トップが語る、「いま、伝えたいこと」

このページでは、舩井幸雄の遺志を引き継ぐ舩井勝仁と佐野浩一が、“新舩井流”をめざし、皆様に「いま、伝えたいこと」を毎週交互に語っていきます。
毎週月曜日定期更新
2022年12月26日
ウェルビーイングとよい世の中づくり (※佐野浩一執筆)

 知り合いの息子さんは、入社以来、「会社に行ったことがない」、つまりずっと「在宅」が続いています。傍目に見ると、「(会社として)どうやって教育するのか」「どうやってモチベートするのか」、とっても心配になります。最近では、こういう事例が原因の1つにもなって、「仕事がゆるくて辞める」という若者が増えていると、話題になっています。
 大学でも同様の状態が続いていました。入学以来、キャンパスに行っていない……。よって、お友だちもできない……。大学はもちろん遊びに行くところではありませんが、高校生時代に思い描いていたキャンパスライフは、まさにバーチャルそのものの世界になっていたわけです。そうした環境で、「なにかを一生懸命がんばろう!」という気持ちを持つことすらかなわなくなってしまった若者たち。
 コロナ禍で「致し方がなかった」というのも事実なのですが、これから社会がどのように彼らと関わっていけるのかが極めて重要であるとも思います。「24時間働けますか!」の時代は終わりましたが、やはり、それなりの負荷がないと、人は成長しませんし、また、面白さや働きがいを感じづらくなることも事実です。
 さて、ウェルビーイングの分野では、とてもユニークな研究が進められています。結論から言うと、そのウェルビーイングをより高めようというのが「人的資本経営」であり、あるいは以前からある「働き方改革」や「健康経営」「エンゲージメント」といった概念です。これらはすべてつながっているということです。その根本に「ウェルビーイング」があると理解したほうがよさそうです。
 社員がにこにこしながら、それほどきつくない仕事だけをする……。そんなゆるい働き方がウェルビーイングだと誤解されることもありますが、決してそうではありません。最近では、「在宅ワーク」のみを求める就職サイトなどもあらわれて、逆に「働くって、そんなもんじゃないだろう……」とため息をつきたくなることがあります。もう、これからの世の中では、皆が一緒になってわいわいコミュニケーションをとりながら、あるいは喧々諤々と厳しい議論を展開しながら、なにかをともに進めていくというのは、存在し得なくなってしまうのでしょうか?
 そうした感覚と、この「ウェルビーイング」を混同されてしまってもよくないと、最近感じています。社員が生き生きと、やる気も成長意欲もあり、利他的で、「みんなのために働きたい」と思っている……。とても活気があり、会社のために、また、自分の人生のために力強く働いている状態が、「ウェルビーイング」の定義です。ゆるく、ゆるく……、なんでもありで、目標もなんにもない……、とにかく楽で、なんとなく楽しい……。これは、ウェルビーイングとはまったく異なったものなのです。
 ウェルビーイングを支えるポイントの1つに、「つながり」と「感謝」があります。これは「社会関係資本」ともいうと学びました。社会との関係性が強いと、心が豊かで、心が折れそうになっても戻ってくる力が強い「レジリエントな状態」であることが分かっています。
 企業の中でのつながりも「社会関係資本」であり、「人的資本」です。いかにコミュニケーションを円滑にして、密度を濃くして、フラットに自己開示し、自分の言いたいことが言える心理的安全性の伴った会社環境をつくり、社会とつながっていけるか……。そのためには、まず「感謝」の気持ちが大事です。そして、利他的であることもその支えとなります。そうして多様な人たちが共に働くことで幸せを実感できるのです。
 ここでいう「利他」とは、「自己犠牲」と異なります。まったく異なるものと認識すべきです。心からお客様のためになりたい、あるいはだれかに助けてもらった、あるいは支えてもらった経験から、つぎは、自分に関わるだれかにそれを返していこう……。つまり、今の言葉でいうと「恩送り」です。すなわち、これが「利他」の概念ということです。ところが、「自己犠牲」とは、とにかくつらいものです。自己肯定感など育つはずもなく、ひたすら自分自身がしんどい思いをして、切羽詰まったような感覚で、だれかのためになろうとすること……。こんな状態だと、仕事にやりがいはおろか、幸せな感情も生まれるはずがありません。
 こうした課題を克服するために、私たちは、「プラス発想」という概念を与えられたのではないかと思っています。そして、舩井幸雄がよく言ったように、「大丈夫、未来はきっとよくなる」という言葉に代表するように、ある種「楽観的」であること。これもまた、大切な資質であろうかと思います。ようするに、どんな苦難がおころうとも、心のどこかで、「なんとかなる」と思える姿勢。これは、別の観点からすると、「自己肯定感」の高さもポイントとなってくるようです。
 いかにして社員みんなが前向きに、楽観的になるか。楽観的とは適当でいい加減という意味ではなく、やるべきことはきちんとできるし「なんとかなる」と力強く思うことです。
 この「なんとかなる」と思える心は、「チャレンジ精神」とも関係しています。チャレンジ精神とはリスクテイクのことで、リスクを取って新しいことをする人は幸せを感じられます。リスクがあるから新しいことに挑むのは怖いと心配し過ぎる人は、実は幸福度が低いのです。
 もう一つ付け加えるとすれば、かなり舩井流が濃くなりますが、「あるがまま、なるがまま」のスタンスではないでしょうか。そのためには、たとえば社員一人ひとりが、独自固有の長所を持ち、独立した、一個の重要な役割を果たす存在として、自分も周りも認めていることがポイントです。ありのままの個性を発揮して自分らしく働く……。没個性ではなくて、100人いたら100通りあるというその違い。これがまた、「ダイバーシティ&インクルージョン」の概念にもつながっていきます。こうして、より一層個性を発揮して自分の軸をはっきりさせながら働くことができたら、幸せですよね。
 「ウェルビーイング」は、ゆるくて、甘くて、自由になり過ぎて、統率が取れないということではまったくありません。やる気があり、なんとかなると思ってチャレンジし、個性を磨いて幸せになることなのです。ウェルビーイングを高めれば、会社や組織、そしてその集合体である世の中はどんどん発展していくと思います。
 「人的資本経営」の概念は、「ウェルビーイング」を語り、定義し、実践していくうえでも、たいへん貴重なものです。
 まさに、舩井幸雄がよく口にしていた「企業は人なり」を軸とし、それぞれが「人財」として活かし、活かされる企業づくりや世の中づくりにつながっていくと考えます。
                           感謝

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舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長
1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。
2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了)
著書に『生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『未来から考える新しい生き方』(2011年 海竜社)、『舩井幸雄が一番伝えたかった事』(2013年きれい・ねっと)、『チェンジ・マネー』(はせくらみゆき共著 2014年 きれい・ねっと)、『いのちの革命』(柴田久美子共著 2014年 きれい・ねっと)、『SAKIGAKE 新時代の扉を開く』(佐野浩一共著 2014年 きれい・ねっと)、『聖なる約束』(赤塚高仁共著 2014年 きれい・ねっと)、『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(朝倉慶共著 2014年11月 ビジネス社)、『智徳主義【まろUP!】で《日本経済の底上げ》は可能』(竹田和平、小川雅弘共著 2015年 ヒカルランド)、『日月神示的な生き方 大調和の「ミロクの世」を創る』(中矢伸一共著 2016年 きれい・ねっと)、『聖なる約束3 黙示を観る旅』(赤塚高仁共著 2016年 きれい・ねっと)、『お金は5次元の生き物です!』(はせくらみゆき共著 2016年 ヒカルランド)がある。
佐野 浩一(さの こういち)
株式会社本物研究所 代表取締役社長
株式会社51コラボレーションズ 代表取締役会長
公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事
ライフカラーカウンセラー認定協会 代表
1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。
著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる 自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた船井幸雄のすべて』(成甲書房)、船井幸雄との共著『本物の法則』(ビジネス社)、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)がある。
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