トップが語る、「いま、伝えたいこと」
地球環境問題が重要性を増してくるなか、30年ほど前から気候変動対応の国際的枠組みが始まっています。
「京都議定書」。
皆さん、ご存じだと思います。
こちらは1992年に採択され、1994年に発効して、現在198カ国と地域が締結している「国連気候変動枠組条約(UNFCCC)」の締約国によって2020年までの枠組みを定めたもの。そして、さらに2020年以降の枠組みを定めたものが「パリ協定」ということになります。
また、この条約への賛同国が参加するCOPの「COP26」(2021年秋に開催)においては、1988年に国連環境計画と世界気象機関によって設立されたIPCC(気候変動に関する政府間パネル)が第6次評価報告書第1作業部会(自然科学的根拠を担当)報告書を発表し、温暖化を1.5℃で止めるには、2050年頃には二酸化炭素(CO2)排出を実質ゼロとすることが必要であると評価しています。
ここから、パリ協定の「1.5℃努力目標」に向けた21世紀半ばの「カーボンニュートラル」達成と、その経過点である2030年に向けた積極的な気候変動対策を締約国に求めることが決定され、より一層加速化された取り組みが促されています。
そこからさらに、パリ協定第6条に基づく温室効果ガス排出削減量の国際移転市場メカニズムの実施指針も合意に至り、パリ協定のルールブックが完成したというわけです。
地球環境問題、とりわけ気候変動に対する世界レベルの取り組みは、ざっとこういう感じで進められてきています。
こうした動きのなかで、気候変動に対する企業の取り組みを評価する NGO(非政府組織)「CDP」が存在感を増してきています。また、国際的な環境NGOである「The Climate Group」が、CDPとともに運営する「RE100」のもと、再生可能エネルギー電力100%にコミットする企業が結集し、エネルギー移行を加速させる活動を活発化させ、政策立案者および投資家に対してアピールしています。
とはいうものの、再生可能エネルギーにおいては、太陽光発電、風力発電などにおいても、各所で健康被害が生まれていることも事実で、また、電気自動車への大きなシフトにおいても電磁波の問題はウソのように議論に上がってきません。
これも極めて不可解で、不思議なものだと思いつつ、いつの間にか、日本もこの「再生可能エネルギー電力」あるいは「電気自動車」を主体とした流れに飲み込まれていく気配……。かと思いきや……、幸か不幸か、そもそも環境問題に対する意識の低さ(一般論です……)が足を引っ張り、なかなかその流れにも乗れていない状況です。
さて、気候変動対応を一歩も二歩もリードする欧州では、欧州委員会が2019年12月に「欧州グリーン・ディール」を公表しました。その後、2021年6月には、2050年までの「気候中立化」と、中間地点の2030年に「55%削減」を法的拘束力のある目標とする「欧州気候法」を採択して、7月に施行しました。
その政策指針提言文書「Fit for 55」では、2030年の「55%削減」に向けて、法規制や税制などを適合させる必要性が唱えられることとなり、これを受けて排出削減努力の一層の加速が求められることとなりました。
ちなみに、この「Fit for 55」の内容をまとめてみると、次のようになります。
●EUの排出量取引制度(EU ETS)の強化と範囲の拡大による、カーボンプライシング(炭素に価格を付けて排出者の行動を変容させる政策手法)の役割の強化と拡大
●エネルギー効率と再生可能エネルギーに関するEUの目標の引き上げ
●土地利用部門によるカーボンシンク(CO2の実質吸収源)の増加の促進
●持続可能なモビリティと運輸を以下の取り組みを通して支援
●乗用車や小型商用車に関するCO2排出基準の厳格化
●充電スタンドなど必要なインフラの整備
●世界貿易機関(WTO)ルールに準拠した「炭素国境調整メカニズム(Carbon Border Adjustment Mechanism=CBAM)」の導入による炭素リーケージ(CO2漏出)の防止
●気候目標の引き上げに合わせた、エネルギー製品や電力への課税の調整
●公正で革新的なグリーン移行の推進に必要な財源とプロセスへの貢献
こうした画期的な提案の中でも、CBAMの導入と自動車の排出基準の厳格化に関する提案は、輸出大国であり自動車産業が盛んな日本では、もっとも大きく報道されていました。なぜなら、ズバリ言うと、「対応が遅れているから」です。
EU がCBAMを提案したのは、温室効果ガス排出量削減に意欲的でない国々への炭素リーケージによって、EUの気候目標達成への努力が損なわれることを防ぐためです。簡単に言えば、(ちょっと「自己中」な気もしますが、)EU域内で排出削減要件が厳格化されるに伴って、炭素リーケージにより排出量がEU域外に移転し、EUや世界の気候への取り組みに深刻な悪影響を及ぼすことを懸念しているというわけです。
自動車の排出量については、欧州委員会は、乗用車と小型商用車のCO2排出基準を強化し、新車の平均排出量を、2021年比で2030年までに55%削減、2035年までに100%削減を求めることになります。さらには、モビリティの「ゼロエミッション化」を加速すると主張しています。これが実現すれば、2035年にはすべての新規登録車が「ゼロエミッション車」となるというわけです。もちろん、こうした運輸部門のグリーン化は、排出量の削減だけでなく、大気汚染や騒音、人の健康への悪影響を減らすことにつながっていきます。EUは、これから先の道筋を明確に具体的に示すことによって、先端技術の研究やさらなるイノベーションが促進されると確信しているのだと思います。
こうして、欧州では、結果としてどのようになっていくかは別として、まさに日本とは異次元の政策が進められていることは事実です。こうしたカーボンニュートラル化の動きのなかで、特に気候変動対応のためのLCA(ライフサイクルアセスメント)としてのカーボンフットプリントも注目され、製品やサービスのライフサイクルを通した対応の重要性に対する認識が、産業や国を超えて高まってきています。
ちなみに、「LCA」とは、製品やサービスのライフサイクル全体(「ゆりかごから墓場まで」)における、投入資源、環境負荷およびそれらによる地球や生態系への環境影響を定量的に評価する方法と定義されています。その評価結果に基づいて、製品設計や原材料の選択、製造工程、輸送手段や利用方法などを変革し、ライフサイクル全体で環境負荷を低減させることを目的としています。その意味で、あらゆる産業、あらゆる製品・サービスが関わり、国の政策にも多方面で関係してくるものと考えられます。
日本も私たち日本人も、こうした欧州の動きをはじめとして、あらゆることが地球レベルでどんどん動いていっている事実に対して、さらなる関心を持つ必要があると懸念します。
結局は、私たち自身や私たちの子どもたちに直接かかわってくることなのです。
舩井流「モデル付加法」で、少しでも追い付いていかねばなりません。
感謝
2023.04.17:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】欧州の動きに追いつけ!! (※佐野浩一執筆)
2023.04.10:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】付加価値経営 (※舩井勝仁執筆)
2023.04.03:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】目的から考える! (※佐野浩一執筆)
舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長 1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。 2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了) 著書に『生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『未来から考える新しい生き方』(2011年 海竜社)、『舩井幸雄が一番伝えたかった事』(2013年きれい・ねっと)、『チェンジ・マネー』(はせくらみゆき共著 2014年 きれい・ねっと)、『いのちの革命』(柴田久美子共著 2014年 きれい・ねっと)、『SAKIGAKE 新時代の扉を開く』(佐野浩一共著 2014年 きれい・ねっと)、『聖なる約束』(赤塚高仁共著 2014年 きれい・ねっと)、『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(朝倉慶共著 2014年11月 ビジネス社)、『智徳主義【まろUP!】で《日本経済の底上げ》は可能』(竹田和平、小川雅弘共著 2015年 ヒカルランド)、『日月神示的な生き方 大調和の「ミロクの世」を創る』(中矢伸一共著 2016年 きれい・ねっと)、『聖なる約束3 黙示を観る旅』(赤塚高仁共著 2016年 きれい・ねっと)、『お金は5次元の生き物です!』(はせくらみゆき共著 2016年 ヒカルランド)がある。 |
佐野 浩一(さの こういち) 株式会社本物研究所 代表取締役社長 株式会社51コラボレーションズ 代表取締役会長 公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事 ライフカラーカウンセラー認定協会 代表 1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。 著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる 自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた船井幸雄のすべて』(成甲書房)、船井幸雄との共著『本物の法則』(ビジネス社)、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)がある。 |