トップが語る、「いま、伝えたいこと」
シリコンバレーバンク等の破綻の影響は株式市場を見ている限り、ほとんどなくなってきたのかなと思います。日経平均株価は28,600円台とここ最近の水準では高値をキープしています。ここ数年、何度か3万円の壁を超える場面もあったのですが、やはりその辺りに心理的抵抗線があるようで、それを大きく超えていく動きにはなりません。本当は年内に4万円を超えて史上最高値を更新してほしいぐらいに思っていたのですが、ちょっと難しいような気もします。もちろん、友人の中には金融破綻の確率は100%だという見方をしている人もいるのですが、私はこちらも、年内は大丈夫かなと感じ始めています。
ただ、金融破綻のような事態の多くは秋に起こるというジンクスがあるような気がしています。だから、秋口は様子をしっかり見て、市場の急変を敏感に察知するような感性を磨いておいた方がいいのかもしれません。
若い人たちと話をしていると、とっくに投資を始めている人が多いように感じます。彼らは、私たちと違ってバブルとその崩壊を実感で知りません。私たちは、どうしてもあの悪夢が甦ってしまって積極的になれないというか、高値になってくると(いまなら日経平均で3万円を超えてくると)そろそろ危ないのではないかと思ってしまいます。
ただ、マクロに見ると米中の冷戦構造が間違いなくスタートしています。米ソの冷戦構造の恩恵を受けたのが日本経済であったと思うので、どうも私には日本はこれから買いなのだと思えてきています。投資は自己責任なので、読者の皆さんも自分なりの意見をしっかりと持ったうえで投資の世界に入った方がいいと思います。バルブ以前の時代は、どう考えても投資ができた人が儲かっていた時代でした。バブルとその崩壊が異常事態であり、そんな状態を起こさないようにどうすればいいかはしっかりと考えなければいけませんが、少なくともいまの日本の状態はそんな状態から一番遠いような気がします。
この原稿を書いている金曜日の朝の時点で話題になっているのは、テスラの減益決算の発表と、株価が大幅に下がったことです。そう考えると、アメリカのハイテク株はあきらかにバブルだったのではと読み取ることもできるのかなと思います。だから、その影響をなるべく受けないようにするためにはどうすればいいのかなということを考えるべきなのだと思います。バブルと言えば、もう一つは中国の例えば不動産市場もバブルだったのだと思います。日本が米中の冷戦構造を乗り切るためには、私はやはりアメリカ側につくべきだと思いますので、大きなトレンドで見ると中国からの撤退を徐々に進めていく必要はあるのかなと思います。
今回紹介するのは、新堂冬樹先生の小説『#刑事の娘は何してる?』(中央公論社)です。
BOC(ぼっく)という、新堂先生を含め様々な有名作家の小説連載を無料で読む事のできる中央公論社のインターネットサイトに連載されていた小説を単行本化したものです。ちなみに、新堂先生は月刊誌「ザ・フナイ」に「罪と罰 2023」という小説を連載してくれています。テレビのワイドショーでも人気者の大学教授が未成年との淫行が発覚したことで没落していく様を赤裸々に表現していただいている小説なのですが、新堂先生の十八番である強烈なノワール(暗黒)小説になっています。
新堂先生が「ザ・フナイ」の連載を始めるにあたって大手の出版社の編集者の方たちからは、絶対に止めた方がいいと大反対されたそうです。私も、なぜ超売れっ子の新堂先生がわざわざそんなリスクを取るのかがわからなかったのですが、新堂先生はみんなに反対されるようなことが上手くいくのだという世界観で成功を収めてこられたそうです。いわば、異種格闘技の戦いというか、かなりハードな異業種交流会のような感覚でしょうか。時々、一緒にお食事をさせていただいたりしているのですが、ほとんど話のかみ合う点はありませんが、私がまったく知らない世界のことを教えてもらって楽しませていただいています。
「#刑事の娘は何してる?」の内容は型破りな刑事の父親と女子高生の娘の二人を主人公にしたもので、猟奇的な連続殺人事件を捜査する父親と、出会い系サイトを通じてトラブルに巻き込まれた友人の行方を追う娘、それぞれの話の中に出てくる男を通じて、少しずつ物語が重なり合っていきます。新堂先生の得意なノワール小説でもなく、もう一つの柱である白新堂(ヒューマニズムあふれる小説。「忘れ雪」(角川文庫)が代表作)でもない、名物刑事が主人公としてシリーズ化するのかなとも思える設定になっていて、驚きの感覚で読み始めました。
真面目であるが故に追い込まれた娘による衝撃的なラストシーンは非常に印象に残るもので、やや極端な内容ではありますが、SNSで使われる『#』(ハッシュタグ)マークがタイトルにあるように、現代風刺的な側面と、無料で読める掲載形式だったことから、若い世代を意識した引きの強い内容だったかもしれません。結末に近づくにつれてノワール小説の雰囲気が色濃くなってきましたが、新しい新堂ワールドを楽しませていただいた心地の良い読後感が残っています。
新堂先生の特徴である裏社会とサスペンス要素に、出会い系アプリを通じたパパ活(援助交際)、そこから発生したトラブルという、現実でも定期的にニュースになる社会問題を絡めた、少し新しい形の黒新堂として楽しめるのではないでしょうか。何気なく、社会問題に焦点を当てているところも秀逸だと思います。小説の連載が始まってから、「ザ・フナイ」の書店での販売点数が増えています。異業種交流は、とりあえず成功しているようです。
=以上=
2023.04.17:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】欧州の動きに追いつけ!! (※佐野浩一執筆)
2023.04.10:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】付加価値経営 (※舩井勝仁執筆)
2023.04.03:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】目的から考える! (※佐野浩一執筆)
舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長 1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。 2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了) 著書に『生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『未来から考える新しい生き方』(2011年 海竜社)、『舩井幸雄が一番伝えたかった事』(2013年きれい・ねっと)、『チェンジ・マネー』(はせくらみゆき共著 2014年 きれい・ねっと)、『いのちの革命』(柴田久美子共著 2014年 きれい・ねっと)、『SAKIGAKE 新時代の扉を開く』(佐野浩一共著 2014年 きれい・ねっと)、『聖なる約束』(赤塚高仁共著 2014年 きれい・ねっと)、『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(朝倉慶共著 2014年11月 ビジネス社)、『智徳主義【まろUP!】で《日本経済の底上げ》は可能』(竹田和平、小川雅弘共著 2015年 ヒカルランド)、『日月神示的な生き方 大調和の「ミロクの世」を創る』(中矢伸一共著 2016年 きれい・ねっと)、『聖なる約束3 黙示を観る旅』(赤塚高仁共著 2016年 きれい・ねっと)、『お金は5次元の生き物です!』(はせくらみゆき共著 2016年 ヒカルランド)がある。 |
佐野 浩一(さの こういち) 株式会社本物研究所 代表取締役社長 株式会社51コラボレーションズ 代表取締役会長 公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事 ライフカラーカウンセラー認定協会 代表 1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。 著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる 自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた船井幸雄のすべて』(成甲書房)、船井幸雄との共著『本物の法則』(ビジネス社)、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)がある。 |