
 ちなみに「SDGs」の目標3には、次のように記されています。

 「すべての人に健康と福祉を(Good Health and Well-Being)」―あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する

 ここでのウェルビーイングは「福祉」と訳され、ターゲットを見ても、妊産婦や新生児の死亡率、感染症対策、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジなどについて示されているように、「健康」「福祉」などの意味あいが強く感じられます。
 しかし全体で捉えると、「SDGs」は「地球上の誰一人取り残さない」、経済・社会・環境の3つのバランスがとれた社会を目指すことが大前提となっていることがわかります。
 ウェルビーイングの概念も、単に個人が幸せであればいいのではなく、個人と社会、ひいては地球全体が満たされた状態とは何かを考えるべきものです。ウェルビーイングは、「SDGs」を達成するための価値観の基準であるとも言えます。貧困がなくなり、質の高い教育を受けることができ、人や国の不平等がなくなり、17の目標を達成した先にあるのが、地球全体のウェルビーイングであるはずです。
 今後、経営や仕事に対する考え方も、どんどんウェルビーイングを取り入れたものに向かっていくと考えられます。かつて、「24時間、戦えますか?」などというキャッチコピーが流行語にまでなった商品がありましたが、いまでは「死語」といって差し支えないと思います。高度経済成長期を経て、少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少に直面し、さらにブラック企業の社会問題化もあって、働き方の多様化が進みました。政府は一億総活躍社会の実現を掲げ、2019年から「働き方改革関連法」の施行を開始しました。
 この法律は、働く一人ひとりが多様な働き方を選択でき、より良い将来の展望を持てるようになることを目指したものです。長時間労働の是正、雇用形態にかかわらない公正な待遇、高齢者や女性の就労促進などが掲げられています。ただし、働き方改革の関連法案にはウェルビーイングという表現は、まだ入っていませんでした。
 そこに、突如として拡大に拡大を重ねていったコロナ禍。ここで、価値観の大きな変化が次々に生まれてきたのです。リモートワークが普及し、自分らしい働き方を考え直す人も増えました。もちろん、その一方でコミュニケーション不足やメンタルヘルスの問題も指摘されていることは忘れてはいけないとは思います。
 心身ともに健康で多様な人材が集まれば、さまざまな角度からのアイデアが集まり、イノベーションの可能性も広がります。幸福感の高い社員はそうでない社員に比べ、創造性は3倍、生産性は31%高いという研究報告もあり、企業にとってもウェルビーイングがどれだけ重要であるかを示唆しています。
 いずれにしましても、あらゆる分野、あらゆる視点、あらゆる場所、あらゆる機会に、ウェルビーイングの考え方を取り入れていくことが、「エヴァ」の時代を私たち人間が自ら手繰り寄せていく原動力になると、確信を深める日々です。
                            感謝

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舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長
1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。
2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けている。
著書に『生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『未来から考える新しい生き方』(2011年 海竜社)、『舩井幸雄が一番伝えたかった事』(2013年きれい・ねっと)、『チェンジ・マネー』(はせくらみゆき共著 2014年 きれい・ねっと)、『いのちの革命』(柴田久美子共著 2014年 きれい・ねっと)、『SAKIGAKE 新時代の扉を開く』(佐野浩一共著 2014年 きれい・ねっと)、『聖なる約束』(赤塚高仁共著 2014年 きれい・ねっと)、『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(朝倉慶共著 2014年11月 ビジネス社)、『智徳主義【まろUP!】で《日本経済の底上げ》は可能』(竹田和平、小川雅弘共著 2015年 ヒカルランド)、『日月神示的な生き方 大調和の「ミロクの世」を創る』(中矢伸一共著 2016年 きれい・ねっと)、『聖なる約束3 黙示を観る旅』(赤塚高仁共著 2016年 きれい・ねっと)、『お金は5次元の生き物です!』(はせくらみゆき共著 2016年 ヒカルランド)がある。
佐野 浩一(さの こういち)
株式会社本物研究所 代表取締役社長
株式会社51コラボレーションズ 代表取締役会長
公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事
ライフカラーカウンセラー認定協会 代表
1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。
著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる 自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた船井幸雄のすべて』(成甲書房)、船井幸雄との共著『本物の法則』(ビジネス社)、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)がある。
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