トップが語る、「いま、伝えたいこと」

このページでは、舩井幸雄の遺志を引き継ぐ舩井勝仁と佐野浩一が、“新舩井流”をめざし、皆様に「いま、伝えたいこと」を毎週交互に語っていきます。
毎週月曜日定期更新
2022年12月12日
現代人の時間感覚 (※佐野浩一執筆)

 ここしばらく、時間の経過がとても速く感じられます。
 年末になると、「もう一年が終わるのか……」と。年々、その一年という時間がどんどん短く感じるようになっているのは、私だけではないかもしれません。
 「『十年一昔』とは、“世の中の移り変わりが激しく、十年もたつと昔のこととなってしまう”という意味の四字熟語ですが、この「一昔」というのは何年くらい前だと感じられますか?
 ある時計メーカーが18〜26歳の男女各200人を対象にした時間感覚に関する調査が行われました。その結果、もっとも多かったのは、「10年」(34.0%)で、「5年」は29.8%でした。全体の平均値が6.5年であったことから、「Z世代は5〜6年が一昔」と結論づけたようです。
 もっとも、「十年一昔」の熟語の意味を伝えてから質問をしているので、ネット上では、この真偽について、いろいろ議論があることも事実です。
 面白かったのは、男女間の回答の差です。「十年一昔」を「5年」と答えた男性は25.5%だったのに対して、女性は34.0%でした。また「10年」と答えた男性は37.0%、女性は31.0%。このデータから見る限りにおいては、女性のほうが「一昔」をより短く感じているという結果でした。
 振り返ってみると、若いころのほうが、時間がゆっくり流れていたように思います。高校時代などは、とにかく定期試験が大嫌いで、「あと何回試験を受けたら解放されるか……」と、指折り数えていたわりに、なかなかその解放まで時間がかかることに愕然としていた記憶があります。
 時間の経過がとくに早く感じられるようになったのは、教員を辞めてから、ビジネス界に転身してからのことです。私が創業した株式会社本物研究所は、今年で創業20年目を迎えていますが、この20年、本当にあっという間でした。
 それは、ちょうどネット情報の氾濫やデジタル文化の普及とも重なっていて、単純に年齢であったり、日々の密度の濃さだけの原因ではないようにも思われるのです。つまり、現代では「一昔」を10年より短いと捉えているのはZ世代だけとは限らないということです。
 現代人が1日に受け取る情報量は、江戸時代の1年分にも相当するといわれているそうです。とくに、ここ10年で個人の受け取る情報量は530倍になったとも……。ということは、脳内で情報処理をする量が年々劇的に増えていることになります。その結果、脳は、私たちが過ごしている時間感覚よりも、はるかに速い感覚で動いていることになり、時間の経過をより速く感じているのかもしれませんね。
 生まれてからまだ間もない子どもたちは、相対的に時間を長く感じていると言われています。ただ、こうした情報量の摂取と時間の感覚が連動しているとすれば、スマホやゲーム、SNSから絶え間なく情報を摂取している現代の子どもたちは、昔の子どもよりも1年を短く感じている可能性がありますね。

 さて、「タイムパフォーマンス」、略して「タイパ」という言葉を目にしている方も多いかと思います。近年、この「タイパ」と呼ばれる消費行動がたいへん注目を集めています。
 「タイパ」とは、時間に対する満足度を求める“時間効率”を意識した消費者の行動を指しています。たとえば、YouTubeの動画やセミナーのアーカイブ視聴などの際、「〜倍速」という再生スピードのモードがあって、私なども通常「2倍速」で聴くのが当たり前になってきています。これもまた、「タイパ」の1つと言えます。
 「Tik Tok」などの短縮動画アプリ、そして一食で33種類の栄養素が取れるインスタント食品もあり、さまざまな企業がこうした「タイパ」商品やサービスを展開しています。
それこそ、「一昔」前なら、本をたくさん読みたい、ならば速く読みたい……ということで、いわゆる「速読」を学ばれる方も多かったのではないでしょうか? それに対して、いまの時代、「flier(フライヤー)」というサービスがあって、「一昔」からすると、それこそ夢のようなサービスです。要するに、1冊の書籍を10分で読めるように要約して提供してくれるサービスです。「flier」は、通勤時間や休憩時間などのスキマ時間を有効活用し、効率よくビジネスのヒントやスキル、さまざまな教養を身に着けたいビジネスパーソンに多く利用されているようです。コロナ禍以降、登録者数が急増し、2022年11月には累計99万人に達したそうです。タイパ志向が高い30〜40代がメインユーザーで、一般的なビジネス書の読者層とされる40〜50代よりも10歳ほど若いのも特徴です。
 本が売れなくなってきているといいますが、「読みたい」というエネルギーを持っている人はやはり一定数以上存在するということになりますし、ここから、「まともに一冊読みたい」と感じるユーザーが広がっていくことも期待されますね。
 このように見てみると、「タイパ」は、想像以上に多くの世代に広がっていっているという認識も持てます。ただ、明らかに、Z世代はタイパを好む傾向は強くあり、その明確な理由がわかれば、また新たなマーケティングにつながっていくのだと思います。
 ただ、タイパを求める人々の根底には、やはり「時間が惜しい」という共通した感覚があるようです。大切なのは、時間が惜しいという感覚を持つ人が『時間がないから時間を大切にしたい人』と『待ちたくない、今すぐ楽しみたい人』の2種類に分けられるということです。
 このあたりの研究は、青山学院大学経営学部マーケティング学科の久保田進彦教授が有名で、たいへん興味深く学ばせていただいています。久保田教授によると、前者は『時短型』、後者は『バラエティ型』と分類されています。
 「この区別を理解しないと、タイパの本質を見失ってしまいます」と同教授は強調されています。『時短型』はとにかく忙しく、時間に追われている人々。子育て世代や、働き盛りの世代に多く、必要に迫られて時間効率を高めているといいます。「時短型は中高年層にも多く、Z世代特有とはいえないのが実際だと述べていらっしゃいます。もう一方の『バラエティー型』は、一定の時間内でより多くのモノを消費したり、楽しんだりしたいという層です。たとえば、映画を倍速で見る、音楽はサビだけを聞くなどの方法で時間効率を高めています。時間に追われているのではなく、自分の時間を目一杯楽しみたいのが特徴です。このタイプは学生や若い人、いわゆるZ世代に多い印象ですが、中高年層にも一定数存在します。これは、“今”を楽しむ欲張り消費であり、時間に追われる『時短型』とはかなり異なります。
 久保田教授は、現代のタイパ論は、時短型とバラエティー型が同軸で語られているため、混乱が生じていると論じていらっしゃいます。『タイパ=若い人の消費行動』というイメージが先行していますが、必ずしもそうではないようです。『時短型』と『バラエティー型』を区別すれば、“時間があるのにタイパを求める”という、一見矛盾した行動を取る人々も簡単に理解できるはずだと……。
 このように見てきますと、いまの時間感覚は、Z世代に限らず、幅広く、そして大きく変化してきているということになりますね。そんな時間の“荒波”のなかで、日々うまく付き合いつつ、自分を見失わない時間感覚も身に着けていかねばならないと感じる今日この頃……。
 たまには、ほっと一息。
 たまには、大きくスピードダウン。
 たまには、大きく深呼吸。

 そんなちょっとしたことが、さらに大事な時代になってきているのかも知れません。

                            感謝

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舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長
1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。
2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了)
著書に『生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『未来から考える新しい生き方』(2011年 海竜社)、『舩井幸雄が一番伝えたかった事』(2013年きれい・ねっと)、『チェンジ・マネー』(はせくらみゆき共著 2014年 きれい・ねっと)、『いのちの革命』(柴田久美子共著 2014年 きれい・ねっと)、『SAKIGAKE 新時代の扉を開く』(佐野浩一共著 2014年 きれい・ねっと)、『聖なる約束』(赤塚高仁共著 2014年 きれい・ねっと)、『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(朝倉慶共著 2014年11月 ビジネス社)、『智徳主義【まろUP!】で《日本経済の底上げ》は可能』(竹田和平、小川雅弘共著 2015年 ヒカルランド)、『日月神示的な生き方 大調和の「ミロクの世」を創る』(中矢伸一共著 2016年 きれい・ねっと)、『聖なる約束3 黙示を観る旅』(赤塚高仁共著 2016年 きれい・ねっと)、『お金は5次元の生き物です!』(はせくらみゆき共著 2016年 ヒカルランド)がある。
佐野 浩一(さの こういち)
株式会社本物研究所 代表取締役社長
株式会社51コラボレーションズ 代表取締役会長
公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事
ライフカラーカウンセラー認定協会 代表
1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。
著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる 自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた船井幸雄のすべて』(成甲書房)、船井幸雄との共著『本物の法則』(ビジネス社)、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)がある。
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