トップが語る、「いま、伝えたいこと」
11月2日のFOMC(連邦公開市場委員会)で、FRBが4会合連続で政策金利を0.75%上げて4%にしました。これは2008年以来の水準ですが、12月のFOMCでは上げ幅が0.5%に減速することが確認できたのではないかという見方で、株式市場は一時急騰模様になりました。しかし、パウエル議長の会見で次回の会合の4.5%ぐらいが金利の上限だとみていた市場に冷や水を浴びせるように、それで打ち止めにならずに5%超まで上げていきますよ、という意図が伝わると、予想外のタカ派(この場合は金融引き締めに対して強い意志を持っていること)発言に市場は動揺し、急落していきました。
一夜明けた、3日の株式市場でも下げは止まらずに、特にハイテク株が多いナスダック市場の下げがきつかったようです。休日明けの4日朝の東京市場も急落して始まりました。FRBは市場の予想というか期待を裏切って、かなりタカ派色を強めています。
4日朝の日経新聞には市場関係者のコメントとして、タカ派FOMCの二日酔いからまだ冷めていない、という表現が報じられていましたが、トランプ政権やコロナ禍に対応するためのバラマキ政策という、飲み過ぎ状態からの強烈な二日酔い状態にマーケットが悩まされていると考える方が実態に近いのかなと思います。
欧米の物価上昇は単純なものではなく、すでにインフレスパイラルの状態に入っているのではないかという見方があります。日銀出身で東大教授である渡辺努先生の「世界インフレの謎」(講談社現代新書)が、いまの物価の現状の解説でとても腑に落ちましたので、少し引用させていただきます。
(引用開始)
利上げで需要が冷え込むというのはFedに限らず英国や欧州の中央銀行にとっても 頭の痛い問題です。しかし彼らが今後の展開としてもっとも懸念しているのは、物価上昇 が賃金上昇を呼び、それがさらなる物価上昇を起こすという事態におちいってしまうこと です。そうした状態は「賃金・物価スパイラル」と呼ばれ、インフレがより対処の困難な、 新たなステージに入ることを意味します。
賃金・物価スパイラルは、インフレの「第2ラウンド」とも呼ばれています。最初の経済 ショック(今回であればパンデミックや戦争)などによって起こるインフレが第1ラウンド です。この段階で中央銀行がうまくインフレを収束させることができれば、延長戦はあり ません。しかし、第1ラウンドのインフレが、賃金の上昇に火をつけ、それにともなう人件費増を企業が価格に転嫁する、つまり、最初のインフレが賃上げを経由してさらなるインフレを生むとなったとき、第2ラウンドに突入ということになります。
(引用終了)
どうも欧米のインフレはこの状態になりつつあり、日本でもインフレの傾向が顕著に表れてきた現状を考えると、スパイラルインフレの状態になると日本の方が対処は難しいのではないかという見方もあるようです。どちらにしても、FRBはインフレファイターとしての中央銀行の機能を果たそうと努力していて、他の中央銀行もその方向についていこうとしているのですが、ひとりそれができない日銀の行方をどう読むかが、日本の近未来を占う上で大事なのだと思います。
インフレは、通貨の価値が下がるということで、いまのところ基軸通貨でもあり世界最強の経済力や、軍事力を背景にしている米ドルの高騰が止まりません。金融緩和がまったくできない日本は極端ですが、大なり小なり他の先進国もアメリカほどの大胆な利上げはできずにいますし、新興国や途上国にとっては為替安や過度のインフレ状態になりやすい、いまの金融状態は大変に厳しいものがあります。いまは、まだ米ドルへの信認は弱まってはいませんが、やがて基軸通貨さえ信用されなくなった事態に備えるには、金(ゴールド)を買っておけばいいのではないか、という見方が出てきます。
副島隆彦先生の「金融暴落は続く。今こそ金を買いなさい」(祥伝社)は、いつもながらの気合の入った本です。独自の視点で今後の有用になる投資への道標を示してくださっています。父がまだ講演をできたころなので、10年以上前のことだと思いますが、講演の舞台の上で親子喧嘩をしてしまったことがありました。父は、「副島さんの言うことを聞いて、息子に金を買えと指示したのに買わなかった」と突然、私を舞台の上に呼んで怒り始めました。
確かにその通りなのですが心の中で反論したのは、金に基づく金融商品なら買えるが、現物の金は保管しておく場所などを考えると現実的ではないということです。本書の中でも、副島先生のスタンスは変わっていなくて、信頼できる倉庫を借りてそこで保管しなさい、という指示になっています。
ロシアが示した公定価格で考えると、世界標準の金の価格は1グラム1万2千円というのが、副島先生の意見です。ちなみに、田中貴金属工業のホームぺージで確認できた11月4日9時30分時点の小売価格は8,614円になっています。
巻末には、副島先生が推薦する株式も紹介されていて、読者を大事にしている先生のスタンスが伝わってくる、いつもながらの完成度の高い本になっています。基本的には、私の金融に対する基本的な考え方は副島先生に教えてもらったものです。いまはちょっと生意気になって違う意見も持っていますが、基本を確認する意味で特に祥伝社から出される本は参考にさせていただいています。最後に蛇足ですが、とても大事なことを書かせてください。
投資はくれぐれも自己責任でお願いします。
=以上=
2022.11.21:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】新時代の村づくり (※舩井勝仁執筆)
2022.11.14:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】気候変動がもたらすもの (※佐野浩一執筆)
2022.11.07:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】今こそ金を買いなさい (※舩井勝仁執筆)
舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長 1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。 2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了) 著書に『生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『未来から考える新しい生き方』(2011年 海竜社)、『舩井幸雄が一番伝えたかった事』(2013年きれい・ねっと)、『チェンジ・マネー』(はせくらみゆき共著 2014年 きれい・ねっと)、『いのちの革命』(柴田久美子共著 2014年 きれい・ねっと)、『SAKIGAKE 新時代の扉を開く』(佐野浩一共著 2014年 きれい・ねっと)、『聖なる約束』(赤塚高仁共著 2014年 きれい・ねっと)、『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(朝倉慶共著 2014年11月 ビジネス社)、『智徳主義【まろUP!】で《日本経済の底上げ》は可能』(竹田和平、小川雅弘共著 2015年 ヒカルランド)、『日月神示的な生き方 大調和の「ミロクの世」を創る』(中矢伸一共著 2016年 きれい・ねっと)、『聖なる約束3 黙示を観る旅』(赤塚高仁共著 2016年 きれい・ねっと)、『お金は5次元の生き物です!』(はせくらみゆき共著 2016年 ヒカルランド)がある。 |
佐野 浩一(さの こういち) 株式会社本物研究所 代表取締役社長 株式会社51コラボレーションズ 代表取締役会長 公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事 ライフカラーカウンセラー認定協会 代表 1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。 著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる 自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた船井幸雄のすべて』(成甲書房)、船井幸雄との共著『本物の法則』(ビジネス社)、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)がある。 |