トップが語る、「いま、伝えたいこと」
約2週間前の日銀の金融政策決定会合は見事だったなと思います。実質的な利上げということで市場の大混乱が予想されたのですが、2週間近く経ってみると長期金利(10年国債の金利)は8月9日現在で0.565%に低下しています。YCC(イールドカーブコントロール)政策変更後は一時0.65%近くまで長期金利が上がりましたが、実質的な上限値を1%に設定したにも関わらず、落ち着いた動きを見せているというところではないでしょうか。株価や為替もそれぞれ一時的に大きく下がり円高にも振れましたが、現在はかなり元の水準に戻ってきています。
何よりも大きかったのは、実質的な利上げに繋がるYCC政策の変更はかなりの激痛を伴わないと不可能だと思われていたものが、1%までの許容を日銀にも市場にも与えたことで柔軟な金融政策がとれる余地を確保したことだと思います。後は、ちゃんとインフレの抑え込みができるかどうかですが、そういう意味では現地時間の10日発表のアメリカの消費者物価指数(CPI)に注目が集まっています。お盆休みの関係でいつもよりも(この原稿の)締め切りが早いので推測になってしまいますが、市場の予想通りの範囲で収まるのではないか、つまりそれほど混乱は大きくならないのではないだろうかと思います。
ちょっと専門的になるのですが、金利は景気の先行指標だと言われています。炭鉱に入るときにカナリヤを持っていってガス漏れの検知器代わりに使うという話がありますが、景気の変動の前には、金利の変化がまずあらわれますので市場のカナリヤだと言われています。オウム真理教事件の時に、サティアンに突入する警察官が(サリンがまかれているかどうかを検知するために)カナリヤを持っていったというのも同じ理屈ですが、景気の変動はいくつかの金利の指標を見ていたら予想できるという話しがあります。
国内有数の債券ファンドマネージャーを長年務めていた堀井正孝氏の「金利を見れば投資はうまくいく」(クロスメディア・パブリッシング)に詳しく書かれていますが、特に長期金利と短期金利の差に注目しておくのが大事です。YCC政策というのは、本来の意味は長短金利差のコントロールをするという意味で、日本は日銀の政策もあって長期金利が短期金利を上回っている正常な状態が続いていますが、短期金利の利上げを進めているアメリカではイールドカーブがマイナス(短期金利の方が高くなってしまっている)の状態が続いてしまっています。
この状態になれば、景気の減速は近いというのが投資の王道的な考え方ですので、アメリカ景気の減速が間近に迫っているのではないかと心配されているのです。中央銀行は長期金利を政策目標にはできないというのが常識でしたが、もしかしたらいまの局面では長短金利差をちゃんとつけるという日銀の政策が正解だったのかもしれないなと思い始めています。
今回紹介する本は、お盆の時期にぴったりの山本時嗣著『死を力に。』(光文社)です。死は誰にも平等に訪れる未知のものです。死後の世界は空想や妄想、臨死体験等で疑似的に体験する事はできても、戻って来られないところまで逝ってしまった場合の正確な体験は、誰も語ることはできません。それ故に死に恐怖を覚え、そこから遠ざかろうとするのも自然な事でしょう。
そもそも、その中身を理解はできずとも、死による喪失は生きていれば誰もが経験するものです。祖父母や両親、ペット、身近な知り合い等、生きている間に多くの人が、喪失による死を経験します。だからこそ世の中には、死後の不安を軽減するための備え方を知る、死の悲しみから癒される方法というような本が溢れかえっています。しかし本書のように、死を力に換えるという類の本はあまり目にしたことはありません。確かに死は強烈なエネルギーを持っています。それをポジティブな方向へと変換できれば非常に大きな活力となる、タイトルの時点で、非常に興味を惹かれます。
著者の時ちゃん(本来は山本先生と書くべきですが、親しいので許してください)は幼い頃に重度の喘息を患い、常に死と隣り合わせの生活を送っていました。その後もお父様の自死など、様々な形で死と向き合う人生を送ってこられる中で、独自の死生観を築いていきました。スピリチュアルな世界と自らの経験を融合させ、死後の世界について考証し、亡くなった方の意志や魂についての理論を組み立てる。それらが実際に正しいのかは、専門家ではない私が判断するのは難しいですが、少なくともそれに沿う事で死に対してポジティブに向き合えるという部分については、間違いなさそうです。
一人ひとり、前提となる死への接し方は違います。時ちゃんのような心持ちでそれと向き合うのは、難しいと言う方も多いかもしれません。とはいえ身近な人が亡くなったり、それを覚悟しなければならない状況になった時、本書を読んでおくことで、かわすのではなく取り込んでエネルギーとする事ができるのかもしれない。そのような発想を持つ事で、前向きになる事ができる。それだけでも非常に価値のある一冊なのかもしれません。
=以上=
2023.08.21:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】30周年に思いを馳せる! (※佐野浩一執筆)
2023.08.14:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】死の捉え方を変える (※舩井勝仁執筆)
2023.08.07:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】『人間は考える葦である』 (※佐野浩一執筆)
舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長 1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。 2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了) 著書に『生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『未来から考える新しい生き方』(2011年 海竜社)、『舩井幸雄が一番伝えたかった事』(2013年きれい・ねっと)、『チェンジ・マネー』(はせくらみゆき共著 2014年 きれい・ねっと)、『いのちの革命』(柴田久美子共著 2014年 きれい・ねっと)、『SAKIGAKE 新時代の扉を開く』(佐野浩一共著 2014年 きれい・ねっと)、『聖なる約束』(赤塚高仁共著 2014年 きれい・ねっと)、『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(朝倉慶共著 2014年11月 ビジネス社)、『智徳主義【まろUP!】で《日本経済の底上げ》は可能』(竹田和平、小川雅弘共著 2015年 ヒカルランド)、『日月神示的な生き方 大調和の「ミロクの世」を創る』(中矢伸一共著 2016年 きれい・ねっと)、『聖なる約束3 黙示を観る旅』(赤塚高仁共著 2016年 きれい・ねっと)、『お金は5次元の生き物です!』(はせくらみゆき共著 2016年 ヒカルランド)がある。 |
佐野 浩一(さの こういち) 株式会社本物研究所 代表取締役社長 株式会社51コラボレーションズ 代表取締役会長 公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事 ライフカラーカウンセラー認定協会 代表 1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。 著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる 自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた船井幸雄のすべて』(成甲書房)、船井幸雄との共著『本物の法則』(ビジネス社)、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)がある。 |